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第二章
第11話 国選弁護人の仕事
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神野は頭の中が真っ白になり、考えが浮かばなかった。
「ええっと?…」
「想定外だったか?」
「うん、全くの想定外。これ、常識?」
「うーん、まあオレにとってはそうだけど、結構みんな知らんのじゃないかな⁉」
「オレは何の疑いも持ってなかった。第一審で審議が尽くされたのなら、第二審でその裁判記録の再吟味で良いけれど、審議不十分とみて控訴した場合はどうなるん? 審議のやり直しが必要だと思うけど」
「まあ確かに、一理あるね。だが現実はそうはなってない。控訴の必要がないように、第一審でしっかり言い分を述べ合えという事だろう。そうでないと毎回最高裁まで行ってしまうからね」
暫く、沈黙が流れた。
神野は国選弁護人のレベルが気になった。
「なあ、村井さん。先日、国選弁護人を依頼したら『碌なんがこない』って言ってたけど、実のところどうなん? 碌なヤツしかこないん?」
「うん。たまたま真面目なヤツに当たれば良いけどさ。彼らは国の言いなりになるだけだから、調査はしないよ」
「調査? それは、聞き込みとか?」
「うん。それに現場検証」
「やらないって?」
「やらない。法律事務所で被告人から話を聴いたり、警察署での尋問調書を確認するぐらい。あ、それから原告や目撃者の供述とかも」
「それは彼らの供述の確認だけ? 被告人の供述との相違点とかは?」
「被告人の言い分も頭に入れるが、現場検証しないから事実は明らかにならない」
「そんなんで正当な判決が下せるん?」
「だから、冤罪だらけさ。痴漢犯罪の場合9割が実際やってるんで、有罪にしておけば9割が正しい判決になるのでね」
「じゃあ、あとの1割は冤罪?」
「そう。その他に優秀な弁護人により無罪が証明される場合と悪徳弁護人により有罪が無罪になる場合もある」
神野は愕然とした。言葉が出ない。
一呼吸おいて、村井が思わぬ提案をしてきた。
「それでねえ、ヒロさん。山本弁護士と相談したんだが、山本さんに弁護を依頼したら?」
「えっ、それは? 山本弁護士が弁護人になってくれるという意味?」
「そう。彼なら余計な費用を掛ける事なく精一杯やってくれるよ。痴漢事件のベテランほどスムーズにはいかないかもしれないが、冤罪にされることはないと思うよ。知人の弁護士には有罪と分かっていても無罪にするのがいるけどね」
「えっ、そうなん? それ、悪徳弁護士ちがうん?」
「そう思うだろうねえ、ヒロさんなら。世間では敏腕弁護士と言うけど」
「オレは正当に判定して欲しい、それだけ。きちんとした審議の結果、もしもオレのやった事がよ、相手にとって不快な事で『軽犯罪に該当する。故に罰金1万円』との判決が下りたら、腹から納得はできなくてもまあ一応の納得はするよ」
「ふふふ、やはりそう考えるか。だからこそ、山本弁護士は適任さ。決まったな」
神野は何だかホッとした。これほど自分の望んだ弁護人はいないだろうと思う。流石に、村井邦彦だ。良い友人を持っている。
その村井氏が面白い事を言った。
「まあ、ヒロさん。かの敏腕の悪徳弁護士が100%無罪にできるとして、誠実な山本弁護士なら95%無罪にできるよ」
じゃあ、5%は冤罪になるか⁉
「それでねえ、正式に弁護人依頼書を提出する前に一度山本弁護士に会っておいた方が良いと思うんで近々会えるね?」
「勿論。明日にでもお会いしたい」
「今夜、連絡取ってみるよ。今日、明日にでも折り返し連絡するわ」
「有難い。会うの楽しみだわ」
「ヒロさんと気が合う事だけは間違いない。で、前に話したと思うが直接弁護士に会った場合は1時間で1万円ぐらいは費用が掛かるから、それは良いね? その折り、おおよその費用の見積もりが出ると思う」
「分りましたよ、了解です。その席では、村井さんは?」
「うん、面白そうだからオレも同席させて貰うわ。本当はいけないかもしれないけど」
神野はにっこりと微笑んだ。
「ええっと?…」
「想定外だったか?」
「うん、全くの想定外。これ、常識?」
「うーん、まあオレにとってはそうだけど、結構みんな知らんのじゃないかな⁉」
「オレは何の疑いも持ってなかった。第一審で審議が尽くされたのなら、第二審でその裁判記録の再吟味で良いけれど、審議不十分とみて控訴した場合はどうなるん? 審議のやり直しが必要だと思うけど」
「まあ確かに、一理あるね。だが現実はそうはなってない。控訴の必要がないように、第一審でしっかり言い分を述べ合えという事だろう。そうでないと毎回最高裁まで行ってしまうからね」
暫く、沈黙が流れた。
神野は国選弁護人のレベルが気になった。
「なあ、村井さん。先日、国選弁護人を依頼したら『碌なんがこない』って言ってたけど、実のところどうなん? 碌なヤツしかこないん?」
「うん。たまたま真面目なヤツに当たれば良いけどさ。彼らは国の言いなりになるだけだから、調査はしないよ」
「調査? それは、聞き込みとか?」
「うん。それに現場検証」
「やらないって?」
「やらない。法律事務所で被告人から話を聴いたり、警察署での尋問調書を確認するぐらい。あ、それから原告や目撃者の供述とかも」
「それは彼らの供述の確認だけ? 被告人の供述との相違点とかは?」
「被告人の言い分も頭に入れるが、現場検証しないから事実は明らかにならない」
「そんなんで正当な判決が下せるん?」
「だから、冤罪だらけさ。痴漢犯罪の場合9割が実際やってるんで、有罪にしておけば9割が正しい判決になるのでね」
「じゃあ、あとの1割は冤罪?」
「そう。その他に優秀な弁護人により無罪が証明される場合と悪徳弁護人により有罪が無罪になる場合もある」
神野は愕然とした。言葉が出ない。
一呼吸おいて、村井が思わぬ提案をしてきた。
「それでねえ、ヒロさん。山本弁護士と相談したんだが、山本さんに弁護を依頼したら?」
「えっ、それは? 山本弁護士が弁護人になってくれるという意味?」
「そう。彼なら余計な費用を掛ける事なく精一杯やってくれるよ。痴漢事件のベテランほどスムーズにはいかないかもしれないが、冤罪にされることはないと思うよ。知人の弁護士には有罪と分かっていても無罪にするのがいるけどね」
「えっ、そうなん? それ、悪徳弁護士ちがうん?」
「そう思うだろうねえ、ヒロさんなら。世間では敏腕弁護士と言うけど」
「オレは正当に判定して欲しい、それだけ。きちんとした審議の結果、もしもオレのやった事がよ、相手にとって不快な事で『軽犯罪に該当する。故に罰金1万円』との判決が下りたら、腹から納得はできなくてもまあ一応の納得はするよ」
「ふふふ、やはりそう考えるか。だからこそ、山本弁護士は適任さ。決まったな」
神野は何だかホッとした。これほど自分の望んだ弁護人はいないだろうと思う。流石に、村井邦彦だ。良い友人を持っている。
その村井氏が面白い事を言った。
「まあ、ヒロさん。かの敏腕の悪徳弁護士が100%無罪にできるとして、誠実な山本弁護士なら95%無罪にできるよ」
じゃあ、5%は冤罪になるか⁉
「それでねえ、正式に弁護人依頼書を提出する前に一度山本弁護士に会っておいた方が良いと思うんで近々会えるね?」
「勿論。明日にでもお会いしたい」
「今夜、連絡取ってみるよ。今日、明日にでも折り返し連絡するわ」
「有難い。会うの楽しみだわ」
「ヒロさんと気が合う事だけは間違いない。で、前に話したと思うが直接弁護士に会った場合は1時間で1万円ぐらいは費用が掛かるから、それは良いね? その折り、おおよその費用の見積もりが出ると思う」
「分りましたよ、了解です。その席では、村井さんは?」
「うん、面白そうだからオレも同席させて貰うわ。本当はいけないかもしれないけど」
神野はにっこりと微笑んだ。
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