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EX07

日光事変04

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このストーリーは作者が勝手に妄想した路線や電車、バスなどを題材にした“妄想小説”です。
作品内に登場する各鉄道事業者や路線名、列車名などは全て“妄想”です。どんなに現実世界に似ていても一切の関係はありません。全て“妄想”です。
決して各事業者や関係者へのお問い合わせは行わないでください。
それによりトラブルが発生したとしても当方は一切の責務を負いません。
あくまで“妄想”であることをご理解いただきお読み下さい。

■日光事変04
 東武日光線が100周年を迎え、日光・鬼怒川地区は何かと盛り上がっていた。
 また日本鉄道により1890年に開通した宇都宮~日光間が、1906年に国有化されて線路名称設定により日光線とされてから120周年になる。
 その他色々と××◯◯周年として、栃木県全体がお祭り騒ぎの様相を呈していた。
 そこに新型特急車両による新宿直通及び、デビュー以来乗車率が90%以上のスペーシアXでの新宿直通が開始されるのだ。盛り上がらないはずがなかった。
 「いよいよデビューですね。今までのJR東武直通特急が築いてきた歴史に新たな1ページが加わるんですね。… …あ、あれ? 奈美さん?」
 テンションが高すぎて奈美さんが引いてる? と思って振り返ると…。
 「へ?」
 奈美さんは顔を真っ赤にして、陶酔していた。
 え? 陶酔? こんな奈美さん今まで見たことなかった。
 しかし、しばらく見つめていたら、急に正気に戻り、途端にファインダーを覗きつつ滅茶苦茶にシャッターボタンを押しまくった。
 きっと惚けていたことが恥ずかしくなったのだろう。
 ここで余計なことを言って機嫌を損ねたら、後が大変なので俺もマルーンの車体に集中して、ごまかした。
 新型の初列車はJR新宿駅を発車するのがJR E261 1000番代グラナートゥム日光1号。
 鬼怒川温泉駅発が増備されたばかりのスペーシアX第5編成のスペーシアXきぬがわ2号だ。
 今回のダイヤ改正により、直通特急の運転本数が再び増やされ、毎日各4往復8本になった。
 その他、JRは早速JR日光駅行き特急“リゾート日光”を設定。
 ルートはJR新宿駅から渋谷・品川・東京・上野を通り、東北本線を北上する。宇都宮で方向転換してJR日光線に入る。
 面白いのは、新宿駅ではどちらも品川方に個室が配置されるが、リゾート日光号は東京駅に向かって行くので、宇都宮までは個室展望車が先頭になる。
 日光駅到着時には東武日光線もJR日光線も下今市/今市駅方が個室展望車になるのだ。
 そのため、東大宮センターからの新宿送り込み回送はどちらも池袋を通る、湘南新宿ライン経由となった。
 これは送り込み運行で、混雑の激しい上野・東京ラインの経由を避けたこともある。
 どちらの特急でも、新宿や日光(厳密には東武日光駅とJR日光駅は離れている)でも編成方向は変わらないため、案内がしやすく乗客も間違いにくいのが利点だった。
 「ささ、写真は抑えたから車内に入りましょ」
 あれ? いつもなら俺の方が興奮して突っ走り気味なのに、今日は奈美さんの方がテンション高くない?
 今日は一般乗客もいて、席を取るのも大変だった。
 何しろ発売開始直後完売というお馴染みの状況だった。
 今までより70席ほど減っているために指定券を確保するのが大変なのだ。
 正式な運行だから試乗会と違って、報道関係者のために席が準備されたりはしない。
 俺たちはたまたま奈美さんがゲットできたから乗車できるが、他社のほとんどはお見送り組だった。
 奈美さんはくじ運が凄い。普段から引きがいいので羨ましかったが、今回は座席数が少ないプレミアムシートをゲット。先着順に埋まっていくのだが、手際が悪かったりするとあっという間に完売になってしまう。20席しかないプレミアムシートを確保できたのは僥倖だ。
 発車時刻が迫り、ホームでは出発式が行われている。
 さすがに車内からでは写真も撮れないから、奈美さんはもっぱら運転席や車内の風景をスナップしてる。
 そして9時34分、E261系1000番代グラナトゥム日光(東武日光行き)は新宿駅を発車した。
 最初の停車駅は池袋。山手線の向こう側に東武東上線の50000系が見える。
 奈美さんはいつものようにガラスに張り付いて、ホーム越しになんとか見える東武50000系にカメラを向けて、シャッターを押しまくっていた。
 今からそんなに撮ってるとバッテリーが…と思ったが、各座席にコンセントがあるから大丈夫でした。いい時代になったもんだなぁ。と、しみじみ考えてしまった。
 そういえば運行本数が増え、新宿駅を発車する時刻も見直されたために、スペーシアXの送り込み回送が間も無くやってくるはずだ。
 これはJR新宿駅を10時14分に発車するスペーシアXきぬがわ3号となる。
 前面が見えるため、すれ違うまで気付かないことはないだろうが、トンネルの中などでは写真が撮れないだろうから気が気ではない。
 「王子辺りでスペーシアXとすれ違うから、ちゃんと見てなさいよ」
 窓に張り付いたままの奈美さんが、通路を挟んだ俺に注意する。
 そんなに大声で叫ばなくても…と思いつつ、右側に座ってる俺からじゃ近づいてくる対向車が見えにくい。
 仕方ないので、通路に立って邪魔にならないデッキ近くに移動した。
 王子駅を右手に見ながら先の方から白い車体が近づいてきた。

 スペーシアXだ。
 車内を多めに入れ、窓の外をすれ違って行くスペーシアXを連写した。
 「今のはいいタイミングね。逆光にならなくて良かったんじゃない?」
 そういう奈美さんも窓に背を預けて、カメラを構えていた。
 「前面窓から近づいてくるスペーシアXを抑えましたから、多分使えると思います」
 「うんうん」
 俺のカメラのモニターを覗きながら満足そうに頷いてくれた。
 こうして、グラナトゥム日光の取材乗車は幸先いいスタートを切った。
 これで一泊旅行なら嬉しいんだけど。経費が許してくれない。
 日光での取材が終わると、すぐにリバティで東京にトンボ帰りだ。
 ま、奈美さんと一緒だからいいか。
 グラナトゥム日光は栗橋駅から東武線に入り、田園地帯を快走していった。
    <終わり>
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