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EX05
箱根・日光・鬼怒川クルーズトレイン05
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“スペーシアはこね”は最徐行で終点箱根湯本駅に進入してゆく。
予定では5分後に到着する各駅停車が到着した後、回送されることになっている。
小田原まで回送すれば複線区間になるため、他の定期列車の妨げにはならなくなるためだ。
逆に言えば、撮影できる時間は限られているということになる。
駅撮りもいいけど、余程背景に特徴がなければどこの駅でもあまり変化がない。
だから…。
「ホームに降りたら、すぐにハイヤーに荷物を載せるわよ。準備いい?」
「もちろん。奈美さんは先に行って、トランクを開けてもらっておいてください」
奈美さんの撮影機材は相当な重さがあるので、俺が運んだほうが時間が稼げる。
とはいえ、混んでいる駅構内を素早く移動するのはなかなか難しかった。
俺は自分の手荷物だけ持って、ハイヤーを見送った。
そのまま駅の横を通り過ぎて、国道138号線の歩道を小田原方面に全力ダッシュ!
三枚橋まで行きたかったが、信号近くには民家があるので後追いができないと気付き、手前で撮影することにした。
カメラの設定を確認して、試し撮りをしようと構えたらスペーシアが走り出してしまった。
そのまま数カット連写して、後追いで2~3枚捉えた。
とりあえず、思い描いたイメージ通りのカットが撮れたので、満足して駅に戻る。
すぐに奈美さんを乗せたハイヤーが戻ってきて、その後は箱根登山鉄道の沿線でスナップしながらホテルに向かう。
まだ午前中でチェックインできないため、荷物を預けてケーブルカーやロープウェイの撮影を行うことにした。
2日目のルートはシビアなので、ルートや通過時間のチェックが忙しくなる。
奈美さんはルートを知ってるはずだが、一切教えてくれない。
俺は口が軽いから教えるとリークしたのと同じことになるから…、ということだ。
朝8時にバスでホテルを出発。
今日は直接JR小田原駅に向かう。このツアーはあくまでスペーシアに乗って、箱根と日光・鬼怒川へのクルーズを楽しむものだからだ。
小田原駅のホームに降りると既にスペーシアは出発準備が整っていた。
昨日のうちに小田急線からJR御殿場線を経由して、国府津車庫まで移動。
朝早くにこのJR小田原駅まで回送されてきたのだ。
9時30分にJR小田原駅を発車し、東海道線を上って行く。
「鶴見まではこのまま東海道線を走るんですよね? さすがにここは鉄板だから撮影者が多いですね」
「そうね。私だって、撮影できるなら撮りたいけど…仕方ないわね…」
確かにこのツアーが始まってからの奈美さんは、少々落ち着きがないような気がする。
でも編集部員総出で、各所にて待機してるので、要所要所でのカットは抑えてあるはずだ。
…つまり、それは、俺以外の編集部員はあらかじめコースを知らされているということ…なのだ。
それはもちろん奈美さんが事前に編集長に進言したためだ。
今日の座席は進行方向右側なので、奈美さんはさっきから外を眺めているが…、
「あ? あれ? 東海道線の上り列車が並走してる?」
「ああ、小田原発の上野東京ライン経由の上野行きね」
「よくわかりますね。え~と、そうすると…小田原を9時21分に発車した…って、え? 追いついた?」
「そうね」
平塚手前で右側には確かにE233系の車体が見えていた。
「な、なんで? だってこのスペーシアも東海道線を…」
と言ったところで気がついた。
「貨物線?? ノンストップだから気付かなかったぁ!」
「何言ってるのよ。自分で草案作ったくせに」
今更? という呆れた表情で奈美さんが振り向いた。
「だ、だって湘南新宿ラインで大崎まで行くんですよね? このままじゃ…あれ?」
「?」
「あ、そうか横浜羽沢貨物駅を通っていくんですね?」
通常の湘南新宿ラインは横浜駅を通り、鶴見駅の先で武蔵野南線に分岐してゆく。
しかし、“スペーシアはこね”は、先行する普通列車に前方を抑えられるため、速度を調整して走らざるを得ない。
「だから貨物線を通っていけば、普通列車の影響を受けずに済む…と?」
「そうね。日光までは3時間半の行程だから、結構きついのよ。だから少しでも早く走れるようにしたんじゃないかな?」
と、言いつつも奈美さんはあらかじめルートを知ってるから、ちっとも慌てずに答えた。
やがて東戸塚駅を通り過ぎるとすぐに東海道線の線路が離れていった。
東海道貨物線は横須賀線の線路と平行するが、すぐにトンネルに入りそのまま独自のルートで横浜羽沢駅を目指す。
途中、明かり区間があるものの、シールドで完全にふさがれているのでそれと気付かない。
そのままもう一度トンネルを通り、横浜羽沢駅にたどり着く。
もちろん貨物専用の駅なので旅客用ホームなどなく、屋根付きのヤードがあるだけだ。
「左側のあの建物が相鉄の羽沢横浜国大駅ですね。ホームは地下だけど駅舎は随分大きいですね」
「ん? その言い方だと初めて見るの?」
「そうですよ。こっちの方はあまり来ることがないので、ここに来たのは初めてです」
その途端、奈美さんは目を丸くして呆れていた。
「信じられない。初めて相鉄が相互直通したというのに…、ここに来てない?」
「え~、だって、新宿や大崎で相鉄12000系は撮れるし、わざわざ来る必要ないと思いますが」
「あなた…本当に鉄道雑誌の編集者なの? 個人的興味だけでも一度は来たくならない?」
「そりゃぁ来たいですけど、ここまで来るのは時間的に結構きついので…つい…」
奈美さんは何も言わずに軽くため息をついて、再び外に顔を向けた。
ありゃりゃ、こりゃマジに呆れられたぞ。
ところがすぐにトンネルに突入。
さすがに真っ暗なトンネル内じゃ、ほとんど何も見えない。
奈美さんは三白眼でまたこっちを向き直った。
「… い、忙しいのはわかるけど、自分で興味を持たないといつまでも通り一遍の記事しか書けないわよぉ」
「は、はい。なるべく…頑張ります」
今度は軽く鼻息を漏らして微笑んでくれた。
長い長いトンネルは途中、横浜線の大口あたりで谷間を高架線で超えるけど、ここも騒音防止のためにフルシェルターで覆われていて、非常口のドアの隙間から外光が少しだけ見えただけだった。
5分近く走って、やっと京急線生麦駅のすぐ横で明かり区間に出た。
まあ、相鉄JR直通線に乗っていたらもはや日常的なのだが、俺は初めてだったから左右にいくつもの線路が並んでいるを見て驚いてしまった。
何しろ山側から横須賀線・東海道本線・京浜東北線・東海道貨物線の本牧からの上り線・今俺たちが走っている東海道貨物線・東海道貨物線の本牧方面線、そして京急本線と6複線が並んでいるのだ。
俺は何度もここを通ってはいるけど、普段はまあこんなものだろうと流していた。
確かに壮観な風景だが、奈美さんが言う通り、興味を持たないと感動すらしていなかった。
“スペーシアはこね”は鶴見川を越えたらすぐに東海道線と京浜東北線をオーバーパスして横須賀線に合流… … ?
「あれ? 奈美さん。横須賀線に合流しませんよ?」
“スペーシアはこね”は転線せずにそのまま直進してゆく。
「このままじゃ… おおっ!」
そのまま高架線に上がって行き、すぐに右に大きくカーブした。
「あれ? どこに行くんですか? この列車!」
「まあまあ、子供じゃないんだからおとなしく座ってなさいよ」
奈美さんはニヤニヤしながら宥めるように言った。
すぐに右側に南武支線が寄ってきて、川崎新町駅先で合流した。
“スペーシアはこね”は速度を落として45km/hくらいでそのまま進む。
浜川崎駅手前で左左へと分岐を過ぎて、右から近寄ってきた鶴見線の貨物線の高架に上がって行く。
やがて合流して、さらに奥へ。
広大な貨物ヤードの左端をゆっくりゆっくり進んで行った。
「奈美さん、ここって浜川崎の貨物ヤードじゃないですか?」
「正確には塩浜なんだけどね。タンク車ばっかりだね、やっぱり」
「いやいやいや、この先は線路が行き止まりじゃないですか。ここで折り返すんですか?」
「ううん。このまま行くよ?」
「はい?」
“スペーシアはこね”は奈美さんの言葉通り、全く止まる気配もなくゆっくり進んで行く。
やがて下り勾配に入り…。
「トンネル? どこに繋がって… あ! 大井貨物ターミナルですか?」
「正解!」
確かに大井貨物ターミナルまでなら線路が繋がっている。
しかし、その先は大汐線と言って汐留までの貨物線が昔は通っていた。
でも現在は田町駅の手前で途切れていたはずだ。
「全くどこに向かってるのかわかりません。降参です。教えてください」
「まあまあ、もうじきわかるから」
長い長いトンネルをゆっくり進み、品川区の八潮でトンネルから出た。
ところが、分岐で右に進む。
左に分岐していった線路の先は広い貨物ヤードが見えた。
巨大な倉庫のビルの間からも無数のコンテナが見えた。
「奈美さん、ここって…」
と、奈美さんを振り返ると、窓の外に電車が見える。
それは…。
「りんかい線!?」
「そうよ。ここはりんかい線の八潮車両基地よ」
「そうよ、って、JRから直通できるんですか?」
「ですか? って今直通してきたじゃない。ここからはりんかい線の回送線を通って、新木場では京葉線に直通するのよ。ってあなたが草案作ったんじゃない」
「いえいえ、俺は湘南新宿ラインで大崎駅でのスイッチバックを…」
「それだと、折り返しのための時間が取れなくて、新宿まで行かなきゃいけなくなるらしいの」
「りんかい線のホームが2本あってもですか?」
「大崎折り返しのりんかい線内運用と、埼京線からの直通の関係で無理だったらしいわ」
「ならば、特例で車両基地経由にできないか? ということになったの」
その場合はもちろん試運転を行い、国交省の特認が必要となるが、なんとかなったらしい。
有事の際は、走行する事業者の車庫まで回送する必要があるため、逆に車両基地経由が功を奏したらしい。
「な、なんということでしょう…orz」
俺は思わず両手を床について突っ伏してしまった。
何はともあれ、これで“スペーシアはこね”で東京湾眺望が現実のものとなったのは、喜ばしいこと…なんだろう。
<続く>
予定では5分後に到着する各駅停車が到着した後、回送されることになっている。
小田原まで回送すれば複線区間になるため、他の定期列車の妨げにはならなくなるためだ。
逆に言えば、撮影できる時間は限られているということになる。
駅撮りもいいけど、余程背景に特徴がなければどこの駅でもあまり変化がない。
だから…。
「ホームに降りたら、すぐにハイヤーに荷物を載せるわよ。準備いい?」
「もちろん。奈美さんは先に行って、トランクを開けてもらっておいてください」
奈美さんの撮影機材は相当な重さがあるので、俺が運んだほうが時間が稼げる。
とはいえ、混んでいる駅構内を素早く移動するのはなかなか難しかった。
俺は自分の手荷物だけ持って、ハイヤーを見送った。
そのまま駅の横を通り過ぎて、国道138号線の歩道を小田原方面に全力ダッシュ!
三枚橋まで行きたかったが、信号近くには民家があるので後追いができないと気付き、手前で撮影することにした。
カメラの設定を確認して、試し撮りをしようと構えたらスペーシアが走り出してしまった。
そのまま数カット連写して、後追いで2~3枚捉えた。
とりあえず、思い描いたイメージ通りのカットが撮れたので、満足して駅に戻る。
すぐに奈美さんを乗せたハイヤーが戻ってきて、その後は箱根登山鉄道の沿線でスナップしながらホテルに向かう。
まだ午前中でチェックインできないため、荷物を預けてケーブルカーやロープウェイの撮影を行うことにした。
2日目のルートはシビアなので、ルートや通過時間のチェックが忙しくなる。
奈美さんはルートを知ってるはずだが、一切教えてくれない。
俺は口が軽いから教えるとリークしたのと同じことになるから…、ということだ。
朝8時にバスでホテルを出発。
今日は直接JR小田原駅に向かう。このツアーはあくまでスペーシアに乗って、箱根と日光・鬼怒川へのクルーズを楽しむものだからだ。
小田原駅のホームに降りると既にスペーシアは出発準備が整っていた。
昨日のうちに小田急線からJR御殿場線を経由して、国府津車庫まで移動。
朝早くにこのJR小田原駅まで回送されてきたのだ。
9時30分にJR小田原駅を発車し、東海道線を上って行く。
「鶴見まではこのまま東海道線を走るんですよね? さすがにここは鉄板だから撮影者が多いですね」
「そうね。私だって、撮影できるなら撮りたいけど…仕方ないわね…」
確かにこのツアーが始まってからの奈美さんは、少々落ち着きがないような気がする。
でも編集部員総出で、各所にて待機してるので、要所要所でのカットは抑えてあるはずだ。
…つまり、それは、俺以外の編集部員はあらかじめコースを知らされているということ…なのだ。
それはもちろん奈美さんが事前に編集長に進言したためだ。
今日の座席は進行方向右側なので、奈美さんはさっきから外を眺めているが…、
「あ? あれ? 東海道線の上り列車が並走してる?」
「ああ、小田原発の上野東京ライン経由の上野行きね」
「よくわかりますね。え~と、そうすると…小田原を9時21分に発車した…って、え? 追いついた?」
「そうね」
平塚手前で右側には確かにE233系の車体が見えていた。
「な、なんで? だってこのスペーシアも東海道線を…」
と言ったところで気がついた。
「貨物線?? ノンストップだから気付かなかったぁ!」
「何言ってるのよ。自分で草案作ったくせに」
今更? という呆れた表情で奈美さんが振り向いた。
「だ、だって湘南新宿ラインで大崎まで行くんですよね? このままじゃ…あれ?」
「?」
「あ、そうか横浜羽沢貨物駅を通っていくんですね?」
通常の湘南新宿ラインは横浜駅を通り、鶴見駅の先で武蔵野南線に分岐してゆく。
しかし、“スペーシアはこね”は、先行する普通列車に前方を抑えられるため、速度を調整して走らざるを得ない。
「だから貨物線を通っていけば、普通列車の影響を受けずに済む…と?」
「そうね。日光までは3時間半の行程だから、結構きついのよ。だから少しでも早く走れるようにしたんじゃないかな?」
と、言いつつも奈美さんはあらかじめルートを知ってるから、ちっとも慌てずに答えた。
やがて東戸塚駅を通り過ぎるとすぐに東海道線の線路が離れていった。
東海道貨物線は横須賀線の線路と平行するが、すぐにトンネルに入りそのまま独自のルートで横浜羽沢駅を目指す。
途中、明かり区間があるものの、シールドで完全にふさがれているのでそれと気付かない。
そのままもう一度トンネルを通り、横浜羽沢駅にたどり着く。
もちろん貨物専用の駅なので旅客用ホームなどなく、屋根付きのヤードがあるだけだ。
「左側のあの建物が相鉄の羽沢横浜国大駅ですね。ホームは地下だけど駅舎は随分大きいですね」
「ん? その言い方だと初めて見るの?」
「そうですよ。こっちの方はあまり来ることがないので、ここに来たのは初めてです」
その途端、奈美さんは目を丸くして呆れていた。
「信じられない。初めて相鉄が相互直通したというのに…、ここに来てない?」
「え~、だって、新宿や大崎で相鉄12000系は撮れるし、わざわざ来る必要ないと思いますが」
「あなた…本当に鉄道雑誌の編集者なの? 個人的興味だけでも一度は来たくならない?」
「そりゃぁ来たいですけど、ここまで来るのは時間的に結構きついので…つい…」
奈美さんは何も言わずに軽くため息をついて、再び外に顔を向けた。
ありゃりゃ、こりゃマジに呆れられたぞ。
ところがすぐにトンネルに突入。
さすがに真っ暗なトンネル内じゃ、ほとんど何も見えない。
奈美さんは三白眼でまたこっちを向き直った。
「… い、忙しいのはわかるけど、自分で興味を持たないといつまでも通り一遍の記事しか書けないわよぉ」
「は、はい。なるべく…頑張ります」
今度は軽く鼻息を漏らして微笑んでくれた。
長い長いトンネルは途中、横浜線の大口あたりで谷間を高架線で超えるけど、ここも騒音防止のためにフルシェルターで覆われていて、非常口のドアの隙間から外光が少しだけ見えただけだった。
5分近く走って、やっと京急線生麦駅のすぐ横で明かり区間に出た。
まあ、相鉄JR直通線に乗っていたらもはや日常的なのだが、俺は初めてだったから左右にいくつもの線路が並んでいるを見て驚いてしまった。
何しろ山側から横須賀線・東海道本線・京浜東北線・東海道貨物線の本牧からの上り線・今俺たちが走っている東海道貨物線・東海道貨物線の本牧方面線、そして京急本線と6複線が並んでいるのだ。
俺は何度もここを通ってはいるけど、普段はまあこんなものだろうと流していた。
確かに壮観な風景だが、奈美さんが言う通り、興味を持たないと感動すらしていなかった。
“スペーシアはこね”は鶴見川を越えたらすぐに東海道線と京浜東北線をオーバーパスして横須賀線に合流… … ?
「あれ? 奈美さん。横須賀線に合流しませんよ?」
“スペーシアはこね”は転線せずにそのまま直進してゆく。
「このままじゃ… おおっ!」
そのまま高架線に上がって行き、すぐに右に大きくカーブした。
「あれ? どこに行くんですか? この列車!」
「まあまあ、子供じゃないんだからおとなしく座ってなさいよ」
奈美さんはニヤニヤしながら宥めるように言った。
すぐに右側に南武支線が寄ってきて、川崎新町駅先で合流した。
“スペーシアはこね”は速度を落として45km/hくらいでそのまま進む。
浜川崎駅手前で左左へと分岐を過ぎて、右から近寄ってきた鶴見線の貨物線の高架に上がって行く。
やがて合流して、さらに奥へ。
広大な貨物ヤードの左端をゆっくりゆっくり進んで行った。
「奈美さん、ここって浜川崎の貨物ヤードじゃないですか?」
「正確には塩浜なんだけどね。タンク車ばっかりだね、やっぱり」
「いやいやいや、この先は線路が行き止まりじゃないですか。ここで折り返すんですか?」
「ううん。このまま行くよ?」
「はい?」
“スペーシアはこね”は奈美さんの言葉通り、全く止まる気配もなくゆっくり進んで行く。
やがて下り勾配に入り…。
「トンネル? どこに繋がって… あ! 大井貨物ターミナルですか?」
「正解!」
確かに大井貨物ターミナルまでなら線路が繋がっている。
しかし、その先は大汐線と言って汐留までの貨物線が昔は通っていた。
でも現在は田町駅の手前で途切れていたはずだ。
「全くどこに向かってるのかわかりません。降参です。教えてください」
「まあまあ、もうじきわかるから」
長い長いトンネルをゆっくり進み、品川区の八潮でトンネルから出た。
ところが、分岐で右に進む。
左に分岐していった線路の先は広い貨物ヤードが見えた。
巨大な倉庫のビルの間からも無数のコンテナが見えた。
「奈美さん、ここって…」
と、奈美さんを振り返ると、窓の外に電車が見える。
それは…。
「りんかい線!?」
「そうよ。ここはりんかい線の八潮車両基地よ」
「そうよ、って、JRから直通できるんですか?」
「ですか? って今直通してきたじゃない。ここからはりんかい線の回送線を通って、新木場では京葉線に直通するのよ。ってあなたが草案作ったんじゃない」
「いえいえ、俺は湘南新宿ラインで大崎駅でのスイッチバックを…」
「それだと、折り返しのための時間が取れなくて、新宿まで行かなきゃいけなくなるらしいの」
「りんかい線のホームが2本あってもですか?」
「大崎折り返しのりんかい線内運用と、埼京線からの直通の関係で無理だったらしいわ」
「ならば、特例で車両基地経由にできないか? ということになったの」
その場合はもちろん試運転を行い、国交省の特認が必要となるが、なんとかなったらしい。
有事の際は、走行する事業者の車庫まで回送する必要があるため、逆に車両基地経由が功を奏したらしい。
「な、なんということでしょう…orz」
俺は思わず両手を床について突っ伏してしまった。
何はともあれ、これで“スペーシアはこね”で東京湾眺望が現実のものとなったのは、喜ばしいこと…なんだろう。
<続く>
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