11 / 14
第11話 ……──三日間。
しおりを挟むどこに消えた……?
まさか俺は……置き去りにされたのか……?
置き去りにするべき俺が、置き去りに……?
──脳裏を過るのは最悪のシナリオ。
いいや。ありえない。なぜならこのタイミングで俺を置き去りにしても面白くないからだ。
あいつは純情を弄び至福を肥やす悪魔だ。
そんな悪魔にとって、今はベストなタイミングとは言えない。
俺には嫌ってほどわかる。お前を置き去りにするために、こんなところにまでついて来た俺にはな!
なんせこの後には、ちゃぷちゃぷを控えている。
散々匂わせるだけ匂わせて期待させまくっているのだから、俺のマヌケ面が見たくて仕方がないはずだ。
もし仮に、置き去りブーメランを食らってしまうのであれば、それはちゃぷちゃぷの最中だ。
だからここで、俺を置き去りにしてエンディングを迎えることなど、絶対にありえない──。
と、なれば。
どこに行ったんだ?
とりあえず、電話してみるか。
……いやだめだ。ついさっき『くっつき虫』と馬鹿にされたばかりだろ。居なくなったからってすぐに連絡をしてしまっては、あいつをますます調子づかせることになる。
……ん。待てよ。まさか……! いや、もうそうとしか考えれない!
くそっ。あの女、味を占めやがったな!
これはわざとだ。きっと物陰から俺の動向を観察しているに違いない。
頃合いを見計らって、適当になにか言い訳をつけて戻って来るんだ。そうして俺をまた『くっつき虫』に陥れようとしているんだ。
あぁ、あんときのあいつは「いいよぉいいよぉ! もっと花純ちゃんにくっつきなさーい!」とか言って、すっげえ嬉しそうな顔をしていたからな。
あぁ、そうだよ。あの悪魔ならこれくらいのこと、朝起きて洗面所で顔を洗うように、歯磨きをするように──朝飯前にやってみせる。良心の呵責もない悪魔なら、やれてしまうんだ……!
くっ。ならば耐えるんだ。ここでおどけて、あたりをキョロキョロしたり、急いでトイレに逃げようものなら、あいつの思うツボだ。
般若心経を唱え、明鏡止水へ──。雑念を取り払え!
「んふぅ♡ やっ、激しっ。マー君……♡」
「やれやれ。わがままな唇はさらに蓋をしてしまおうね」
(般若心経般若心経般若心経般若心経般若心経)
大丈夫。……大丈夫。
「やっぱもう我慢できねえよ。あと何分待ちゃいいんだよ」
「これ以上、駄々をこねるならさっきの話はなかったことにするよ?」
雑念を取り払え。
(般若心経般若心経般若心経般若心経般若心経)
「ちっ。お前は本当にずるい女だな。こっちは今すぐ逆膝枕で半脱ぎパンストとパンティの間にサンドイッチしたいってのによ。ったく。イライラさせやがる」
「……もぉ。怒らないの。……本当はサプライズにしたかったんだけど、仕方ないから教えてあげる♡ 実はね今履いているパンスト、三日間履きっぱなしなの♡」
「……は? おいおい? まじかよ?! それまじで言ってるのかよ!! んなもん聞かされちまったら従うしかねえだろうが! お前の三日間を無駄にさせるわけにはいかねえだろうがよ!」
………………あかん。
もういい。花純にどう思われようと構わない!
直ちにこの場所から、離脱する!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
心の中で般若心経を唱えながらスマートな足取りで向かう先。
それはもちろん男子トイレ。男子にのみ立ち入ることが許された、男子だけの花園。
愛ラブ無法地帯といえども、ここだけは法の下に守られる。らぶらぶちゅっちゅカップル絶対不可侵領域──安息の地。
の、はずだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
──地獄を見た。
この世の、終わりを見た──。
「しっ。人が来たから静かに」
「だって、そんなのぉ……無理ぃ♡」
絶対不可侵領域さえも──。愛に侵されていたんだ。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる