上 下
24 / 36

第二十四話 ソノおパンツは全てを知っていた(中)

しおりを挟む

「なるほどぉ~。それでダルマさんが転んだみたいにクンクン嗅いでたわけだぁ!」

「そそ! どうしたら心音みたいな女の子の匂いになれるかなって。研究……的な!」

「それならそうとコソコソせずに言ってくれれば良かったのに。まったくコタは変なところ遠慮するんだから」

 そう言うと頭を優しくポンッとされた。

 穴があれば入りたい。
 そう思う気持ちが、いとも容易く僕の口から嘘を吐き出させる。

 心音に抱く恋心を隠すために、許されない嘘を吐いているような気がす……る。

 でもだからって、どうする。

〝心音のおっぱいが気になって仕方がなくて!
 良い匂いだったからクンクン嗅いじゃった!〟

 ……ううむ。言えるわけがない。

 こんなこと、恋心を悟られるよりも数段ひどい。

 状況は変われど選択肢は変わらない。
 女の子になることに憧れを抱く、女装好きな男子高校生。こうする他、幼馴染であり続ける道は残されていない。

 でもこれじゃまるで、おっぱいが見たい+匂いをクンクン嗅ぎたいが為に、嘘を吐いているようなものだ。

 でもだからって……。

 どんなに考えても答えは見つからず、『でもだからって』のループになる。

 結局、間違っているとわかっていても、恋する気持ちには抗えない。

 綺麗事を並べても、心は真っ直ぐに進むことしか……できないのかもしれない。

 ◇
「じゃあ、お化粧の続きしよっか」
「……うん」

 忘れていた。
 これから僕は……お化粧をされて女の子になるんだ。覚悟は決めたはずなのに、話が逸れてく内に緩くなってしまった。

「あれれ、元気ない顔してるなぁ。不安になって来ちゃったのかな?」

「……だ、大丈夫!」

「ダメそうじゃん。コタはほんとわかりやすいんだからぁ。……えっと、じゃあ、さっきみたいにここ見てなよ。好きなんでしょ?」

 そう言うと心音は視線を落とした。
 視線の先にあるのは、谷間のi。

 それはまるで注射をされるときに『好きな食べ物は?』と聞かれ、考えてる間に終わっているような、軽い感じの提案だった。
 
「い、いいの?」
「いいもなにも、昨日も一昨日もすっごい見てたじゃん。ダメならダメってとっくに言ってるよぉ~。それに、気付かないフリするのも疲れるんだよ?」

「ソ、ソウダッタンダー」

 あれ、なんだろ。あれ、あれれ?!

「だから見て。これはわたしからのお願い。さっきも言ったけど、幼馴染なんだから遠慮はしないこと。わかった?」

「ハイ! ヨロコンデ!」

 何かがおかしいと思いながらも、僕の返事は見事なまでに即答だった。
 
「うん。いいこ。じゃあ始めよっか!」

 そうして、頭を二回撫でられると、
 顔面工事。お化粧はスタートした。


 ◇◇
 心音の言葉に感じる妙な引っ掛かりも、谷間のiを心置きなく見始めた2秒後には、どうでもよくなっていた。

 今置かれている状況に幸せを覚えた瞬間だった。

 それと同時に罪悪感も……。

 女の子同士の特権。
 谷間観察チケットを付与されたような、そんな気がしたんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

処理中です...