2 / 36
第二話 ぶらりおパンツ一人旅
しおりを挟むあれから一週間。僕は洗濯機を漁るのが日課になっていた。もちろん、自分のおパンツの所在を確認する為だ。
妹のパンツには触れないよう最善の注意を払いながら且つ、妹にバレぬよう洗濯機を漁る。
ガサガサゴソゴソ。ガサゴソ。
「ない……」
現在時刻は深夜0時。僕のパンツは行方をくらましていた。
でも焦らない。朝には洗濯機の中に戻っていることがわかっているからだ。
この一週間、漁り続けた甲斐あっていつ無くなるのかおおよその時間まで把握している。
片道切符なら由々しき事態だ。でも戻ってくる。ちゃんと帰ってくるんだ。
これはおパンツの日帰り旅行。きっと一人旅。だと思いたい。
……けど、たぶん海乃との二人旅。
この家には僕と海乃しか居ない。両親は海外赴任中。
戸締りもしっかりしているし。状況が全てを物語る。
愕然と事実に浸っていると、背後に気配が。そして、
「えっ、お兄? 何やってんの?」
う……そ? 洗濯機漁ってるのバレた?!
いや、海乃のパンツには一切触れてない。漁っても焦るなべからず! 落ち着け。誤魔化せ。
「あっ、シャワー浴びてから寝ようかなと思ってさ。あははっ」
やばい。海乃の顔をみれない。
「ふーん。珍しいね。こんな時間に」
「たまには……ね?」
めっちゃ疑ってる。腕組んで首傾げちゃったよ。
「バスタオルも着替えも持たずに?」
「あー、お兄ちゃんうっかりしちゃったなぁ~。疲れてるのかなぁ。あははぁ……」
やばい。まずい。誤魔化しきれない。
「片腕、洗濯機に入れて?」
「あー、これはその……さっき使ったバスタオルがあったらそれ使っちゃおうかなー。とか。あははぁ……」
終わった。苦し過ぎる。
おい、僕の右手。何やってんだよ。なんてところに手を突っ込んでるんだよ。大馬鹿やろう。
「なぁーんだ。そういうことか。疑うわけじゃないけどさ、二人でこの家に住む時に決めたこと覚えてる?」
え、笑った? 海乃が少し笑ってる。
でもなんだろこれ……安堵の笑顔?
「も、もちろん。洗濯当番は海乃」
「うん。じゃあ、もう二度とこういうことはしないで。ただでさえ色々と気使うことが多いんだからさ。紛らわしいことしないでよ」
あ……れ? それだけ?
「う、うん。これからは気をつけるね!」
「はぁ。着替えとタオル持ってきてあげるからシャワー浴びてていいよ」
優しい。海乃どうした?!
──そして答え合わせをするかのようにシャワーから戻るとさっきまで僕が履いていたおパンツさえも……日帰り旅行へと旅立っていた。
海乃が何を考えているのかわからない。僕のことを嫌ってるはずだ。なのにどうして……パンツ持って行っちゃうんだよ?!
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
じれったい夜の残像
ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、
ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。
そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。
再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。
再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、
美咲は「じれったい」感情に翻弄される。


社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる