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93話

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 停学九日目。午前九時三十分。西御砂糖駅到着。

「は、早く来過ぎてしまった」
 
 今日は少し遠出をして最側と星を観に行く。星ノ丘自然公園でピクニックからのプラネタリウムにロープウェイ。待ち合わせは十時に改札。

 いや、ほんと。早く来過ぎてしまった!!


 ──ピコンッ。最側からメッセージ。
《いま家でましたー。先輩だいじょぶですかー?》

 えっと、《り~、俺もいま家出たとこー》


 今回は大丈夫そう。連絡先も知ってるし。連絡取れてるしっ。いま、メッセージ来たしっ!

 あの日のようにはならないっ!


 テクテクテクテク。
 えーと、改札前だからこの辺で待ってりゃいいかな。

 ……いや、時間あるしトイレ行こ。停学中だし、人目は気にしないと。髪型……もう一度みとこ。と、くるりとUターンした時だった。

 ドンッ。「あっ、すみません」

 「いえ、こちらこそ」


 「「っっ?!」」

 振り向きざまににぶつかったのは、まさかの最側だった。
 今さっきメッセージ来たばかりなのに、なにごと?!


「ちょっ、先輩!? ……えっ来るの早過ぎませんか?」
「いや、お前こそ!」
「あはっあははっ。うける! 先輩来るのまじ早過ぎ。なにしてるんですか? あははっ」
「いやいや、それ、お前もだからな?!」

 ──どうやら、気持ちは同じみたいだ。心の距離は着実に埋まってる。


「な、なんですか? そんなにジロジロ見ないでくださいよ」

「いつもと雰囲気違うなって。いいじゃん!」
「そりゃあ、今日はお出掛けですからねー! 先輩は普段と変わらず無難系男子ですけど」

「うっせ!」

 今日の最側は片側サイドが綺麗に三つ編でアレンジされていて、星形のヘアゴムが付いていた。ほんと、星好きなんだな。

 手にはバスケットのお弁当箱を両手で持っていて、おしとやかな草原の美女的な雰囲気。

 まさか草原の美女系を理解出来る日が来るとは。などと、思っていると、

「しょーがないんで、今日だけ特別に隣歩いてあげますッ! 良かったですね先輩っ。こんな美少女の隣歩けて!!」

 うん、ほんと最側っぽい。かわいいやつめ。

 返事をすることなく、俺はスタスタとホームに向かって歩くことにした。

「あーッ!! ちょっと待ってくださいよーーっ、先行くとか無いですからーー!!」

 ◇◇◇

 今日、こうやって二人でお出掛けを出来るのは最側のお母さんのおかげだ。

 たまたまプラネタリウムのチケットが二枚手に入ったらしい。たまたま、たまたまと何度も強調させるもんだから、これ絶対たまたまじゃないやつだ。と、俺と最側はすぐにわかった。

 けど、せっかく用意してくれたチケット。無下にはできない。

「仕方ないから」と言う理由だけでは最側の重い腰は動かなかった。交換条件として、一緒に行ってくれたらもう学校はサボらない。と約束をして、今日という日は出来上がった。


 俺と最側の心の距離を埋める絶好の機会。……もしかしたらもう、埋まってるのかもしれない。

 それでも俺はこの世界で最後に……二人で出掛けたかった。


 ──最後の想い出が欲しかったんだ。
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