優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

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88話

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「ウェッティーウェッティー!」

 俺は一年の教室目掛け走り出した。
 北村とチャラ崎が叫びながら追い掛けてくる。

 もう、止まれない。この目で確かめるまでは止まることなんて出来ない。

 最側……学校来てるよな?

 一年のクラスを一つずつ覗き込む。
 居ない。な、なぁに今は昼休み。どっか行ってるだけだよな?

 壁を背に廊下に腰を下ろす。
 大丈夫。最側はきっと来る。


「はぁはぁ。まったくやのちゃんは。その手で二見さんに触れたら全校生徒を敵に回すっつーの! いや、なに。もう、そういうことはしてるんだろうけど……それとこれとは別。ウェッティーで手を拭くんだ!」

「矢野くんさぁ、二見さんの彼氏なんだからしっかりしないと。トイレの……それも個室から出て来てそのままって……これは俺たち三人だけの秘密だな」


 あぁ。ほんと俺って成長しないな。
 また周りが見えなくなっていた。

「ありがとう……北村、チャラ崎」


 一年の教室が並ぶ廊下。

 俺たちは仲良くウェットティッシュで手を拭いた。

 その光景はたぶん、異様だったと思う。
 上級生である二年生が、それも二年を代表するチャラペアの二人に、四天王の彼氏としてある意味有名人の俺。

 一年の生活圏で我が物面で何を遠慮するわけでもなく、たむろする。

 手を拭きながら女の子の顔を物色した。
 俺は必死になって最側を探した。

 その目はきっと、ギラギラしていた。
 ハンターの目つきだったと思う。


「聞いちゃったほうが早くね?」
「それなっ! まじそれなっ!」

 チャラ男のコミュ力とは凄いもので、彼らのチャラ男たる所以を垣間見た。

 フレンドリーに通りがかりの一年女子に話し掛け最側の話題を振る。


 そうして、残酷な答えへと辿り着く。

 ◇

「おいおいー、いいのかよ? やのちゅわぁーん! さっきからブーブースマホ鳴ってるじゃん? 彼女からじゃないのかよ~?」

「まぁ、四天王の彼氏ともなると俺らには理解の及ばない、人智を超えた理由があるんだろうよ」

 トイレに行ったまま帰ってこない。すぐにでもちほに連絡をしなければいけないのに、スマホを取り出す気力が湧かない。

 現実の整理がつかなくて、この場から動けなくなってしまった。
 

 
 ──最側は、学校を辞めていたんだ。

 

 
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