優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

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75話

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 降りしきる雨。傘もささずに、俺はいま……体育座りをしている。

 東御砂糖駅から歩いて五分。地元では待ち合わせスポットとして親しまれている、コアラ像の前で。


 約束の時間になっても最側は来なかった。13時いちじに待ち合わせをしていた。今はもう15時さんじだ。

 きっと何か事情があるに違いない。

 スマホ交換dayを懸念して連絡先の交換はしなかった。それがこの結果を生んだ。

 待ち合わせ時間を過ぎても帰らなかった事も原因だ。帰れなかった。動けなかった。

 負の連鎖だ。色々な事が絡まって奇跡的に今の状況を作ってる。

 天気予報では雨は降らないと言っていた。
 雨さえ降ってなければこんなにも惨めにはなっていない。

 妖精さんと一緒に来なかった事。
 タイムリープするなり正解へ導いてくれただろうに。


 もうダメだ。全てが今日という日を否定しているように思える。


 これは罰なんだ。はたからみたら浮気。
 クズ男の末路としては足らないくらいだ。あはは。



 (なにあれ? やばくない?)
 (見るなって。青春しちゃってるだけだろ)
 (やばー拗らせてるなー)


 通行人からの容赦無い声が耳に届く。

 当然の報いだ。でも、ここから動けない。自業自得なんだ。



 もう、前を向く事も出来ない。
 俺は自分の膝に顔を埋めた。

 ◆◇◆◇

 …………。
 どれくらい時間が経ったのだろうか。寝てしまった。

 (いいねぇ青春って感じでー)
 (憧れちゃうよなー)
 (可愛い子だから絵になってるだけでしょー)

 (あ、まだ居るじゃん。いいなぁ。1時間くらい?)
 (わたしがやってあげよっか?)
 (おまえにやられてもなぁ)
 (あー、なにそれ浮気ぃ?)


 なんだろう。心無い声じゃないような?

 埋くまっていた顔を上げた。

「ま、眩しい」

 ボソッと声が出てしまう。目がパチクリする。

「おはよ。せーんぱい」

 ……最側? 傘……? 隣に座ってる?


「あー、じゃなかった。遅くなってごめんなさい」

 ……………………。なんだこれ。どういう状況だ?

 いや、早くなにか言わないと。

「あ、いや。おせーよほんと」
「あはは。アイス奢るんで許して下さいッ!」

 いつも通りの最側だった。
 何事も無かったかのように接してくる。

 待て、いつから居たんだ?

「最側、その……気付かなくてごめんな」
「いーえー、今さっき来たところなので問題なしです♪」

 嘘だ……通行人が1時間と言っていた。

「本当にごめん」
「えー、らしくないですよぉ。ちょっときもいですぅ‼︎」

 こ、こいつ……。


「ん~、とりあえずお風呂入りましょっか! 風邪ひいちゃいますし……目立ちますし!」

 確かにそうだ。なにやってんだよ。

「俺、今日は帰るわ。また別の日に」
「いやいや、お母さんがお風呂沸かして待ってますから! うちここから近いんですよッ!」
「いやいや、それは──」
「はいはい。じゃあ行きますよぉ~! バイト仲間なんですからッ‼︎」


 まただ。またこれだ。
 俺の心の中にズカズカと……無責任に土足で入ってくる。


 ──もう、バイト仲間じゃ片付けられないよ……。


 
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