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71話

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 女子更衣室の扉は開いたまま。入り口スレスレの場所に立ち背を向ける。

 足を踏み入れてはいない。これならいい。

 この位置は……絶対防衛ライン。

 これより先に足を踏み入れては絶対にならない。

 理性や自制心、果ては自尊心。様々な気持ちと葛藤の末、俺はこのスレスレのラインをスレスレのところで確立した。

「しょーがない人ですねー」っと何故か上から偉そうに言われるも、スレスレラインでの更衣室付き添いにOKをもらった。
 何故、俺が……とも思ったが、店長に頼まれてしまったのだから仕方がない。

 店長公認。おかしな話だ。
 更衣室で、着替えてる最中に何かあったのだろうか。

 想像の域を出ないが、聞いてはいけないような気がした。最側の為に、ではなく俺の為に。

 俺にはちほがいる。彼女がいるんだ。
 知ったところでどうすることもできない。

 深入りしてはいけない。あくまでバイト仲間としてだけ。


「そーいえばー、先輩はまだ制服じゃないんですねー」

 扉の開いたこの状況で普通に会話を始める。本当に凄い子だよ。心配する必要……ないな。

「ねぇ、聞いてますー?」
「お、おう。昨日の今日だから2~3日掛かるらしい。売り場に出るわけじゃないし」
「そぉーなんですねー」

 そう言うと昨日と同じように最側の手だけが視界に入る。ボディペーパーだ。

 甘い匂いが漂う。
 この状況と相まって気が狂いそうになる。

「ほら、せーんぱい!」
「あぁ、さんきゅー」


 二回目でも慣れない。いや、ほんとこれは何?!


 ──バイト仲間ってこんなことするの?!
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