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68話
しおりを挟む──事務所IN
テーブルを挟むように俺と店長はソファーに座った。
「まぁ、見ての通りだ。最側には固定客が居る」
なるほど。って、えっ?!
「彼女が出勤する日は例え夕方からでも前年比200%超えの売り上げを叩き出す。300%を超える日だってあるんだ。それだけではない。注文を最側にお任せする客が殆どだから、在庫も撒ける。だからこそ……なのだよ」
だからこそ何?! 色々ぶっ飛んでるけど、そこは最後まで言おうよ?
「意味がよくわかりません」
「いちごちゃんは意外と馬鹿なのか?」
て、店長……信じてたのに。
「冗談だよ。最側は女性クルーからは妬まれ、男性クルーからは惚れられ〝ぼっちクルー〟になっているんだ」
「なんですかそれ?」
俺は少々、声を荒げてしまった。
「まぁ、落ち着きなさい。最後までわたしに言わせるのか。君はなかなかに鬼畜じみてるな」
馬鹿かと。でも、店長もきっと言いたくないんだろうな。寂しげな顔からはそんな様子がうかがえた。
「順を追って話そうか。現状、この店の男性クルーはいちごちゃんただ一人だ。応援クルーのダブル田中のおかげで厨房は問題なく回っているが」
「田中さんが休みの日は?」
店長さんは静かにうなずき「大丈夫」とだけ。それ以上は何も言わなかった。
田中さんが過酷な状況だと言う事はわかったが、特殊部隊のS級クルーだと思うと、不思議と心配にもならなければ興味も湧かなかった。
──そんな事より、俺はもっと最側の事が知りたい。
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