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66話
しおりを挟むガチャン。無事に店内の奥へ入れた。最側感謝!!
「じゃあ、研修頑張って下さいねー!」
「待ってくれ!!」
「はい?」
「俺はこれからどうしたら?」
こんな通路で放置されたら困っちゃうよ?
「…………。えっ、知らないですよー」
最側なりに考えてくれたように見えたが、めんどくさそうな顔と口調で突き放されてしまった。
ここで引き下がったら二の舞だ。俺はまた……体育座りをするしかなくなる。
「おまえしか居ないんだ。頼む」
「なんですかそれ。一瞬ドキッとしちゃったじゃないですかぁ。ほんと、どこでそういうの覚えてるんですかッ!」
慌てるように大きく一歩後ろに下がり、近寄らないでと、手をこちらに向けてきた。
しかし、引き下がれない。体育座りはもう嫌だ!!
「おまえに見捨てられたら、俺はもう終わりだ」
誠心誠意、懇願した。脳裏を過るのは体育座り。最後まで諦めない!!
「さすがにきもいですぅ。わかりましたから、頭上げて下さいぃぃ!!」
やった!! 最側サンキュー!!
「あからさまに嬉しそうな顔しないで下さいよー。もーーーう、きもいですきもいですきもいですぅ!!」
やっぱ、腹立つわこの女。
◆◇◆◇◆◇
テクテクテクテクテクテク。
最側についていった。そして最側は当たり前のように女子更衣室に入る。当然、俺はここで立ち止まる。
昨晩と同じミスはしない!!
「じゃあ、先輩♪ 後ろ向いてて下さいーー。って居ない?!」
当たり前だろうが!! 馬鹿女!!
「俺はここで待つわ!」
それだけ言い、扉を閉めた。
ガチャンッ。
「うー。勝手に開けて覗かないで下さいよぉ!」
「覗くわけねーだろ!」
…………。
「そこに居られると落ち着かないなぁ。入って来て下さいよぉ!!」
…………。
「ねぇ、せんぱーい! 聞いてますー?」
「馬鹿な事言ってないで、早く着替えちまえよ!」
「うーーーー。覗かないで下さいよぉ?」
「覗かねぇよ!!」
普通じゃないだろこれ。部屋の外に居るより、中に入って背中を向けててくれた方が良いって事なのか?
女心はわからないからなぁ。これが普通なのだろうか。いや、どう考えてもおかしい。
ほんと、何考えてるのこの子。
◆◇
「せーんぱい♪ おまたせです♪」
「おう、早かったな」
「あ、なんか鳥肌立ってきました。なんですかこれ、カップルの待ち合わせですか? ごめんなさい無理です」
こ、こいつ……。
「まっ、とりあえず店長を探しますかー!」
◆
店長は食料庫に居た。
「もう、そんな時間か。悪かったね!」
「お疲れさまでーす! ご苦労さまでーす!」
簡単に挨拶を済ませると、最側と店長さんがミーティングをしだした。ーー此処で?!
「じゃあ、頼んだぞ今日も!」
「はいはぁい!」
このやる気のない返事。〝はい〟を二回言うな! 一回にしろ!!
「さっそくで悪いが運ぶの手伝ってくれ! 男手があると助かるな!!」
「はい!」
見たか最側。返事の仕方はこうだぞ?
──当然、感心はゼロ。まぁキリキリしてたら最側っぽくないか。
台車に目一杯乗せられる食材。
俺が台車を押し、店長さんが落ちないように押さえる。
おい、最側。おまえは?
「最側! おまえも手伝えよ!!」
「あー、いいんだ。こんなところで体力を使わせる訳にはいかん! 売上に関わるからな」
「そーなんです。先輩頑張って下さい。」
意味はわからないが、少し切なそうな顔をしているように見えた。
俺は最側でも持てそうな袋を取り出し、渡した。
「これでも持ってろ。一人だけ楽しようとするな」
「…………はいッ!!」
一瞬、驚いたような様子を見せるも、嬉しそうに袋を受け取り笑顔で返事をした。
そんな様子を店長がニヤニヤしながら見ていた。
「最側をよろしく頼むな!」
「あ、はい」
何をよろしく頼まれたのかまったくわからず、最側を見るも「ニコッ」と笑顔が返ってくるだけだった。
──何か言ってよ! 意味わからないから!!
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