優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

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65話

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 今日から研修がスタートする!
 俺はいま、バーガー屋さんの裏口に居る。
 帰り際に「りっくんファイト♡」と、ちほからエールを送れられた。やる気満々のノリノリだぁ!!

 さっそく裏口のベルを鳴らす。バイト初日。ドキドキ。


 ピンポーンッ!

 …………。

 ピンポーンッ!

 …………。

 まじかよ。初日からコレは堪えるものがあるな。
 
 この場合は店内入り口だったな。

 ◇◆

 ──ぐるりと周って店内到着。

 暇してそうな店員を探すも、居ない。
 
 ……店員と言えば、レジだな!!
 

 「いらっしゃいませーー」
 「列に並んでお待ち下さいーー」
 「次でお待ちのお客様どうぞーー」

 この場合どうしたらいいんだろ。
 勝手に入るわけにもいかないし。

 一声掛けるのが正解だろう。むしろそれ以外の選択肢は皆無!
 でも、レジ待ちの列に並んでしまっても良いのだろうか?

 いやいや、客じゃないし。却下。
 空いてる店員さんは、やっぱり居ない。

 えっ、まじでどうしたら?


 圧倒的〝社会経験不足!〟


 なぁに。臆する事はない。俺は今日からこの店のクルーだ! とりあえず横から声掛ければいいんだ。

「あ、あの! あの!!」

「はーい、列に並んでお待ち下さいーー」
「あっ、はい」

 俺は言われるがまま列に並んでしまった。

 って、おい。違うだろ。何やってんだよ。


 スッと列を抜け、邪魔にならず視界にも入りそうなこの辺り。観葉植物の前に立つ事にした。


 ここから店員さんに目で合図を送る。

 じーーーーー。

 気付く様子はない。でも、めげない。

 じーーーーー。


 「?」

 よしっ気付いた!!


 「はーい、列に並んでお待ち下さーい!!」

 見つめ続けた甲斐あってか、手であちらへどうぞーっとにっこりスマイルのおまけ付きだった。


 ──俺は静かに店内を後にした。


 「またのご来店お待ちしておりまーす」

 ◇◆

 ここは、難攻不落か?!

 下準備が足らなかった。舐めてたわ、社会ってやつを!! クソッ……。

 ーー店の前で絶望に浸った。体育座りで。もうダメかもしれない。嫌になってきたわ。


「……ぱいっ! せーんぱいっ?」

「……!!」


「あっ、やっと気付いた。何やってるんですかぁ?」
「さーいーかーーわぁぁぁ!!」

「わわわッ! なんなんですかきもいですこっち来ないで下さいッ!! あっち行って下さいぃぃ!」
 顔を覗き込む最側が、翼の生えた天使に見えた。
 そうだ、俺は一人じゃない。孤独なクルーじゃない。こいつが居るじゃないか!!

 …………って、あれ? これはまずいわ。

 感動のあまり、最側の胸に抱きついていた。笑えない。やってしまった。

「わりぃ」
「ふざけてるんですかッ?! そうまでしてわたしの温もりを?!」
「いや、ほんと悪かった」

 割とガチめに怒っている口調だ。
 謝るしかない。温もりの〝ぬ〟の字も欲してないけど、謝るしかない。


「しょうがない人ですねー。じゃあ帰りに一杯奢って下さいッ!」
「おう! 何杯でも奢るよ!」

「それなら、二杯!! バイト仲間ですからねー!」
「任せろっ!」
「示談成立ですッ!!」


 ──バイト仲間って素晴らしいな。


「で、何してるんですか? きもいですよ?」
「裏口のチャイム押しても、反応なくてさ。店の人も忙しそうで詰んでた」
「それだけ? 先輩って意外と脆いんですねー」

 きょとんとしたかと思えば、呆れ口調。

 思い出したわ。こういう奴だった。ぐさぐさぐさぐさと!! ムカつく野郎だ!!


「だいじょーぶですよ! 一緒に行きましょー!」

 ほらほらっと背中を叩き元気付けてくれた。
 

 ──前言撤回! うん。いい奴だ! 最側はいい奴!!
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