優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

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34話

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「ちずるはお子様だからね~!」
「馬鹿ぁぁぁぁぁ!」

 俺を間に挟み姉妹で言い争っている。ぎゅうぎゅう押しつぶされ、色々と当たって……ます。

「いいもん! ちずるだってあと二年したらお姉ちゃんみたくなるんだもん!」
「それはどうかなぁ?」
「お姉ちゃんばっかりずるい!!」
「くすぐったいっ! ちずるっ、やめて!」

 間に俺がいる事、少しでいいので思い出して下さい。ちずるちゃん……ちほのそんな所、触っちゃダメでしょ。ちほに至っては俺に乗っかってしまっている。

 ──俺はソファーと一体化する事に徹した。


「ご、ゴホン」
 お父さんが咳き込んだ。

 えっ、いつからそこに居たの。


「ダサっ! だからそのクマのTシャツは何?」
「いーの! りっくんと会う時用のユニフォームなんだから!」
「なるほどぉ! お姉ちゃんが着させたのかぁ!」


「着替えても良いかな?」

 「「ダメっ!」」

 息ぴったり! 流石は姉妹。
 クマのTシャツがユニフォーム。確かに可愛らしいTシャツのおかげで、お父さんの怖さも少しだけ和らいでいる。気を使ってくれているんだな。

 うんうん。良い子だ。

 ──1つだけわかった事がある。お父さん……家族内カースト最下位だ。こんなにもたくましい体にして怖い顔なのに……。家族とはわからないものだ。



「そーだ、パパこっちこっち」
 ちずるちゃんが何かを思い立ったように、お父さんを手招きする。……来る。ちほが上に乗っかっている。この体勢はまずい……。

「や、八ノ瀬くん。ちほ……」
「あっ、パパそれはいいの。お姉ちゃんもちょっとどいて」
「やだ。どかない!」
「もーう、お姉ちゃんわぁ!」

 目の前の光景に唖然としつつも怒りが見え隠れするお父さん、そんな事はどうでも良いと言うちずるちゃん。俺の上からどきたがらないちほ。三つ巴……。一体何が始まると言うのか……。

 俺はソファーに。そう、人形になろう。とにかく空気に徹する。

「ほら、これ!」
「どれどれ」
 ちずるちゃんとお父さんが俺の右腕を触り始める。主語なしで始まる2人の会話。何やら通じ合っているようだ。

 体を触るなら俺にもわかるように説明してくれないと……。なんなのこれ。


「なるぼど。八ノ瀬くん、ちょっといいかい。あっ、ちほ、少しで良いからどいてくれ」
 お父さんは俺の太ももを触り出す。しかし、全体を触りたいのか、ちほにどくように指示。
 ムゥっとした様子だが、素直にどくちほ。こんなに聞き分けのいいちほは初めてだ。

 俺の太もも、ふくらはぎを揉み揉みと触る。
 ちずるちゃんも負けじと胸板あたりを触り出す。

 あの……これはいったい……。

「ほら、パパ! こっちも!」
「どれどれ。はぁ。なるほど」

 何故ため息を?! 何かダメなのですか?!

「失礼するよ」
 何を思ったのか、お父さんは俺のワイシャツのボタンを外し始めた。俺はあっという間に上半身を裸にされてしまった。

「八ノ瀬くん。力を入れて」
「は、はい」

 もう意味がわからない。

「うんうん」
「なるほどねぇ!」
 お父さんとちずるちゃんはまたしても何か通じ合ってるようだった。主語を下さい。お願いします。俺にもわかるように……。


「プロテインは何を飲んでいるんだい?」
 少々呆れたような口調で俺に問い掛けるお父さん。

 プロテインって言ったのか? 聞き間違えじゃないよな。

「飲んでません」
「はぁ。やっぱりそうか」
 残念がるお父さん。ちずるちゃんに至っては少々驚いている様子だ。

「でもさ、パパ。ハングリーな証拠だよ? これは相当なストイックだね!」
「そういう見方も出来るのか。……及第点だが、合格だな」


「あ、あのこれはいったい?」
 合格ってなんだ? なんの話をしている?!

「ちほの彼氏として認めるって言ってるんだ。嬉しくないのか?」

 えっ、えーー? 

「あ、ありがとうございます」
 とりあえずお礼を。うんお礼を……。

「やったねお兄ちゃん!」
満面の笑みで俺の肩を叩くちずるちゃん。ちほの目には喜びからか薄っすらと涙が。


 妖精さんは興味が無いのか、寝っ転がりながらTVを観ていた……。


 なんなのこれ? ほんとに。


 ──兎にも角にも、俺はお父さんに認められた。意味はわからないが、今は素直に喜んでおこう……。
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