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14話

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「「「パチパチパチパチパチパチ」」」

「おめでとう八ノ瀬! 羨ましいなぁ。先生嫉妬しちゃうよ~」
 何言ってんだこのおっさん。大丈夫か。


「やの~!! お前はやる男だと思ってたぜ!!」
「くぅ~!! 羨ましいぜッ!!」

「やの君って格好良いよね!」
「はぁ? 今更過ぎ~!!」
「もう! 前から思ってたしぃ。オーラ出てたしぃ!」


 歓声と賛賞、羨みの声。なんなんだ。何が起こった?
 手のひら返しなんてレベルじゃねぇだろ……。

 昨日は散々コケにしてくれてたよな。
 オーラってなんだよ。絶対思ってないだろ。

 に、しても何故だ。何故こうもクルックルの手のひら返しを? ……奇妙だな。


「二見さんが男子とあんなに話してるの初めて見たかも~!」
「ねぇ! 可愛かったぁ!!」

 ──パンッパンッ

「はいはい、静かに!!」
 先生が場を静めた。

「兎にも角にも、八ノ瀬くん。お幸せに!」
 このこの~と言わんばかりの目つきだ。
 クラスメイトがチャッチャするのは、まぁわかる。
 でもおまえは教師だろ? なぁ、先生。どうしちまったんだよ。

「あぁ、もう時間がないな。授業まで静かにするように! って無理か? ははは」
 

 ──先生が教室を後にすると、クラスメイト達が一斉に騒ぎ出し、俺を囲んだ。

「やの~!! このこの~!!」
「おまえってやつわ!!!」

「ねぇねぇやのくん! いつからなの? 詳しく教えてよ~!」

 チッ。なんだこいつら。ふざけんなよ。
 なぁ、杉山。俺はおまえと話がしたいよ。二見さんについて詳しく聞きたい。

「うるせぇぞてめぇら! ゴラァ!!」
 一瞬にして場は沈黙と化す。龍王寺だ。彼が大声で叫んだのだ。

「おい、てめぇ黙ってられねぇのか? あ?」
 近くに居た男子の胸ぐらを掴みガンをくれた。

「クソ女共も黙ってろや」
 女子に対しても威嚇する。

 俺を囲んで居たはずのクラスメイト達は龍王寺に道を開けるように離れていく。真っ直ぐ俺の方に向かって来る。……やべぇな。めんどくせぇ。


「お、おう、八ノ瀬。おまえこういう嫌いだろ。騒がれるのさ」
 少し照れくさそうに人差し指でほっぺを掻きながら話してかけて来た。
 ……はい? どうしちゃったの龍王寺?
 殴られると思い、覚悟を決めて居たんだが。

「あ、うん。そうだね」

「はは! だよなだよな! だと思ったんだよ! まぁ、なんつーかさ、おまえはすげぇよ!」
 背中をバンッバンッと叩かれた。少し痛い。


 ──龍王寺は俺に背を向け、クラスメイト達に対し再び叫び出した。

「おいてめぇら! 聞いたか? 二度と騒がしくするんじゃねぇぞ? 二見さんもそういうの大嫌いだって事、わかってんだろ?」

  「「「…………。」」」


「返事がねぇぞ? ぶっころすぞオラァ!」


  「「「はい!!!」」」

「あ、てめぇ、今返事したか? おぉ?」
 近くに居た女子に……なんて可哀想なことを……あれ、顔真っ赤にして照れてる。まるでご褒美と言わんばかりに。……なるほど。

「ご、ごめんね。わかったよ龍王寺くん!!」
「あぁ、わかればいいんだよ」


 ──龍王寺は再びこちらを向く。さっきまでブチ切れてたであろう顔が一瞬で柔らかくなる。

「八ノ瀬、おまえがナンバーワンだよ!」
 俺は右胸を軽く叩かれた。

「あ、ありがとう龍王寺」
 全くもって意味不明だが、龍王寺に優しくされたのは初めてだ。長い長いタイムリープ生活でも一度も無かった。ここは本当に現実なのか……?


「あ、あの。そろそろいいかな? 授業……」
 いやいや、先生。いつからそこに居た!!?
 あ、授業開始時間とっくに過ぎてる。

「うんうん。先生、話聞いてたけどさ、龍王寺くんのいう事はもっともだ。みんな、守るようにな?」

 「「「はい」」」




 ──なにこれ。なんなのこれ。夢なら早く覚めろよ……。
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