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12話
しおりを挟む「どうしてお前の席に二見さんが座ってるんだ?」
クラスメイトが俺に尋ねてくる。いや、それは俺も聞きたい事なんだが……。
「やの! おい! 大丈夫か?」
杉山が心配そうな声で俺の肩を叩く。いや、ほんと良い奴だな。
「わ、わからん。悪いな杉山……心配掛けて……」
「馬鹿野郎!! なんかあったら相談しろ! 全くおまえは!」
あぁ、杉山……ほんと良い奴。タイムリープのし過ぎで本当に距離感が掴めないが、結構近そうだな。親友? なのだろうか。
「あ、行ったぞ! 龍王寺のやつ!」
クラスメイトがどよめき出す。
このクラスのプリンス事、龍王寺翼が二見に話し掛けるみたいだ。
そこ、俺の席なんだけどね。
「ふ、二見さん、どうしたの? クラス間違えちゃった?」
あの龍王寺が少しおどけているように見える。リア充の塊、イケメン、ドSの龍王寺にしてはあまりにも優し過ぎる言葉だ。しかも噛んでるし。
二見は一瞬振り向いたが、言葉を返す事なく、また窓を見つめた。
「あれ、二見さん?」
龍王寺が二見の肩に触れる。
「触らないで下さい」
と返しまた窓側を向いてしまった。
初めて机ドンした時もだが、この子は基本敬語なのだろうか。に、しても異様な光景だ。
あの龍王寺相手にこの塩対応。二見とは何者なんだ……。四天王ってそんなにすごいのか……。
龍王寺は足を一歩後ろへ、苦笑い。顔は引きつっている。そして。教室から出て行った。
さらにどよめく教室内。
『よ、妖精さんどうする?! 戻るか?』
『わ、わからん。だ、だめじゃ』
妖精さんは飛ぶのを辞め、地面に膝をつき頭を抱えていた。自称恋愛マスターのプリチーな妖精さん。予測不能な二見の行動に完全に滅入ってしまった様子だ。
自分で考えて行動するしかない……か。
……あそこは俺の席だ。何を遠慮する必要がある。俺は真っ直ぐ自分の席へ向かった。
「あー、そこ俺の席なんだけど」
二見は俺の教科書を手にし話し出す。
「あ、やっと来たぁ! 八ノ瀬陸くん。りっくんかな?」
はぁ? ダメだ意味がわからない。
「いや、そこ俺の席だから退いてくれないかな」
「あっ! ごめんね!」
二見は急いで俺の席から離れる。椅子にはハンカチが敷いてあった。ハンカチを退かしサっさと手で振り払うような仕草をして、どうぞとニッコリしてきた。
『妖精さん?! 戻ろう! 早く』
『わ、わからん。ダメじゃ……』
もはや……妖精さんは自信を喪失してしまっているようだった。俺の声が届いていない。困った。
クラス中の視線が集まる。龍王寺が軽くシカトされたにも関わらず、俺に対して笑顔を振りまく二見。
異様などよめきを纏っている。
とりあえず俺は席に座り、机にバッグを置いた。
ふぅ。と、息をつく間も無く、
なんと……二見が俺の上に正面向いて座って来た。
両手は俺の首に回している。
突然の事で、軽いパニック状態だ。
「続き。ねぇ、昨日の続きして?」
待て待て、待て待て待て待て待て! 昨日の続きってなんだ?! 待ってくれ。意味がわからない!!
『よ、妖精さん?! おい! しっかりしてくれ!!』
『な、な、なんじゃこれは……。わ、わからん』
妖精さんは……もうダメだ。落ち着くまでそっとしておいてあげよう。
クラスは唖然、騒然。もはや、誰1人、この状況を理解出来て居ないだろう。当人の俺ですら、夢でも見ているのでは無いかと思うのだから……。
二見ちほ。予想の斜め上をいく女の子。
訂正しよう。斜め上どころではなかった。
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