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二章

四十四話

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 「「えへへ」」ツンツン。ツン!

 これ癖になるやつだ!

 「「ぬふふ」」ツンツン。ツン!

 指が幸せッ!! 

 ツンツンツンツン。ツンッ!!!!!

 ◇◆

「あんたたち何やってるの?」

 カタッ!! ま、まずい。エリリンがお風呂から戻ってきた。

「いえ、ヒメナが眠りについたので撫でていただけです」

 涼しげな顔してドッ直球に誤魔化す。頼もしいぞツン友!! よっ、ツン氏!!

「ふーん。別にいいけど~。後ろ姿が怪しかったからねー、気をつけなさいよ?」

「ご忠告、感謝します」

 またしても涼しげな顔のカシスちゃん!
 小慣れている。いったいどれだけの数をツンツンしたらこれ程までに冷静な受け答えが出来るのだろうか。彼女の計り知れないツン歴が垣間見えた。

 誤魔化してくれて〝ありがとう〟の意味を込めてカシスちゃんの太ももにツンツンとフタツンした。


 こちらを向く様子はない。が、下を向きながらも笑顔で俺の太ももにツンツンとフタツンが返ってきた。


 ──言葉はいらない。ツンで語る。深いな。もっともっとツンを知りたくなった。


 ◇◆◇


 勉強机に鏡を置き、くしで髪をとかす。
 ツインテールの準備だろうか。朝の風景。

 とても手際が良い。あっという間に完成。

「じゃあ、アヤノちゃんも準備しよっか!」

 なんですと? 準備? 何処へ?

 タンスを開き「どれがいいかなー、サイズ合うかなー」と、俺に着させる服を選び始めた。

「あー、そっか。下着もだよねー」

 な、な、な、なんですと?! えっ?


「いや、エリリン。流石に下着のシェアは友達と言えどやり過ぎでは無いでしょうか?」
「えっ、そうなの?」

 ちょっとちょっとカシスちゃん?! 余計な事言わないでよ!! 

 ──負けてたまるか‼︎

「んー、でも昨日から同じ下着だから……エリリンさえ良ければ……貸して欲しいかもぉ」

 このシェアチャンス。逃してたまるか‼︎

「大丈夫ですよ。うちにヒメナが買い置いてる、新品の下着があるので、取ってきますよ。15分で戻ってきます」

 ちょっとちょっと?! ねぇ、カシスちゃん?! いいかげんにして? 空気読もうよ。ねぇ!?

「あー、そっか。結局わたしのじゃブラのサイズも合わないかー。悪いわねカシス。お願いしてもいい?」
「もちろんです」

 タタタタタタタタッ。バタンッ。

 
 女の子同士なんだからっ! 気にしなくていいのにっ! クッ!!

「どしたの? 元気ない顔してるよ?」

 ハッ‼︎

「ううん。色々と気使わせちゃって……申し訳なくて……」
「もーう。友達なんだからそういうのは禁止! わかった?」
「え、エリリンっ」むぎゅーー。


 ──よく考えたら、何もない。魔道具しか持ってきてない。お金もない。着替えもない。甘える事しかできない。これじゃ、まるで……紐。

 
 ◇◆◇◆
 
《ピンポンパンポーーン。防災ミルフィーユです。
 ミルフィーユ迷子センターからお知らせをいたします。13歳の女の子、カシスちゃんが行方不明になっております。女の子の特徴は身長150cm、黒髪ショートヘアー、痩せ型、黒の熊さんのTシャツ。お心当たりの方はミルフィーユ迷子センターまでお越し下さい。ピンポンパンポーーン。》


 「「えっ?」」

 俺とエリリンは声を合わせて驚いてしまった。

「待って待って、この距離で迷子になるとか馬鹿なの?」

 タタタタタタタタッ。バタンッ‼︎

「はぁはぁ。14歳ですッ!!」

 急いで帰って来たようで年齢を訂正した。そこなの?

「そうだっけ? で、今の放送はなに?」
「そうですとも! 13歳とか勘弁して下さい。お子様じゃないですかっ」

「それはわかったから。今の放送は? 心当たりある?」

「わかってくれましたか。立派な14歳です。誤解されたままでは生きていけませんからね」

「カーシース? 話聞いてるー?」

 あっ、エリリンの周りを僅かながらに風が立ち込める。ここは1kの部屋。抑えてはいるが、苛立ちがうかがえる。

「話? なんでしょうか? わたしは14歳です!」

「はぁ。これだからガキは嫌いなのよ。あんた、行方不明、迷い人扱いされてるけど?」
「えっ?」

 なるほど。13歳の部分に反応しただけでそれ以外の放送は聞いていなかった模様。

 ◇◆

「今、わたしを探してるとしたら、ジャスミンかレオ。いや、ジャスミンですね。絶対そうです」

 勇者レオの名前も出したが、ありえないと思ったのか候補から切り捨てた。やはりそういう男という訳か。──疑いは確信に変わった。


「事情は説明した方がいいかー。ちょっと行ってくるよー」

「待って下さい。ジャスミンもまた、ヒメナは屠られたと思っているはずです。あの鎧は遺書みたいなものなのですよ」

「はぁ。バカヒメナ……」

「わたしが一人で行きます。事情を説明してここに連れてくればいいですかね?」

「助かるわ。ありがとうね」

「いや、そこは〝とっとと行けよクソガキ〟です。どうしちゃったんですか? 先ほどから、らしくないですよ」

「ぶっころすぞクソガキ」
「どーも! では、行ってきます!」

 タタタタタタタタッ。バタンッ!


 な、なんなの? なにこれ?!

 ──この二人の関係は?! もう意味わかんない!!
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