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二章

四十三話

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 んー、むにゅむにゅ。
 むにゅっ。むにゅにゅにゅ。

「ふぁぁぁぁ。むにゅーーっ」

 眩しい……。

「おはよう。アヤノちゃん」

 金髪ストレート、天使。美しい。むにゅにゅ!

「赤ちゃんみたい。可愛いっ!」

 ハッ‼︎ 寝惚けてとんでもない事を……。

「ご、ごめんなさい」
「いいよー!! ここ、好きなんだよねっ」

 大好きに決まってるさ!! むぎゅー。

 ──乗り越えた‼︎ 朝だーッ‼︎


 仲良くロフトでお目覚め。最高の朝っ。「じゃあ降りよっか」と、俺を抱きかかえ〝シュゥゥゥ〟とゆっくり下へ。


 魔力が戻ってるっ!! 浮いてる!! お姫様抱っこ!!


「おはよぉ。魔力戻ったんだねぇ。良かった良かったぁ。ふぁぁぁ」
「もち!! おかげさまで! ありがとねっ」

 布団でぐーたらしているヒメナちゃん。グーポーズをすると再度布団に潜ってしまった。
 とっても眠そうだ。目の下には隈が。

 テーブルの上には昨晩の残り物にしてカシスちゃんの大好物、エリリンお手製の〝里芋の煮っころがし〟がお皿に盛られていた。


「魔力が戻ったとはどういう事ですか? もぐもぐ」


 ◇◆◇◆◇◆

「え、えーー?! じゃあ昨日は……。むぅ。なるほど。それでヒメナは寝ずの番を。エリリンが爆睡してるからおかしいなとは思ってたんですよ」

「そそ、昨日はカシスが好戦的だったら手も足も出なかったかなー」
「むぅ……」

 あからさまに悄気しょげるカシスちゃん。

「裏切ったりしませんよ。頼ってくれて良かったのに。日頃のお礼にデコピンくらいはしたかったですけどね」

「いいよー。あんたもあまり寝てないでしょ? デコピンで良ければどーぞ!」

「むぅ。そういうところがズルイんですよ。悪キャラなら悪キャラらしく振舞って下さい。むぅむぅむぅ‼︎」

 ピキッ。

「悪キャラって?」

「口が滑りました。ごめんなさい」

 仲が良いのか悪いのか、わからない……。

 ◇◆

 タンスから着替えとタオルを取り出し「一緒に入る?」と、エリリンが聞いてきた。
 これはまさか、朝シャン?! 朝シャンを一緒に?! 本来それは確実に一人で行う事のはずだ。ふ、二人で何を?!


 落ち着け俺。ふぅぅ。
 普通に考えてこのケースは朝風呂だろうが。はぁはぁ。はぁはぁはぁ。──ダメだ。


 静かに首を横に振った。

「そっかぁ。じゃあ明日は一緒に入ろうねーっ!」

 着替えを抱え、お尻でタンスを閉める。
 寝起きの為かハーパンが少し下がっており、エリリンの腰からは見せパンではない乙女のガチパンツが。紫ッ!!

 ふぅー。ふぅぅー。うにゃぁぁぁ!!
 お、お、お、女の子同士の日常ってパない!!


 ──こんなのは序章。ぱじゃまぱーてぃーの朝はまだまだこれからっ!
 
 ◇

「ほーら、おいでアヤノちゃーん。ぬくぬくしよぉ!」

 ブラトップ姿で肘枕をつき布団をめくる。これはなんて言う必殺技ですか? 

 ワオーーンッ‼︎ 

 秒速でヒメナちゃんの布団にダイブッ!! キャンキャン‼︎

 ヒメナちゃんの肌はしっとりしてた‼︎

 極々自然な女の子の朝ッ!
 そう、これは日常なのだ!
 ぱじゃまぱーてぃー! 女子会! 
 おはようなのだ!! はぁはぁはぁ。


「あははっ、ほんと可愛いんだからぁ! よしよしいーこ!」

 ワオーーン‼︎


 むぎゅむぎゅむぎゅー。

「良い子にしてたらぁ、またご褒美あげるからねぇ! よしよし」

 ち、違うんだ。それは違うんだ。泣きそうな目で訴えてみる。

「だーめ! そんな欲しそうな顔しても今はまだないよぉ! 欲しがりさんめ~!」

 誤解がどんどん悪化していく。この流れは止められない。いったいどこへ向かおうと言うのだ。

 でも、この誤解のおかげで急激に仲良くなれている事も事実。深い。仲良くなるって深過ぎるよ。



 ──寝ずの番が堪えていたのか、ヒメナちゃんはすぐに眠ってしまった。ありがとう。


 眠った事に気付くやいなや、不気味な笑みを浮かべ近付くカシスちゃん。

「ツンツン。どうですか? アヤノちゃんもヒトツンしますか?」

 ヒトツン? 一杯飲む? みたいなノリでこの子はいったい何を?!

「あっ、ごめんなさい。興味……ないですよね」

 またしても悄気るカシスちゃん。この流れはダメだ!

「や、やるーー!! い、い、いいのかな?」
「もちのろんです! フタツンでもサンツンでも!!」

 ツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツン

 「「えへへ~」」

 なんだろうこれ。背徳感が……。
 いけない事を一緒にして、秘密を共有する。
 カシスちゃんともグッと近づいた気がするのだが……後ろめたい気持ちが。

 だって、ヒメナちゃんをツンツンする事への承諾をカシスちゃんに取っているのだから! おかしいでしょう!


「ま、まったく起きないんだね?」
「ええ、安心して下さい。この程度で眠りについたヒメナが起きる事はありません」
「そ、そうなんだぁ!」

 ツンツンツンツンっ。ツンツンツンツン。

「まさか、アヤノちゃんがツンツン好きだったとは。仲良くなれそうです」
「大好きだよっ。誰にも言わないでね?」
「もちのろんっ!! ふぅふぅ。ふぅーー」

 カシスちゃんが興奮してる。今にもクマゴロウが出て来そうな雰囲気だ。そうだ。この子はクマゴロウ。変態さんなんだ!! ──仲間!!

 ツンツンツンツン。

「はぁはぁ。ツン友が出来て嬉しいです。初めてのツン友……やったぁ‼︎」

 このループ史上、最高の笑顔。
 か、可愛い。ツン友とかちょっと意味がわからないけど、可愛いっ!!


 「「えへ、えへへ」」ツンツンツンツン。


 ヒメナちゃんをツンツンする度に友情が深まっていく気がした。

 ──ツン友最高ッ!!
 
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