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二章
四十一話
しおりを挟む「アヤノちゃんはロフトへ。ヒメナ? いい?」
「わかってる。任せて」
えっ。えっ?!
◇
──ロフトIN。
やっぱりここが寝室の役割を担ってたのかぁ。ギャルの匂い。乙女の寝室(ロフト)。ふぁぁぁぁ。
って、今はそれどころじゃない!!
うーー、でも!!
バタバタバタバタ。興奮が興奮がぁ‼︎ ぷはぁ!!
「しーっ。これあげるから静かにしててね」
まるで子供をあやすかのように。そう、飴玉でも渡すかのように、ヒメナちゃんがひょっこり顔を出し〝ニーハイ〟を手渡してきた。それも片方だけ。──ギャルの寝室に暗雲が立ち込める。
「あ、ありがとう。静かにするね……」
「良い子。無事に事が済んだら……もう片方もあげるからね」
──どうしてこうなった? 頭を優しく撫でられながらも素直に喜べない自分が居た。
なびく美しい銀髪。見事なくびれに大きな胸。輝く綺麗な脚、そして太もも。お姫様にして美少女。
……その正体は、やはり馬鹿なのだろうか。
◇
カチャカチャ。カチャカチャカチャカチャ。
「あ、開けて!!」
女の声? 誰だっけ、この声……。
ロフトで息を潜めながら聞き耳を立てる。
──安定の傍観者。無力。
「なんだー、カシスじゃん。何?」
「何? じゃないですっ!! ヒメナは? ヒメナ見なかったですか?!」
カシスちゃんか! あぁ懐かしいなぁ。クマゴロウ。
「やっほー!」
「えーーっ?! なんでそこにヒメナが居るんですか?」
シュタッ。ドンッ。
何処に居たの? 天井っぽい。
「いや、追ってだったら刈り取ろうかなーーって。で、何しに来たの? 子供は帰る時間だよっ!!」
「めちゃくちゃ怖いんですけど。ていうか、ヒメナの癖に生意気な……探していたのですよ……どこにも居ないから。てっきりエリリンに屠られてしまったのかと。鎧だけが不自然にベッドにあったので……」
とんでもない会話だな……。あの鎧。確かに誤解するな。
「おいクソチビ。屠る? ずいぶんな言いようだな?」
「あの、エリリン。今はその乗りキツイです。ごめんなさい」
やっぱりこの二人は仲が悪い。あの最悪な状況を見て来た身としては、この程度の会話ならホッコリしてしまうけど。
「ははーん。詠唱完了した状態で玄関をノックしてたなぁ? とりあえずその魔法消すところからだね!」
「はい。ヒメナにはわかっちゃいますよね。エリリン相手にはこれしか無いですから。非礼を詫びます。ごめんなさい。すぐに消します」
しゅぅぅぅ。ぽんっ。
ガチで殺しに来てたのかよ……。カシスちゃん侮れない。
「で、敵意は無いの?」
マジ声のエリリン。
「ありましたけど、ヒメナが屠られたと思ってたので、無事を確認出来た今、どうでもよくなってしまいました」
何事にも真っ直ぐ全力。うんうん。
「生きてるから!! ここにいるから!!」
「そうなんです。居るんですよね。とりあえず、灯は消した方が良いですよ。たまたま前を通ったら電気が付いていたので立ち寄りました」
「「あーっ!」」
◇◆◇
「あの、なんでこの子が普通にエリリンの服を着てくつろいでるんですか?」
テーブルを囲い、カーテン越しの僅か過ぎる月明かりで語る女子四人。
青春かなっ? チームエリリンにカシスちゃんも加わり生存ルートは濃厚確実!
「ダメなの? 口答えするならやっちゃってもいいんだけど?」
エリリンは絶賛チワワ中のはずだ。しかし、悟られない為なのか、戦いのエキスパートにしてエリートのテンプレのように振舞っている。
戦えない。今のエリリンは戦えない!! はいここ重要!!
「いや、別にそんなつもりでは……ごめんなさい」
ちょっぴりビビってる模様。今のカシスちゃんなら赤子を捻るかの如く屠れるだろう。けど、それを悟らせないエリリン。まじパない!!
「それでー、レオとジャスミンは?」
本題と言わんばかりに続けるエリリンっ!
「ジャスミンはわかりません。別行動で森を探してましたので。レオは酒場に居ましたね。店主曰く、夕方には既に居たとか」
「ははっ。わたしが任務放棄して邪魔立てまでしたってのに、そんな早くから。あははっ」
「エリリン。気を確かに。元からそういう男です。だからこそ、明日にはケロッとしてますよ。今日さえ越えれば何事も無かったかのように明日を迎えられます」
「あんたに慰められるとか、余計に悲しくなるわ」
やっぱり仲はよろしくない。けど、上下関係的なそれは出来上がってるように見えた。そんな中、俺を助ける為にあの世界では戦ってくれたのか……。
繰り返した世界の記憶が糧になる。信用出来るかどうか、すぐにわかる。
ただ単に破滅エンドを回避するだけじゃダメだ。
チロルちゃんとも約束したんだ。
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チャラ男の呪縛からみんなを解き放ち、救いたい。そして……じゅるり。
──残すピースはあと一つ。ジャスミン姉さん。
無力なチワワはお祈りをする。今はただ、祈る事しかできない。
◇◆
トントン。肩を叩かれた。誰?
ヒメナちゃんでした。
「良い子に待てて偉かったね!」
あ、やばい。これはやばいパターンだ。
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