25 / 62
一章
二十五話
しおりを挟む「あやのさん。息子に脅されている訳ではないのですか? もしそうじゃないなら騙されてます。これは親としての監督責任。経緯を話していただけませんか?」
悲しいぜ親父。信用ゼロ。
俺をなんだと思ってやがる。
「いえ。たかしさんの事を心の底から愛してます。澄んだ瞳、キリッとした唇、気の利くスマートなお人柄。わたしには勿体無いくらいです」
ズドンッ。
あれ? また尻餅着いちゃったよ。大股広げてガクガクしてる。
流石に盛り過ぎたかな。でもな、痩せればスマートだ!
それに姿形なんて光の反射に過ぎない。所詮はその程度。大切なのは心さ! うんうん。う、ん……う……ん。
「あなた。あやのさんの服装をみてご覧なさい。彼シャツトランクスよ? 疑う余地なんてないでしょう」
「カレシャツ……トランクス……アサチュン」
何故、カタコト?
ーーあれ、親父と挨拶以外の言葉を交わすのは何年振りだろう。
「はいはい。仕事に遅刻しますよ?」
「み、みさこ。今晩は……赤飯を頼む」
「あら、もう。わかりましたよ!」
〝赤飯を頼む〟その言葉は愛の告白でもするかのように恥じらいながら斜め45度下を向いて放たれた。お、親父……。
「カレシャツ……トランクス……アサチュン」
バタンッ。
まるでおまじないでも掛けるかのように、親父はこの言葉を発し玄関を後にした。
あの厳格な親父すらも納得した。
彼シャツトランクスやばしっ。
異常を日常に変えた。窮地を救った!
〝彼シャツトランクス〟
ーーその後、この言葉が全てを解決に導いてくれた。
母ちゃんとの話し合いの末、とりあえずこの家、たかしの部屋に住むことになった。彼シャツトランクス……この家でのユニフォームにしよう。元よりユニフォームだけどっ!
たかしは住み込みで働きに出た事にした。
こんな無茶な話も彼シャツトランクスの前では信じる他ないのだ。
なぁ、たかし(俺)おまえはどんだけ信用がないんだよ。自分で自分が恥ずかしくなるぜ。
ううん。わかってる。
あやのちゃんが婚約者としてこの家に来た事。信じたい気持ちがきっと全てを否定しちゃうんだよね。
ーー母ちゃん、親父。ごめん。
◇
とりあえず次の月曜日を待つ。
チロルちゃんが言う事が確かなら、毎週月曜日に何かあると考えるのが妥当だ。
こんな事になるならチロルちゃんが何処の誰なのか聞いておくべきだった。
事態は深刻。由々しき事態だ。打つ手がない。
いや、ある。現ナマを……現ナマを手にして女子力を磨く。魔道具の調達。ウィッグ、エクステ……。ダツモウ。ツメ、コスメ。
しかし現ナマを掴むには覚悟が必要だ。
箱から出さずにサランラップを巻いてディスプレイされているフィギュアたち。俺嫁たち。
決して売る日を想定していた訳ではないんだ。違うんだ。本当に……。大切だからこそ……。
その想いが売価を上げる。なんという矛盾。尊い。
ーーどうやら、死を覚悟する必要があるらしい。
時間はない。次の月曜日で終わりかもしれないしそうじゃないかもしれない。
でも、万が一終わったら……。
クソッ。こんな日が来るなんてな。
ーーあやのちゃん……君を俺の唯一にして最後の俺嫁にする時が来たのかもな。
……ははっ。違うだろ!!
カシスちゃん……ヒメナちゃん……ジャスミン姉さん……。エリリン。
俺に力をくれ!! 本物と言う名の次のステージに行く力を‼︎
過去の俺嫁にさよならを告げるんだ!!
0
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説
転生悪役令嬢の前途多難な没落計画
一花八華
恋愛
斬首、幽閉、没落endの悪役令嬢に転生しましたわ。
私、ヴィクトリア・アクヤック。金髪ドリルの碧眼美少女ですの。
攻略対象とヒロインには、関わりませんわ。恋愛でも逆ハーでもお好きになさって?
私は、執事攻略に勤しみますわ!!
っといいつつもなんだかんだでガッツリ攻略対象とヒロインに囲まれ、持ち前の暴走と妄想と、斜め上を行き過ぎるネジ曲がった思考回路で突き進む猪突猛進型ドリル系主人公の(読者様からの)突っ込み待ち(ラブ)コメディです。
※全話に挿絵が入る予定です。作者絵が苦手な方は、ご注意ください。ファンアートいただけると、泣いて喜びます。掲載させて下さい。お願いします。
悪役令嬢に転生したのですが、フラグが見えるのでとりま折らせていただきます
水無瀬流那
恋愛
転生先は、未プレイの乙女ゲーの悪役令嬢だった。それもステータスによれば、死ぬ確率は100%というDEATHエンド確定令嬢らしい。
このままでは死んでしまう、と焦る私に与えられていたスキルは、『フラグ破壊レベル∞』…………?
使い方も詳細も何もわからないのですが、DEATHエンド回避を目指して、とりまフラグを折っていこうと思います!
※小説家になろうでも掲載しています
乙女ゲームの悪役令嬢は断罪回避したらイケメン半魔騎士に執着されました
白猫ケイ
恋愛
【本編完結】魔法学園を舞台に異世界から召喚された聖女がヒロイン王太子含む7人のイケメンルートを選べる人気のゲーム、ドキ☆ストの悪役令嬢の幼少期に転生したルイーズは、断罪回避のため5歳にして名前を変え家を出る決意をする。小さな孤児院で平和に暮らすある日、行き倒れの子供を拾い懐かれるが、断罪回避のためメインストーリー終了まで他国逃亡を決意。
「会いたかったーー……!」
一瞬何が起きたか理解が遅れる。新聞に載るような噂の騎士に抱きすくめられる様をみた、周囲の人がざわめく。
【イラストは自分で描いたイメージです。サクッと読める短めのお話です!ページ下部のいいね等お気軽にお願いします!執筆の励みになります!】
悪役令嬢なのに、完落ち攻略対象者から追いかけられる乙女ゲーム……っていうか、罰ゲーム!
待鳥園子
恋愛
とある乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わったレイラは、前世で幼馴染だったヒロインクロエと協力して、攻略条件が難し過ぎる騎士団長エンドを迎えることに成功した。
最難易度な隠しヒーローの攻略条件には、主要ヒーロー三人の好感度MAX状態であることも含まれていた。
そして、クリアした後でサポートキャラを使って、三人のヒーローの好感度を自分から悪役令嬢レイラに移したことを明かしたヒロインクロエ。
え。待ってよ! 乙女ゲームが終わったら好感度MAXの攻略対象者三人に私が追いかけられるなんて、そんなの全然聞いてないんだけどー!?
前世からちゃっかりした幼馴染に貧乏くじ引かされ続けている悪役令嬢が、好感度関係なく恋に落ちた系王子様と幸せになるはずの、逆ハーレムだけど逆ハーレムじゃないラブコメ。
※全十一話。一万五千字程度の短編です。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ
藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。
そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした!
どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!?
えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…?
死にたくない!けど乙女ゲームは見たい!
どうしよう!
◯閑話はちょいちょい挟みます
◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください!
◯11/20 名前の表記を少し変更
◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる