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四話
しおりを挟むとりあえずアイロンを温める。
ガス式ではなく充電式のようだ。気は利かせてくれたみたいだな。充電満タンだし。コンセントないし。
でもこれ、どう見ても中古。
日本語パッケージのこの化粧落とし。これも中古。
いや、中古と言うのはおかしいか。9割程使われた形跡がある。
使うけどさ。使うけどね?!
好意で、しかもタダで貰った物だけどさ、
釈然としないんだよ!! この気持ちわかる?!
だってあんたは神的な何かだろ?! 違ったか?!
使用済みの中古ってどうなってんだよ?!
心の中で叫んでみたが、天の声は届かず。
死ななきゃダメっぽい。もっと色々聞いておけばよかった。
生活感溢れ過ぎの自称魔道具。謎過ぎる……。
◇◆◇◆◇
か、可愛い。幼さこそあるが、可愛い‼︎
あひる口で綺麗な二重まぶた。〝わがまま〟と書いてありそうな顔立ち。
「あ、アヤノ!! いけてんじゃんおまえ!! 髪型はういてるけど!」
「すっぴんのほうがいいよ‼︎ 居るんだなぁ。すっぴん美人ってさ。今期の俺嫁候補に入れてやんよ!!」
…………。って俺じゃねーか‼︎
鏡越しに映る自分に興奮し、独り言を垂れ流してしまった。
そう、化粧を落としたんだ。
19歳くらいの性格がアレそうなアレから
16歳くらいの学校に一人は居そうなマスコット系幼JKになった。
しかし、清楚からは程遠い。あまりにも遠過ぎる。
まっ、いっか! 可愛いは正義!!
うー、レオ様にお姫様抱っこされたいぃぃ♡
クッ。また発作が……。やめろ。出てくるな俺。
でも、この気持ちのままなら、幸せに痛みなく死ねる。はぁ。レオ様きゅん♡
ーー今回も受け入れる事にしました。
◇◆◇◆◇
パンッパンッ
「来なさい! セバス・チャン!」
ササッ、スッ。
「ハッ。アヤノ様」
何処からともなくミニスカメイド服で現れる。
三回目だが、まだ慣れないなぁ。きつい。けど、今回も時間はない。
「これはマドーグアイローンよ。こうやって髪を挟んで使うの。おわかり?」
「は、はぁ」
「よろしい。では、わたくしの髪を真っ直ぐにしなさい!!」
「仰せのままに」
「熱いから気をつけるのよ」
セバスにプレートは熱い事など、諸注意を説明しアイロンを手渡した。プレートはよく見ると少し禿げてた。ーーまじでこれ、誰のアイロン?!
自慢じゃないが、俺は不器用だ。セバスにやってもらったほうが早いはず。
と、思ったんだけど……。
「あ、あぢぃぃーーうぉぉぉぉぉ」
いや、そういうお約束いらないから。
「早くしなさいよ。時間がないの! おわかり?」
「も、申し訳ございませんアヤノ様……。あ、あぢぃぃーー」
つ、つかえねぇー。ちったぁ、格好良いところ見せてくれよ。三回目だぜ。三回目‼︎
おまえの存在意義を見せる最後のチャンスかもしれないんだぜ?!
「あ、アヤノ様……指が……指が……」
「あー、もう。冷やして来なさいよ。このアヤノが許すわ! お行きなさい」
「感謝の極み。ご慈悲に、あぁ感謝を‼︎」
スッ。
まじであの爺さんはなんなん?!
何のために居るの?!
存在を示してくれよぉぉぉぉ!!
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