2 / 62
二話
しおりを挟む
スリスリ。むにむに。む……に……むにむに‼︎
切られた箇所が元に戻ってる。血に染まったはずのシーツも真っ白だ。
二回目って事でいいのか……。
ははっ。まるでゲームだな。セーブポイントからのReスタートか。一時間ループとでも言っておくか。はははっ。
って、此処ゲームの中じゃん!
よしっ。
「カスタムコマンド・オープン‼︎」
…………。あれ?
「ステータス表示‼︎」
…………。んん?
「スキル発動‼︎」
…………。んあ?
「俺のターン。ドロー‼︎」
…………。でしょうね。
何も表示されない。何も出てこない。
ゲームの中っぽいがゲームではない。
地に足つくこの感覚。まぎれもなくリアルだ。
ふかふかベッドの心地良さ。完璧にリアルだ。
そして多分、無能力。
か弱い普通の女の子。
む……に……むにむに……。
むにむにむにむに……むに。
──けしからん。
こりゃ、命乞いするしかないよ。はははっ。
あはははは。
◇
たったの一時間しかない。
化粧と髪型で人は変わるとTVで見た事がある。
幸いにもデブではない。痩せる必要は無いんだ!
たった一時間と思ったが、イメチェンするには十分な時間ではないか。
悪役と言えど辺境伯の令嬢様だ。この屋敷にはメイクアップアーティスト的な、なんかそう言った感じの人材、逸材が揃ってるだろ!
なんちゃらコーディネーターとかなんかそう言った感じの……アレだ。うんアレ。
俺はふかふかベッドに座ってるだけで良い。メイドやら執事に可愛くしてもらう。
うん簡単! いける気がしてきた!!
清楚系美女上等!!
死亡フラグ回避。破滅エンドすらも回避してやる!
◆◇
パンッパンッ。
「セバス~セバスは居るかしらぁ~?」
お上品に手を叩き、お上品にセバスを呼んでみた。
〝スッ〟
「お呼びでしょうか、アヤノ様」
何処からともなく現れ、ふかふかベッドの前に跪く。
そうか。ミニスカメイド服のままか。
本当に二回目なんだな。セバスの情けない服装が全てを物語る。なんともまぁ……。
……。すまん時間が無いんだ。今回は着替えさせてあげられない。許せ。
「あらあら、お早い登場だこと。さすがはセバスね!」
「勿体なきお言葉」
「髪のセットやお化粧をしたいの。さっそくで悪いけど専任の従者を呼んで来なさい」
「…………? いつもご自身でやられてるではありませんか」
ふーん。まじか。そうきたか。それなら、
「わたくし、清楚系美女になりたいの。詳しい者を連れて来なさい」
……………………。
「ですわ!!」
「あの、アヤノ様。せいそけいびじょとは?」
このジジイ、正気か? いや……まだだ!
「セバス、この屋敷の中で女子力が高そうな子を数人連れて来なさい」
……………………。
「ですわ!!」
「あの、アヤノ様。じょしりょくとは?」
く・そ・じ・じ・い…………。
落ち着け。……万能な執事だとしても爺さんだ。そして異世界。言葉を選ばなかった俺に落ち度がある。
──アヤノ・ゴクアークになったせいか、不思議な感情が流れ込んでくる。本来の俺は御老人を糞爺などとは思わない。
先ほどレオに耳打ちされた時、まんざらでもない気分になったのは恐らくコレと同じ原理だ。
男の俺が、野郎に耳打ちされて喜ぶなんてありえない。
はずなのに、思い出すと胸が……鼓動が……止まらない……きゅんっとなる。
きゅんきゅんっと!! レオ様きゅんっ♡
や、やめろーー!! 出てくるなーー!!
まさかこれは……〝もう一人の俺〟って奴か? おいおい嘘だろ。
もう一人の俺ってのは強くって格好良い闇の力的な何かが一般的だ。
ボーイズラブなんて絶対にダメだ。認めない。認めないぞ!!
──きゅんっ。きゅん♡ レオさーまきゅん♡
……………………。うげぇ。
しかし、今の俺は女。つまりは男にきゅんきゅんするのが道理。
…………正当化しようとするな!
勘弁してくれよ、まじで。
きゅん。うげぇ。きゅん。うげぇ。きゅんきゅん。うげうげぇ……。
──ハッ、悩んでる時間はない!
「セバス! おしとやかで美しいメイドを連れて来るのよ!」
「ハッ、かしこまりました」
〝スッ〟
セバスはくるりと回って一瞬で目の前から居なくなった。華麗にひらりと舞うミニスカの内側は見えそうで見えなかった。
ミニスカの着こなし方を熟知している。
どれだけの時をその姿で過ごしたのだろうか。考えると涙が出てきそうだ。
「はぁーーーーっ」
ふかふかのベッドの上で大の字になって上を見上げた。
一時間でイメチェンかぁ。
専任のコーディネーターもメイクアップアーティストも居ない。キツイなぁ。
この世界のメイクってどうなってるんだ?
この縦巻ロールはどういう仕組み?
コテは無いだろうし。と、なると……。
どうやって真っ直ぐにするの?
考えれば考えるほど不安になる。
今はただ、セバスを待つ事しかできない。
◇◆
どれくらい時間が経ったのだろうか。
ただでさえ時間が無いと言うのに、セバスはまだ戻って来ない。
トントンッ!
やっと来た!! セバスだな!!
「アヤノ様、至急お伝えしたい事が」
「セバスね。お入りなさい!」
ガチャンッ。
あれ? セバスだけ?
おしとやかな美しいメイドは? 連れて来なかったの?
なにしに戻って来たんだよ!
おいいーーセーバースぅぅ!!
「勇者が乗り込んで来ました。御覚悟を」
…………………?
おまえ今まで何してたの?
待てよ。待て待て。もう終わり?
嘘だろうが!!!!
──どうやら、また……死んでしまうみたいです。
切られた箇所が元に戻ってる。血に染まったはずのシーツも真っ白だ。
二回目って事でいいのか……。
ははっ。まるでゲームだな。セーブポイントからのReスタートか。一時間ループとでも言っておくか。はははっ。
って、此処ゲームの中じゃん!
よしっ。
「カスタムコマンド・オープン‼︎」
…………。あれ?
「ステータス表示‼︎」
…………。んん?
「スキル発動‼︎」
…………。んあ?
「俺のターン。ドロー‼︎」
…………。でしょうね。
何も表示されない。何も出てこない。
ゲームの中っぽいがゲームではない。
地に足つくこの感覚。まぎれもなくリアルだ。
ふかふかベッドの心地良さ。完璧にリアルだ。
そして多分、無能力。
か弱い普通の女の子。
む……に……むにむに……。
むにむにむにむに……むに。
──けしからん。
こりゃ、命乞いするしかないよ。はははっ。
あはははは。
◇
たったの一時間しかない。
化粧と髪型で人は変わるとTVで見た事がある。
幸いにもデブではない。痩せる必要は無いんだ!
たった一時間と思ったが、イメチェンするには十分な時間ではないか。
悪役と言えど辺境伯の令嬢様だ。この屋敷にはメイクアップアーティスト的な、なんかそう言った感じの人材、逸材が揃ってるだろ!
なんちゃらコーディネーターとかなんかそう言った感じの……アレだ。うんアレ。
俺はふかふかベッドに座ってるだけで良い。メイドやら執事に可愛くしてもらう。
うん簡単! いける気がしてきた!!
清楚系美女上等!!
死亡フラグ回避。破滅エンドすらも回避してやる!
◆◇
パンッパンッ。
「セバス~セバスは居るかしらぁ~?」
お上品に手を叩き、お上品にセバスを呼んでみた。
〝スッ〟
「お呼びでしょうか、アヤノ様」
何処からともなく現れ、ふかふかベッドの前に跪く。
そうか。ミニスカメイド服のままか。
本当に二回目なんだな。セバスの情けない服装が全てを物語る。なんともまぁ……。
……。すまん時間が無いんだ。今回は着替えさせてあげられない。許せ。
「あらあら、お早い登場だこと。さすがはセバスね!」
「勿体なきお言葉」
「髪のセットやお化粧をしたいの。さっそくで悪いけど専任の従者を呼んで来なさい」
「…………? いつもご自身でやられてるではありませんか」
ふーん。まじか。そうきたか。それなら、
「わたくし、清楚系美女になりたいの。詳しい者を連れて来なさい」
……………………。
「ですわ!!」
「あの、アヤノ様。せいそけいびじょとは?」
このジジイ、正気か? いや……まだだ!
「セバス、この屋敷の中で女子力が高そうな子を数人連れて来なさい」
……………………。
「ですわ!!」
「あの、アヤノ様。じょしりょくとは?」
く・そ・じ・じ・い…………。
落ち着け。……万能な執事だとしても爺さんだ。そして異世界。言葉を選ばなかった俺に落ち度がある。
──アヤノ・ゴクアークになったせいか、不思議な感情が流れ込んでくる。本来の俺は御老人を糞爺などとは思わない。
先ほどレオに耳打ちされた時、まんざらでもない気分になったのは恐らくコレと同じ原理だ。
男の俺が、野郎に耳打ちされて喜ぶなんてありえない。
はずなのに、思い出すと胸が……鼓動が……止まらない……きゅんっとなる。
きゅんきゅんっと!! レオ様きゅんっ♡
や、やめろーー!! 出てくるなーー!!
まさかこれは……〝もう一人の俺〟って奴か? おいおい嘘だろ。
もう一人の俺ってのは強くって格好良い闇の力的な何かが一般的だ。
ボーイズラブなんて絶対にダメだ。認めない。認めないぞ!!
──きゅんっ。きゅん♡ レオさーまきゅん♡
……………………。うげぇ。
しかし、今の俺は女。つまりは男にきゅんきゅんするのが道理。
…………正当化しようとするな!
勘弁してくれよ、まじで。
きゅん。うげぇ。きゅん。うげぇ。きゅんきゅん。うげうげぇ……。
──ハッ、悩んでる時間はない!
「セバス! おしとやかで美しいメイドを連れて来るのよ!」
「ハッ、かしこまりました」
〝スッ〟
セバスはくるりと回って一瞬で目の前から居なくなった。華麗にひらりと舞うミニスカの内側は見えそうで見えなかった。
ミニスカの着こなし方を熟知している。
どれだけの時をその姿で過ごしたのだろうか。考えると涙が出てきそうだ。
「はぁーーーーっ」
ふかふかのベッドの上で大の字になって上を見上げた。
一時間でイメチェンかぁ。
専任のコーディネーターもメイクアップアーティストも居ない。キツイなぁ。
この世界のメイクってどうなってるんだ?
この縦巻ロールはどういう仕組み?
コテは無いだろうし。と、なると……。
どうやって真っ直ぐにするの?
考えれば考えるほど不安になる。
今はただ、セバスを待つ事しかできない。
◇◆
どれくらい時間が経ったのだろうか。
ただでさえ時間が無いと言うのに、セバスはまだ戻って来ない。
トントンッ!
やっと来た!! セバスだな!!
「アヤノ様、至急お伝えしたい事が」
「セバスね。お入りなさい!」
ガチャンッ。
あれ? セバスだけ?
おしとやかな美しいメイドは? 連れて来なかったの?
なにしに戻って来たんだよ!
おいいーーセーバースぅぅ!!
「勇者が乗り込んで来ました。御覚悟を」
…………………?
おまえ今まで何してたの?
待てよ。待て待て。もう終わり?
嘘だろうが!!!!
──どうやら、また……死んでしまうみたいです。
0
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説
転生悪役令嬢の前途多難な没落計画
一花八華
恋愛
斬首、幽閉、没落endの悪役令嬢に転生しましたわ。
私、ヴィクトリア・アクヤック。金髪ドリルの碧眼美少女ですの。
攻略対象とヒロインには、関わりませんわ。恋愛でも逆ハーでもお好きになさって?
私は、執事攻略に勤しみますわ!!
っといいつつもなんだかんだでガッツリ攻略対象とヒロインに囲まれ、持ち前の暴走と妄想と、斜め上を行き過ぎるネジ曲がった思考回路で突き進む猪突猛進型ドリル系主人公の(読者様からの)突っ込み待ち(ラブ)コメディです。
※全話に挿絵が入る予定です。作者絵が苦手な方は、ご注意ください。ファンアートいただけると、泣いて喜びます。掲載させて下さい。お願いします。
悪役令嬢に転生したのですが、フラグが見えるのでとりま折らせていただきます
水無瀬流那
恋愛
転生先は、未プレイの乙女ゲーの悪役令嬢だった。それもステータスによれば、死ぬ確率は100%というDEATHエンド確定令嬢らしい。
このままでは死んでしまう、と焦る私に与えられていたスキルは、『フラグ破壊レベル∞』…………?
使い方も詳細も何もわからないのですが、DEATHエンド回避を目指して、とりまフラグを折っていこうと思います!
※小説家になろうでも掲載しています
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
完全無欠なライバル令嬢に転生できたので男を手玉に取りたいと思います
藍原美音
恋愛
ルリアーノ・アルランデはある日、自分が前世でプレイしていた乙女ゲームの世界に転生していると気付いた。しかしルリアーノはヒロインではなくライバル令嬢だ。ストーリーがたとえハッピーエンドになろうがバッドエンドになろうがルリアーノは断罪エンドを迎えることになっている。
「まあ、そんなことはどうでもいいわ」
しかし普通だったら断罪エンドを回避しようと奮闘するところだが、退屈だった人生に辟易していたルリアーノはとある面白いことを思い付く。
「折角絶世の美女に転生できたことだし、思いっきり楽しんでもいいわよね? とりあえず攻略対象達でも手玉に取ってみようかしら」
そして最後は華麗に散ってみせる──と思っていたルリアーノだが、いつまで経っても断罪される気配がない。
それどころか段々攻略対象達の愛がエスカレートしていって──。
「待って、ここまでは望んでない!!」
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
Wヒロインの乙女ゲームの元ライバルキャラに転生したけれど、ヤンデレにタゲられました。
舘野寧依
恋愛
ヤンデレさんにストーカーされていた女子高生の月穂はある日トラックにひかれてしまう。
そんな前世の記憶を思い出したのは、十七歳、女神選定試験が開始されるまさにその時だった。
そこでは月穂は大貴族のお嬢様、クリスティアナ・ド・セレスティアと呼ばれていた。
それは月穂がよくプレイしていた乙女ゲーのライバルキャラ(デフォルト)の名だった。
なぜか魔術師様との親密度と愛情度がグラフで視界に現れるし、どうやらここは『女神育成~魔術師様とご一緒に~』の世界らしい。
まあそれはいいとして、最悪なことにあのヤンデレさんが一緒に転生していて告白されました。
そしてまた、新たに別のヤンデレさんが誕生して見事にタゲられてしまい……。
そんな過剰な愛はいらないので、お願いですから普通に恋愛させてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる