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第一章

14話 魔術決闘Ⅱ-1 【1/2】

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 「またせたなー、ラーミアル!」

 ラーミアルのターコイズブルーの瞳には、ご機嫌なカミルが映っていた。
 カミルは正門で出会った時と違い、見た目が極端に変化している。軽装すぎるため不安にさせられるほどだ。腰に巻き付けた長剣だけは、肌身離さず引き連れている。

 「カミルさん、このような機会をいただけてありがとうございます」
 「まーなっ! これもあいつとの約束だしな!」

 ラーミアルの眉がピクッと微動する。カミルは相変わらず、笑みを浮かべたままだ。彼の背後には、同行するフォエ二等騎士の姿があった。
 カミルは待機位置の円の中で足を止める。フォエは二人の中間地点の引かれた白線の上へと足を運んだ。

 「おっ、親戚の嬢ちゃんとー、なんだあの美人のねーちゃんは!?」

 客席にいる二人の人物に視線を送るなり、表情を大きく変えて驚愕する。ラーミアルも横目で捉える。
 シュクとエルリダは、こちらを食い入るように見ている。

 「あの人はエルリダ=アヴァ・カレラさんです」
 「ほー、あの美女がねー」

 カミルは髭をさすりながら、「なるほどねー」と納得する。ラーミアルは二人を確認したことで、顔を塞いでいた氷壁が少し溶けた。打刀を掴む力も心なしか軽くなる。

 「それじゃー、はじめっかな!」
 「はいっ!」

 闘技場には、天を遮るモノがなく神々しい穏やかな光が入り込む。

 暫し沈黙が続く。
 それは、ラーミアルにとって感覚が乱れたように終わらない時間に感じた。構えているだけだが、心臓は激しく脈打ち汗が流れる。

 フォエが閑静な空間を断つように、腕を掲げた。

 「これより、カミル一等騎士長とラーミアル=ディル・ロッタの戦闘を始めます!」

 甲高い辺りに反響する声に気を引き締められるように、ラーミアルは深く頭を下げる。同じくして、カミルも礼儀正しいお辞儀する。二人は身体を起こすと、お互いに目が合った。
 
 僅かな準備時間。

 ラーミアルは戦闘態勢に入る。抜刀し、片手にそれぞれ鞘と刀を握りしめる。
 一方のカミルは長剣の太いグリップを力強く掴んだ。そこから、一般男性が二人掛かりで持ち上げることは不可能であろう刀を軽々と持ち上げてみせた。
 眠りから覚めた剣は、天から注がれる施しに当たり銀色の光輝を放つ。眺めているだけで、戦闘への活力を削がれる。
 欠けることを許さない重圧のある鉄塊。剣の幅はラーミアルの顔よりも確実に大きい。

 カミルの顔からは――色が消えた。
 冷徹であり欲がない、戦闘への感情がまるで見えない。笑顔を撒き散らしていた人物と同一か、疑わずにはいられない。
 ラーミアルの身体は一瞬にして委縮した。呼吸すら容認さない、恐怖。感じたことのない耐え忍ばなくてはいけない、引力。

 [立ってるだけで精一杯とは‥‥‥]

 ラーミアルは全神経を集中させて、戦意を保たせる。
 フォエも腕を維持することで精一杯のように見える。顔にはラーミアル以上の大粒の汗をかいている。
 
 ラーミアル、カミルの身体に動きがなくなった。そのことを確認を終えたフォエは、震える腕を大きく降下させた。


 「ハジメ――!!」
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