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第一章
09話 女子寮2 【1/2】
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女子寮に併設された、24時間解放の大浴場がある。
湯船の広さは、四方20メートルと一人で入るには寂しさを感じる。
どことなく、日本の銭湯を思わせる。外装は伝統的な石造りのようなデザインだ。シャワーなど便利なモノはない。しかし、浴場の横側には常時、生温いお湯が流れ落ちる簡易的な滝が流れ落ちていた。身体を洗うときは、その周辺が混み合いそうだ。
身体を流すために用いられるのが、木の桶。釘や接着剤を使用せずに、木の組み合わせのみで作られている。木目を見ると、不思議と気分が落ち着く。
シュクは一人。適温の湯気の立つお風呂に浸かっている。
誰もいない空間で遊ぶこともなく、のんびりと今を楽しんでいた。
シュクは脊髄反射の速度でラーミアルの誘いを断った。
[身体が女性でも、さすがに立場を弁えないとな]
自制心が働いたことによる解である。その後に他の寮生が入浴しない時間帯を教えてもらい、現在に至る。
「一人だと心置き無く過ごせるな。中身が30歳の男と風呂に入らせるのは申し訳ないからな」
ボソッと呟く。首を上げ、天井を見ながら一日を振り返る。
数分が経過した。
すると、風呂場と脱衣場を行き来する扉が開いた。滝のお湯が弾ける音と、湯気により人の出入りを確認するのは難しい。
扉がそっと閉まり、湯気の向こう側で人影が動いた。その人影は、浴場の傍らに行くと、流れ落ちる湯で身体を丁寧に流している。
シュクは考え事をしていることもあり、完全に見落としていた。
濡れた足裏で石畳を歩く足音が、徐々に近づいてきた。
そして、その影は静かに立ち止まる。
「誰かいるのかしら?」
落ち着いた上品さのある声色が響いた。
お湯の温度は一定だが――シュクの体温は一瞬にして下がった。間髪入れずに、反転し背を向けた。
[いつの間に入ってきていたんだ。って、そんなことはどうでも良い。マズいことになったな]
壁と向き合い、話しかけないで欲しいという気持ちを背中で語る。
ポチャッ、音を立てないように湯に入った声の主は更に質問をする。
「あなたは誰かしら?」
水面の波紋が大きくなるのがシュクの目に入る。
[これは事案だ、マズい]
冷静無頓着なシュクが焦りで、心臓が高鳴る。
「なぜ答えてくれないの?」
[答えられません!]
と、強く供述する。シュクの背中には異常な量の、水滴が流れている。
すると、数秒の無音が空間を包んだ。波紋が消えたことから、シュクは諦めてくれと望みをかける。
ツンッ――必死の抵抗をする柔らかい背中に何かが当たる。全神経を研ぎ澄ませてた反動か、身体は予想以上に敏感になっていた。
「ヒャイッ!」
可愛らしい甲高い声が響いた。シュクは勢いよく立ち上がり、辺りに湯が飛び散る。脈打つ速度が上昇する。思わず出てしまった声に、手で口を押さえる。恥じらいよりも擽ったい感触が辛いのだ。
我に返ったシュクは、無意識に立ち尽くしていることに気がつく。後ろにいるであろう声の主から遠ざかるため、壁に向かい数歩前進した。
[なんなんだ?]
謎の行動に、思考が鈍くなる。シュクが遠ざかったタイミングで、言葉が飛んでくる。
「なぜ逃げるの?」
シュクは返事をするかの葛藤する。
[返事をしない方が、穏便に済む。ここで会話をすることはリスクになりかねない]
そう、自分に言い聞かせる。
無視することに決めたシュクは、静かに湯船に身体を沈めた。
[さすがに、ここまで無視すれば諦めてくれるだろう。そうすれば安全にお風呂から退散できる]
先ほどの擽ったい感覚も治まり、シュクは落ち着きを見せる。
息を吐き、肩の力が抜ける。その瞬間に発生した微かな水面の振動。それに気づいた時には遅かった。
ツンッ――シュクの背中には、ほんの少し前の感触が伝わった。
「ヒャイッ!」
不覚にも、これまた同じ反応をしてしまった。シュクは豪快に立ち上がり、少女の声を出す。
[はっ? またか]
不満よりも、怒りに近い感情が沸々と湧き上がる。シュクは自制心を働かせ、口を開けないように必死に堪える。
ツン、ツンッ――3度目は華奢な太ももが餌食になった。
「なんでヒュッか!」
擽ったい感触のせいで、活舌が砕けてしまった。シュクは小さい体を後方に回転させ、後ろにいるであろう犯人に喝を入れようとした。
――暗い紫色の髪の毛は長く、優雅さと気品な感じを醸し出している。顔立ちはとても美しく、大人の美女と表現するに相応しい。目の奥には、深い紫色が覗かせる。才色兼備さが溢れ出ているのが可視化できるほどだ。
水面から浮き出る上半身は、赤ん坊のような滑らかな肌質をしている。ボディーラインにも無駄がなく、研ぎ澄まされている。
麗しい一番の曲線美は胸にあった。国宝級の宝石よりも輝きは強く魅力的である。
シュクは目の前にいる美女を見た瞬間、目にも止まらぬ速さで身体を半回転させた。決して美しい人間に緊張したのではない。単純に大人の女性の裸体に欠片も抵抗がないからだ。
「そんなに恥ずかしがらなくても良いんじゃない? 取って食うことはしないわ」
美女から少し呆れた口調で話しかけられる。
[恥ずかしいんじゃない。罪を犯したくないだけだ]と心の中で力強く叫ぶ。
同じことの繰り返しを回避するため、シュクは直ぐに口を開いた。
「私は恥ずかしがり屋なので対面で話すのは控えてほしいです」
「そうなのね、わかったわ。ところで、普段この時間帯は私しか使用する人がいないの。だから、あなたはここの寮生ではないと判断してしまうのだけれど、どうかしら?」
「正解ですよ。この寮には今日始めて来たので」
「そう」と美女は納得したように返事し、話を途切れさせずに続ける。
「あなたはどのような経緯で今日来られたの?」
「そうですね・・・・・・」
[尋問されているみたいだ]とシュクは思いを心に留める。一拍を置き、言葉をゆっくりと紡ぐ。
「ラーミアルさんとは親戚で・・・・・・、えー、私が寮に泊まりたいとお願いしたら、了承をいただき休日に宿泊することに決まった。という感じです」
シュクの後方から、「ラーミアル」と名前を噛み締める声が聞こえてきた。
数秒が空いただろうか。美女の反応を待つシュクは、入浴を終え部屋に戻りたい気持ちが大きくなってくる。
シュクは立ち上がると、背後にいる美女の身体を見ないよう横歩きをする。避けて進み、ようやく石畳の上に足を置けると思った瞬間だった。シュクの背中に美女の声があたる。
「わたくしはディル・ロッタさんのことが嫌いよ!」
[えーーーー!? いきなり初対面の人間に気まづくなる発言するか! 女性同士のコミュニケーションは複雑と聞くが、どう返事をすればいいか困る]
シュクの額には暑さとは違う要因の汗が垂れる。
[こういう時、女性ならどう返事をする。ギブミーアイディアー!]
長時間の入浴の代償か、シュクのテンションが高い。いわゆる、のぼせて頭の回転に欠落があるみたいだ。シュクの視界は歪み、顔をリンゴのようにほてらせている。
すると――美女は水しぶきを上げ、脚を立たせる。
「ディル・ロッタさんのことは嫌い。あの方は、強くなることしか考えていない。笑顔も見せたことがない。人生を何かに縛られているような。わたくしはただ‥‥‥」
穏やかな口調の中には、混ざり合った寂しさがあった。美女は腰まで流れる紫色の髪の毛を一塊にし、付着する水気を切る。
「だから、あなたにはディル・ロッタさんにもっと――」
シュクはもう限界であった。背についた縄を掴んだ悪魔が、強引に湯船に潜む引きずり込むようにシュクは倒れる。慣れない長時間の入浴は、身体に異常をきたしていたのだ。
意識が朦朧とする中、シュクは後頭部に最高級の安眠を期待できる枕に埋もれた。
「大丈夫ですの?」
美女は秀逸の品質をした胸の中に少女が崩れ落ちてきた。応答もない少女は、全身が茹でたトマトを思わせる赤味で甘々としている。
「大丈夫ですの!?」
美女は意識のないシュクを胸に、焦りを声にした。
湯船の広さは、四方20メートルと一人で入るには寂しさを感じる。
どことなく、日本の銭湯を思わせる。外装は伝統的な石造りのようなデザインだ。シャワーなど便利なモノはない。しかし、浴場の横側には常時、生温いお湯が流れ落ちる簡易的な滝が流れ落ちていた。身体を洗うときは、その周辺が混み合いそうだ。
身体を流すために用いられるのが、木の桶。釘や接着剤を使用せずに、木の組み合わせのみで作られている。木目を見ると、不思議と気分が落ち着く。
シュクは一人。適温の湯気の立つお風呂に浸かっている。
誰もいない空間で遊ぶこともなく、のんびりと今を楽しんでいた。
シュクは脊髄反射の速度でラーミアルの誘いを断った。
[身体が女性でも、さすがに立場を弁えないとな]
自制心が働いたことによる解である。その後に他の寮生が入浴しない時間帯を教えてもらい、現在に至る。
「一人だと心置き無く過ごせるな。中身が30歳の男と風呂に入らせるのは申し訳ないからな」
ボソッと呟く。首を上げ、天井を見ながら一日を振り返る。
数分が経過した。
すると、風呂場と脱衣場を行き来する扉が開いた。滝のお湯が弾ける音と、湯気により人の出入りを確認するのは難しい。
扉がそっと閉まり、湯気の向こう側で人影が動いた。その人影は、浴場の傍らに行くと、流れ落ちる湯で身体を丁寧に流している。
シュクは考え事をしていることもあり、完全に見落としていた。
濡れた足裏で石畳を歩く足音が、徐々に近づいてきた。
そして、その影は静かに立ち止まる。
「誰かいるのかしら?」
落ち着いた上品さのある声色が響いた。
お湯の温度は一定だが――シュクの体温は一瞬にして下がった。間髪入れずに、反転し背を向けた。
[いつの間に入ってきていたんだ。って、そんなことはどうでも良い。マズいことになったな]
壁と向き合い、話しかけないで欲しいという気持ちを背中で語る。
ポチャッ、音を立てないように湯に入った声の主は更に質問をする。
「あなたは誰かしら?」
水面の波紋が大きくなるのがシュクの目に入る。
[これは事案だ、マズい]
冷静無頓着なシュクが焦りで、心臓が高鳴る。
「なぜ答えてくれないの?」
[答えられません!]
と、強く供述する。シュクの背中には異常な量の、水滴が流れている。
すると、数秒の無音が空間を包んだ。波紋が消えたことから、シュクは諦めてくれと望みをかける。
ツンッ――必死の抵抗をする柔らかい背中に何かが当たる。全神経を研ぎ澄ませてた反動か、身体は予想以上に敏感になっていた。
「ヒャイッ!」
可愛らしい甲高い声が響いた。シュクは勢いよく立ち上がり、辺りに湯が飛び散る。脈打つ速度が上昇する。思わず出てしまった声に、手で口を押さえる。恥じらいよりも擽ったい感触が辛いのだ。
我に返ったシュクは、無意識に立ち尽くしていることに気がつく。後ろにいるであろう声の主から遠ざかるため、壁に向かい数歩前進した。
[なんなんだ?]
謎の行動に、思考が鈍くなる。シュクが遠ざかったタイミングで、言葉が飛んでくる。
「なぜ逃げるの?」
シュクは返事をするかの葛藤する。
[返事をしない方が、穏便に済む。ここで会話をすることはリスクになりかねない]
そう、自分に言い聞かせる。
無視することに決めたシュクは、静かに湯船に身体を沈めた。
[さすがに、ここまで無視すれば諦めてくれるだろう。そうすれば安全にお風呂から退散できる]
先ほどの擽ったい感覚も治まり、シュクは落ち着きを見せる。
息を吐き、肩の力が抜ける。その瞬間に発生した微かな水面の振動。それに気づいた時には遅かった。
ツンッ――シュクの背中には、ほんの少し前の感触が伝わった。
「ヒャイッ!」
不覚にも、これまた同じ反応をしてしまった。シュクは豪快に立ち上がり、少女の声を出す。
[はっ? またか]
不満よりも、怒りに近い感情が沸々と湧き上がる。シュクは自制心を働かせ、口を開けないように必死に堪える。
ツン、ツンッ――3度目は華奢な太ももが餌食になった。
「なんでヒュッか!」
擽ったい感触のせいで、活舌が砕けてしまった。シュクは小さい体を後方に回転させ、後ろにいるであろう犯人に喝を入れようとした。
――暗い紫色の髪の毛は長く、優雅さと気品な感じを醸し出している。顔立ちはとても美しく、大人の美女と表現するに相応しい。目の奥には、深い紫色が覗かせる。才色兼備さが溢れ出ているのが可視化できるほどだ。
水面から浮き出る上半身は、赤ん坊のような滑らかな肌質をしている。ボディーラインにも無駄がなく、研ぎ澄まされている。
麗しい一番の曲線美は胸にあった。国宝級の宝石よりも輝きは強く魅力的である。
シュクは目の前にいる美女を見た瞬間、目にも止まらぬ速さで身体を半回転させた。決して美しい人間に緊張したのではない。単純に大人の女性の裸体に欠片も抵抗がないからだ。
「そんなに恥ずかしがらなくても良いんじゃない? 取って食うことはしないわ」
美女から少し呆れた口調で話しかけられる。
[恥ずかしいんじゃない。罪を犯したくないだけだ]と心の中で力強く叫ぶ。
同じことの繰り返しを回避するため、シュクは直ぐに口を開いた。
「私は恥ずかしがり屋なので対面で話すのは控えてほしいです」
「そうなのね、わかったわ。ところで、普段この時間帯は私しか使用する人がいないの。だから、あなたはここの寮生ではないと判断してしまうのだけれど、どうかしら?」
「正解ですよ。この寮には今日始めて来たので」
「そう」と美女は納得したように返事し、話を途切れさせずに続ける。
「あなたはどのような経緯で今日来られたの?」
「そうですね・・・・・・」
[尋問されているみたいだ]とシュクは思いを心に留める。一拍を置き、言葉をゆっくりと紡ぐ。
「ラーミアルさんとは親戚で・・・・・・、えー、私が寮に泊まりたいとお願いしたら、了承をいただき休日に宿泊することに決まった。という感じです」
シュクの後方から、「ラーミアル」と名前を噛み締める声が聞こえてきた。
数秒が空いただろうか。美女の反応を待つシュクは、入浴を終え部屋に戻りたい気持ちが大きくなってくる。
シュクは立ち上がると、背後にいる美女の身体を見ないよう横歩きをする。避けて進み、ようやく石畳の上に足を置けると思った瞬間だった。シュクの背中に美女の声があたる。
「わたくしはディル・ロッタさんのことが嫌いよ!」
[えーーーー!? いきなり初対面の人間に気まづくなる発言するか! 女性同士のコミュニケーションは複雑と聞くが、どう返事をすればいいか困る]
シュクの額には暑さとは違う要因の汗が垂れる。
[こういう時、女性ならどう返事をする。ギブミーアイディアー!]
長時間の入浴の代償か、シュクのテンションが高い。いわゆる、のぼせて頭の回転に欠落があるみたいだ。シュクの視界は歪み、顔をリンゴのようにほてらせている。
すると――美女は水しぶきを上げ、脚を立たせる。
「ディル・ロッタさんのことは嫌い。あの方は、強くなることしか考えていない。笑顔も見せたことがない。人生を何かに縛られているような。わたくしはただ‥‥‥」
穏やかな口調の中には、混ざり合った寂しさがあった。美女は腰まで流れる紫色の髪の毛を一塊にし、付着する水気を切る。
「だから、あなたにはディル・ロッタさんにもっと――」
シュクはもう限界であった。背についた縄を掴んだ悪魔が、強引に湯船に潜む引きずり込むようにシュクは倒れる。慣れない長時間の入浴は、身体に異常をきたしていたのだ。
意識が朦朧とする中、シュクは後頭部に最高級の安眠を期待できる枕に埋もれた。
「大丈夫ですの?」
美女は秀逸の品質をした胸の中に少女が崩れ落ちてきた。応答もない少女は、全身が茹でたトマトを思わせる赤味で甘々としている。
「大丈夫ですの!?」
美女は意識のないシュクを胸に、焦りを声にした。
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