16 / 30
第一章
08話 女子寮1 【1/2】
しおりを挟む
橙色と茜色の波が奏で合う、天の海。
シュクの目には繊細に模様を描いた幻想すぎる絵画のごとく、映っていた。言葉を失いながら、立ち尽くし、空を鑑賞している。
現在、シュクは魔術学園内にある女子寮の入口付近で待機していた。
寮から出入りする生徒からは、
「何あの子、かわいいー」
「誰かの妹かしら? 私もあの子みたいな妹欲しい」
と言った女子生徒の声があった。
シュクは目の前の光景に集中し、周囲の音が入っていないが。そして、目を瞑ると黙々と思案し始めた。
[今日の情報収集は、こんなところか。結局、夢とも現実とも判断する材料が見つからなかったな。明日も引き続き調査するか。このままこの世界にいたら、研究が疎かになってしまうな。後で、紙とペンをラーミアルから借りてアイディアを書き留めるとしよう。しかし、今日は泊まる場所もないし、野宿でもするか。研究生活でどこでも寝れるスキルは収得したしな]
置物のこけしのように、じっと固まっている。
シュクはこの場で数分間、黙想していると、どこからともなく話しかけられた。
「‥‥‥おーい、おーい、シュク」
シュクの傍らから、澄んだ穏やかな声がした。シュクは自然と目蓋を開き、声の元へ顔を向ける。
感情を安らがせてくれる、強く明るい青の瞳。淡くしっかりとした黄色の髪の毛。鮮明で、もちもちと弾力ある肌。そして、嗅覚に入り込む、心を平常にしてくれる天然の柑橘系の匂い。
「ラーミアル」
と、自然に言葉が出た。シュクの純粋な黒い瞳に映っていたのは、絶世の美少女だった。
「そうですよ。シュクはたまに声が届かなくなる時がありますね」
「そうですか?」
ラーミアルは笑みと困惑が混ざり合った顔で、シュクを見つめている。
「寮母さんから許可が得ましたよ。私の親戚で、休暇中に訪ねてきた、と。宿泊の許可も取れました」
「なるほど。‥‥‥宿泊?」
シュクは、首を傾げる。
「はい。他に泊まる場所がありましたか?」
「いやっ。今日は、野宿でもしようかと」
「それなら丁度、良かったです。私の部屋でよければ使ってください」
ラーミアルは、安堵の表情になった。
「私は別に、野宿で問題ないです」
「問題大有りですよ!」
シュクの言葉に、真剣な相好に変わり、顔を接近させる。世の男性なら心臓の高鳴りが抑えきれないほどに、顔が近い。
「野宿で問題ないで」
「お・お・あ・り・です」
ラーミアルの気迫にシュクは頷き、提案を呑んだ。
「はいっ! わかれば、よろしいです!」
にっこりと、心を打ち抜く破壊力のある笑顔。ラーミアルはわかりやすい嬉しさを表情に出した。
「それなら、行きましょう。シュク」
話が終わると、ラーミアルはシュクの手を掴み、誘導を始めた。
女子寮は4階建て、35部屋。同様の建物が5棟、等間隔に並んでいる。その中でラーミアルの住む寮は、3棟目にあたる。外観は清潔感のある石と木の作りになっている。寮の一階は、洗面所、浴場があり共有スペースとして使用するようだ。1階に5部屋、2階から4階の各階は、10部屋を完備している。食堂は寮の外を出て、目と鼻の先にある。
寮内の床は木造で、フローリングのようだ。丁寧に磨かれ、ツヤを越え、鏡を思わせるほど輝きが強い。各階の廊下は、徒競走ができる長い直線になっている。
シュクとラーミアルは階段を上り、廊下を進んでいた。建物の端側辺りで、ラーミアルは足を止めた。“209”と読む、特有の言語で扉の真ん中に、白文字で表記されている。
「ここが、私の部屋です」
ラーミアルは腰に括り付けている袋から、灰色の金属製のカギを取り出した。慣れた手つきで、扉を解錠する。
ドアノブを回し、開くと――女性らしいと言われると疑問を抱く部屋が現れた。
8畳くらいの広さの空間には、木造のシングルベッドと天井の高さまである本棚がある。本棚には、書籍がぎっしり詰められている。本棚の一部には、小物や写真立てのようなモノが飾られている。本棚の隣には、机と椅子。他にあるのは、衣類や日用品を収納しているのであろう、木造の箪笥のような置物だけだ。
女の子らしさを感じさせない、素朴な部屋だ。
「地味な部屋ですね」
「そうですね。この学園には、強くなるためだけに在籍しているので」
ラーミアルは真面目な口調で答えた。そして、部屋に入ると部屋の角に置かれた箪笥へ移動すると、何かを探すように手を入れていた。
ガサゴソとしているラーミアルをシュクは眺めている。
「シュク、これでいいですか?」
ラーミアルが取り出したのは、薄っすらと着色された緑色のドレスだった。生命力あふれる草原を思わせる美しい緑色を、極限まで淡くした色だ。裾には可愛らしい、フリフリがつついている。ラーミアルの今の服装とは、正反対の少女らしい服だ。
「後、あるとしたらこの服かな」
もう一着は――深い真っ黒の、同じくドレスだ。このドレスは何も飾りがない、質素な仕上がりである。機能性が高く、激しく動いても問題なさそうだ。
「それは?」
「シュクが着る服ですよ。そのままではいけないですから」
「ちなみに、それ以外の服は?」
「この2着だけしかなかったです」
シュクは選択肢がドレスしかない。そのことに、脳内で苦悩し、言葉に詰まる。
「えーと‥‥‥」
「気に入りませんでしたか? そうでしたら、後で服を買いに行きましょう」
ラーミアルは、シュクの悩んでいる様子を見て、代替案を提案した。出したドレスを元あった形に畳むと、取り出した場所に納めようとしている。
[これ以上、ラーミアルに負担をかけるのは悪い。ここは男として腹をくくるか。今は男じゃないが]
と、心で何かを決断する。
「ラーミアル、その黒い方の服でもいいかな?」
「もちろんです!」
ラーミアルは意外な返答に、ついつい声が大きくなった。緑色のドレスは収納し、漆黒のドレスを手に、シュクへ持ち寄る。
そして、ラーミアルはシュクにドレスを受け取らせる。さらに、薬屋の途中に何件か立ち寄って購入物の袋も渡した。
「シュク、これも使ってください。着替えるまで、外にいますか?」
「えっ、えーと、そうしてくれると助かる」
言葉に対して、流されるように首を縦に振るシュク。ラーミアルは部屋から出て行ったことを確認すると、手に持ったドレスと袋に目を向ける。
「着るのか」
哀愁を漂わせた背中は、小さかった。羽織っていた布から手を離すと、重力に従って床に広がった。裸体の状態で、紙袋の中身から品を出した。
中には――子供用の安価な靴と、白い布の下着が入っていた。
その2点を見て、シュクの思考が停止した。
[ここまで、気を使われると・・・・・・]
シュクの脳裏に、高らかに笑っている大魔道士が浮かんだ。その大魔道士に八つ当たりとばかりに、憤りをぶつけた。
[これも、あの大魔道士せいだ]
5分が経過した。
ラーミアルは部屋の外で待っていると、扉が緩やかなスピードで、僅か開いた。
「お待たせしました」
ドアの先からは、シュクの恥ずかしそうな口調の声が聞こえた。
「長かったですね。どうですか?」
ラーミアルは開いた扉から部屋へと戻り、シュクに目を向けた。
日本人形のような美と可愛さを兼ね備えた象徴。小さい子供が、静かに立っていた。
漆黒に包まれた華奢な身体。サイズがぴったりでドレスの裾からは、健康的な肌色のふくらはぎが露出している。靴のサイズも適切だったようで、問題なく履けている。
髪や服装が黒系の色により、冷静沈着な賢い子供に見える。
何よりも、少女としての儚く尊い可愛らしさが溢れ出ている。
「似合ってないでしょ?」
「とっても可愛いです! 可愛いです!」
ラーミアルはシュクに駆け寄ると、脇に手を当てて、持ち上げた。
「あっ、あの」
「可愛い、可愛い!」
宙に浮いた足をブラつかせて、シュクは「可愛い」という言葉に複雑な気持ちが湧き上がる。ラーミアルは妹ができた姉のように、凄い喜びを見せる。
30秒が経過したが、一向に持ち上げられたままだ。痺れを切らしたシュクは、言葉を切り出した。
「そろそろ、下ろしてくれないか?」
ラーミアルは我に返り、「ご、ごめんなさい」と、急いでシュクを下ろした。床に着地させると、キラキラと輝かせた瞳で視線を送る。相当、シュクの服装を気に入ってくれたのだろう。
「似合っていると言うのは、複雑な感情が込み上げてきますね」
「可愛いのは正義ですよ」
「それが、複雑なんですよ」
真顔なため些細な心境が読み取れないが、シュクは嬉しそうではない。
ラーミアルは部屋の奥にある窓まで歩いて行くと、外の様子を眺めだした。
「今は学園がお休みですが寮のご飯は朝と夜、ちゃんと出してもらえます。ここの寮母さんは優しいから本当に助かります」
濃い茜色の夕焼けが、窓から入り込んでいる。光を浴びる美少女は、幻想的な絵画のようだ。ラーミアルは再びシュクへと近づくと、手を差し出した。
「夕食に行きましょうか」
「私もいいのですか?」
「もちろん」
シュクはラーミアルの手を見て数秒悩み、優しく掴んだ。やはり、女子になったとはいえ、年頃の女性と手を繋ぐのは抵抗があるらしい。
ラーミアルは掴まれた手をギュッとし、笑顔でシュクを引っ張る。
明瞭なたんぽぽ色のポニーテールが、大きく揺れた。
シュクの目には繊細に模様を描いた幻想すぎる絵画のごとく、映っていた。言葉を失いながら、立ち尽くし、空を鑑賞している。
現在、シュクは魔術学園内にある女子寮の入口付近で待機していた。
寮から出入りする生徒からは、
「何あの子、かわいいー」
「誰かの妹かしら? 私もあの子みたいな妹欲しい」
と言った女子生徒の声があった。
シュクは目の前の光景に集中し、周囲の音が入っていないが。そして、目を瞑ると黙々と思案し始めた。
[今日の情報収集は、こんなところか。結局、夢とも現実とも判断する材料が見つからなかったな。明日も引き続き調査するか。このままこの世界にいたら、研究が疎かになってしまうな。後で、紙とペンをラーミアルから借りてアイディアを書き留めるとしよう。しかし、今日は泊まる場所もないし、野宿でもするか。研究生活でどこでも寝れるスキルは収得したしな]
置物のこけしのように、じっと固まっている。
シュクはこの場で数分間、黙想していると、どこからともなく話しかけられた。
「‥‥‥おーい、おーい、シュク」
シュクの傍らから、澄んだ穏やかな声がした。シュクは自然と目蓋を開き、声の元へ顔を向ける。
感情を安らがせてくれる、強く明るい青の瞳。淡くしっかりとした黄色の髪の毛。鮮明で、もちもちと弾力ある肌。そして、嗅覚に入り込む、心を平常にしてくれる天然の柑橘系の匂い。
「ラーミアル」
と、自然に言葉が出た。シュクの純粋な黒い瞳に映っていたのは、絶世の美少女だった。
「そうですよ。シュクはたまに声が届かなくなる時がありますね」
「そうですか?」
ラーミアルは笑みと困惑が混ざり合った顔で、シュクを見つめている。
「寮母さんから許可が得ましたよ。私の親戚で、休暇中に訪ねてきた、と。宿泊の許可も取れました」
「なるほど。‥‥‥宿泊?」
シュクは、首を傾げる。
「はい。他に泊まる場所がありましたか?」
「いやっ。今日は、野宿でもしようかと」
「それなら丁度、良かったです。私の部屋でよければ使ってください」
ラーミアルは、安堵の表情になった。
「私は別に、野宿で問題ないです」
「問題大有りですよ!」
シュクの言葉に、真剣な相好に変わり、顔を接近させる。世の男性なら心臓の高鳴りが抑えきれないほどに、顔が近い。
「野宿で問題ないで」
「お・お・あ・り・です」
ラーミアルの気迫にシュクは頷き、提案を呑んだ。
「はいっ! わかれば、よろしいです!」
にっこりと、心を打ち抜く破壊力のある笑顔。ラーミアルはわかりやすい嬉しさを表情に出した。
「それなら、行きましょう。シュク」
話が終わると、ラーミアルはシュクの手を掴み、誘導を始めた。
女子寮は4階建て、35部屋。同様の建物が5棟、等間隔に並んでいる。その中でラーミアルの住む寮は、3棟目にあたる。外観は清潔感のある石と木の作りになっている。寮の一階は、洗面所、浴場があり共有スペースとして使用するようだ。1階に5部屋、2階から4階の各階は、10部屋を完備している。食堂は寮の外を出て、目と鼻の先にある。
寮内の床は木造で、フローリングのようだ。丁寧に磨かれ、ツヤを越え、鏡を思わせるほど輝きが強い。各階の廊下は、徒競走ができる長い直線になっている。
シュクとラーミアルは階段を上り、廊下を進んでいた。建物の端側辺りで、ラーミアルは足を止めた。“209”と読む、特有の言語で扉の真ん中に、白文字で表記されている。
「ここが、私の部屋です」
ラーミアルは腰に括り付けている袋から、灰色の金属製のカギを取り出した。慣れた手つきで、扉を解錠する。
ドアノブを回し、開くと――女性らしいと言われると疑問を抱く部屋が現れた。
8畳くらいの広さの空間には、木造のシングルベッドと天井の高さまである本棚がある。本棚には、書籍がぎっしり詰められている。本棚の一部には、小物や写真立てのようなモノが飾られている。本棚の隣には、机と椅子。他にあるのは、衣類や日用品を収納しているのであろう、木造の箪笥のような置物だけだ。
女の子らしさを感じさせない、素朴な部屋だ。
「地味な部屋ですね」
「そうですね。この学園には、強くなるためだけに在籍しているので」
ラーミアルは真面目な口調で答えた。そして、部屋に入ると部屋の角に置かれた箪笥へ移動すると、何かを探すように手を入れていた。
ガサゴソとしているラーミアルをシュクは眺めている。
「シュク、これでいいですか?」
ラーミアルが取り出したのは、薄っすらと着色された緑色のドレスだった。生命力あふれる草原を思わせる美しい緑色を、極限まで淡くした色だ。裾には可愛らしい、フリフリがつついている。ラーミアルの今の服装とは、正反対の少女らしい服だ。
「後、あるとしたらこの服かな」
もう一着は――深い真っ黒の、同じくドレスだ。このドレスは何も飾りがない、質素な仕上がりである。機能性が高く、激しく動いても問題なさそうだ。
「それは?」
「シュクが着る服ですよ。そのままではいけないですから」
「ちなみに、それ以外の服は?」
「この2着だけしかなかったです」
シュクは選択肢がドレスしかない。そのことに、脳内で苦悩し、言葉に詰まる。
「えーと‥‥‥」
「気に入りませんでしたか? そうでしたら、後で服を買いに行きましょう」
ラーミアルは、シュクの悩んでいる様子を見て、代替案を提案した。出したドレスを元あった形に畳むと、取り出した場所に納めようとしている。
[これ以上、ラーミアルに負担をかけるのは悪い。ここは男として腹をくくるか。今は男じゃないが]
と、心で何かを決断する。
「ラーミアル、その黒い方の服でもいいかな?」
「もちろんです!」
ラーミアルは意外な返答に、ついつい声が大きくなった。緑色のドレスは収納し、漆黒のドレスを手に、シュクへ持ち寄る。
そして、ラーミアルはシュクにドレスを受け取らせる。さらに、薬屋の途中に何件か立ち寄って購入物の袋も渡した。
「シュク、これも使ってください。着替えるまで、外にいますか?」
「えっ、えーと、そうしてくれると助かる」
言葉に対して、流されるように首を縦に振るシュク。ラーミアルは部屋から出て行ったことを確認すると、手に持ったドレスと袋に目を向ける。
「着るのか」
哀愁を漂わせた背中は、小さかった。羽織っていた布から手を離すと、重力に従って床に広がった。裸体の状態で、紙袋の中身から品を出した。
中には――子供用の安価な靴と、白い布の下着が入っていた。
その2点を見て、シュクの思考が停止した。
[ここまで、気を使われると・・・・・・]
シュクの脳裏に、高らかに笑っている大魔道士が浮かんだ。その大魔道士に八つ当たりとばかりに、憤りをぶつけた。
[これも、あの大魔道士せいだ]
5分が経過した。
ラーミアルは部屋の外で待っていると、扉が緩やかなスピードで、僅か開いた。
「お待たせしました」
ドアの先からは、シュクの恥ずかしそうな口調の声が聞こえた。
「長かったですね。どうですか?」
ラーミアルは開いた扉から部屋へと戻り、シュクに目を向けた。
日本人形のような美と可愛さを兼ね備えた象徴。小さい子供が、静かに立っていた。
漆黒に包まれた華奢な身体。サイズがぴったりでドレスの裾からは、健康的な肌色のふくらはぎが露出している。靴のサイズも適切だったようで、問題なく履けている。
髪や服装が黒系の色により、冷静沈着な賢い子供に見える。
何よりも、少女としての儚く尊い可愛らしさが溢れ出ている。
「似合ってないでしょ?」
「とっても可愛いです! 可愛いです!」
ラーミアルはシュクに駆け寄ると、脇に手を当てて、持ち上げた。
「あっ、あの」
「可愛い、可愛い!」
宙に浮いた足をブラつかせて、シュクは「可愛い」という言葉に複雑な気持ちが湧き上がる。ラーミアルは妹ができた姉のように、凄い喜びを見せる。
30秒が経過したが、一向に持ち上げられたままだ。痺れを切らしたシュクは、言葉を切り出した。
「そろそろ、下ろしてくれないか?」
ラーミアルは我に返り、「ご、ごめんなさい」と、急いでシュクを下ろした。床に着地させると、キラキラと輝かせた瞳で視線を送る。相当、シュクの服装を気に入ってくれたのだろう。
「似合っていると言うのは、複雑な感情が込み上げてきますね」
「可愛いのは正義ですよ」
「それが、複雑なんですよ」
真顔なため些細な心境が読み取れないが、シュクは嬉しそうではない。
ラーミアルは部屋の奥にある窓まで歩いて行くと、外の様子を眺めだした。
「今は学園がお休みですが寮のご飯は朝と夜、ちゃんと出してもらえます。ここの寮母さんは優しいから本当に助かります」
濃い茜色の夕焼けが、窓から入り込んでいる。光を浴びる美少女は、幻想的な絵画のようだ。ラーミアルは再びシュクへと近づくと、手を差し出した。
「夕食に行きましょうか」
「私もいいのですか?」
「もちろん」
シュクはラーミアルの手を見て数秒悩み、優しく掴んだ。やはり、女子になったとはいえ、年頃の女性と手を繋ぐのは抵抗があるらしい。
ラーミアルは掴まれた手をギュッとし、笑顔でシュクを引っ張る。
明瞭なたんぽぽ色のポニーテールが、大きく揺れた。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!
アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。
「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」
王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。
背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。
受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ!
そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた!
すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!?
※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。
※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。
※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる