不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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99.投げやがった    sideフレイ

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 そういうのも待ってた!!


 これはこれはと僕は木の枝に降り立ち、座って高みの見ぶ……いや、か弱い僕じゃ力になれないと、足手纏いにならないためにも生い茂る葉っぱに隠れながらわくわ……コホン手に汗を握りながらラック達を見守ることに決めた。


 ……そう、決めたんだけど……


「えぇ……」


 拍子抜けするほど呆気なかった。こんなのどっちが勝つかなんてもう丸わかりだというほど簡単に倒されていくんだもん。山賊達が。


 相手結構いたと思うのに瞬きをする間にどんどん減っていく。対立で言えば約百対二十くらい? でも殆どラックやモージーズー達数人で片付けていってるから実質百対十くらい? 他は周辺の探索に消えていた。


 いや、んな馬鹿な! 呆気な!! え? ラック達ってこんなに強かったの!?


 まだまだ本気には程遠い、片手間という様子で対処にあたるラック達に僕はそう思った。普段のおちゃらけた様子からは想像できない強さだったんだ。……でも、まぁ……


「んー……」


 ……なんか所々でその片鱗は見てた気がするけど、大抵僕ツキさんの力のせいで倒れてるか頭打ってたからちゃんと見てなかったんだよね……。対人戦とか特に。


「でもこれは……」


 そっと項垂れた。もっとこう白熱とした戦いを見たかったのに……って。自分達より大勢の敵に囲まれた時とかによくあるでしょう? 窮地に陥った感に「くそっ!」とか言って悔しそうにしたり、仲間を斬られて怒ったりとかそんな熱い展開を期待してたのに全くそんなこと起こらなそうだったんだもん。


「くそっ! あの女絶対ぇ許さねぇ! やっぱ罠じゃねぇあの野郎!!」


 ……あ、「くそっ!」って言ってくれた。でもちょっと違う……。


 レーラに対しぶつぶつ文句を言いながらラックは敵を放り投げていく。鍔迫り合いなんて一回や二回くらい。大体一発か二発目でケリつけちゃうんだから、なんだかなぁ……


「……あ、そうだ。ツキさんのあの力、ちゃんと解放しておかなくちゃ」


 落ち込みながらふと思い出した。


 離れてすぐ解放は、最近のツキさんの心の浮き沈み具合に街に出なくなる可能性があるからって後回しにしてたのをすっかり忘れていた。パッとツキさんを『視』てみればまだ街にいて、よかったと息を吐く。


 ふー、危ない危ない。これ解いとかないとレーラの作戦なにも始まらないところだった。結構時間経ってるけどまだ街にいるしギリギリセーフだよね。


「よしじゃあさっそく――……えーと……本当にいいよね?」


 いざ解こうとするも思わず止めて考えてしまう。


 ……ツキさん、泣いて喜んでたよね? ありがとうって。なんかあの力のせいでいろいろ思い詰めちゃってるみたいだし、この間もそれで役に立てないって泣きそうになってたし……。そんなツキさんが一人でいるところに力を戻したりなんかしたら……


「……ううん、それでも」


 頭を振って気持ちを固める。力を封印したままだとレーラと僕の計画が台無しになってしまう。なんのために僕がここへ来たのかわからなくなってしまう。


 ……ごめんねツキさん。


 なんとなく罪悪感を感じた。だけどただ力を解放するだけ、前と一緒。もうすぐ日が暮れるし、そうなればツキさんもレーラの家に帰るだろう。なら、そんなちょっとの間にレーラが言うように上手くいくわけないっか! 元に戻すだけで一体何になるの! と気持ちを切り替えてツキさんの力の封印を解いた。


 ズガッッ

「…………」


 ……瞬間、僕の顔面スレスレに通る何か。横を向けばギラッとした刃が木の幹に突き刺ささり、目の前で光っていた。


「ちょっ! ボス、どこに向かって剣投げてるんだ!」


「……いや、なんかあの辺から嫌な気配を感じた」


 投げやがったんだラックが。この僕に向かって剣を。


「……誰もなにもないぞ?」


「……おかしいな。……まぁいいレト、お前の寄越せ」


「素手で戦えと!?」


 じっとこっちを睨みつけた後、ラックはレトから剣を奪い取る。


「……っ」


 姿消しててよかった……っ。


 ラックとレト、二人の会話を聞きながら僕はそっとその場から距離をとった。


 別に怖かったからじゃないよ? もうここはいいかなって思ったからだ。









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