不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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144.怒ってるっすもんね…

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「うぅ……フレイ君っ帰っちゃ嫌っす……っ」


「姉様ぁぁ……」


 フレイ君と抱きつき泣き合っていると、ついに俺はボスに、フレイ君は女神様に引き離されてしまう。


「……身から出た錆ですよフレイ」


「ツキも駄々捏ねんな。ほらバイバイしろバイバイ。フレイなんかいなくても俺が側にいるだろ? あいつの分まで俺が側にいてやるから元気よく手を振ってやれ」


 ボスが後ろから抱きつくようにくっつき、俺の手を持ち上げフレイ君に手を振ろうとする。それに嫌々と首を横に振った。


「ちょっと! 急に下ネタ入れないでよ!」


「……今のどこが下ネタに聞こえんだよ。てめぇの頭の中身はどうなってんだ」


「ゔぅ~ブレイぐん~!」


「お前も……フレイに散々な目に遭わせられまくった癖によくんな泣けんな」


「ぞんなの関係ないっずよ!」


 呆れるボスにワッと声を荒げた。確かにそんなこともあったかもしれない。だが俺とフレイ君はたった今気持ちを通じ合せたばかりなのだ。あの熱い抱擁を見ていなかったのか! 引き剥がしたくせに! 誤解が解け、心からやっとフレイ君と友となれたというのに、すぐにそんなフレイ君との別れ。辛いに決まっている。


「……ツキさんズズ。僕……またツキさんに会いに来ます。その時また一緒に遊びましょう?」


「……またっていつっすか?」


 女神様の手から逃れ、俺の元に来てそう言ってくれるフレイ君。そんなフレイ君にグスンと鼻を啜りながら聞けば、フレイ君は難しい顔をして目を逸らしてしまう。


「…………ツキさんが寿命迎えて死ぬまでには会いに来ます」


「期間長いっすね!?」


 俺長生きするっすよ!? してやるつもりっすよ!? やっぱり六年っすか。六年がちょっとっすからっすか? 感覚違うからっすか!? 気づけば年くってる感じなんっすか!?


「僕はまだ神として半人前だから、今回みたいなことがない限り気軽に遊びには来れなくて、姉様も許可してくれないんですよ。……ボソあと姉様の怒りがいつ解けるかわかんなくて……」


「ああ……」


 すごく納得した。感覚の差というよりそっちかと。


 涙声で小声のフレイ君にチラリと女神様を見れば、にっこり微笑んでいて怒っているようには見えない。だが女神様が口を開けばその所々からフレイ君への怒りを感じ、フレイ君を見る目も冷たいことから大変怒っているであろうことは確かだ。これでもまだ我慢している風なのが漂ってすらくる。……フレイ君の怯えようからして、女神様は怒らせたらとても怖いのだろう。だって神様なのだ。それでもフレイ君は帰ることに対し、女神様に反発してくれた。


「ツキさん」


 フレイ君が真っ直ぐ俺を見る。


「次いつ会えるかわからないけど、でも、僕、絶対に会いに来ますから気長に待っていて下さい。僕はいつでもツキさんを見てますから」


「……はいっす」


「……おい、堂々の盗み見発言やめろよ? ちゃんと俺らのプライバシー守れよ?」


「うるさいなわかってるよ。余計なちゃちゃいれないで」


「前科があるからだろうが」


「そ、そんないつの話かわからない話僕覚えてないし!」


「しょっちゅうだっただろうが。……流石に俺も見られる趣味はねぇぞ」


「「「きゃ! フレイちゃんのえっち!!」」」


「なっ///!? そ、そんなの見ないよ!!」


「……そんなのって何想像してんだよ。それとは言ってねぇだろうがこのマセガキが」


「なっ!? ちっ! だ! ~~そっちが!!///」


「フレイ君顔真っ赤だなぁ~」


「「「フレイちゃんのえっち!!」」」


「~~違う!!///」


「……グスンッ」


 ボス達とフレイ君の楽しそうな光景に鼻を啜って涙を拭った。


 ……今は悲しいっすけど大丈夫っすよね。


 これが永遠の別れではないのだ。死ぬまでの間には会いに来てくれるというのなら最低またあと一回は絶対にフレイ君に会えるということ。……フレイ君がいるこの光景を次いつ見られるのかはわからない。けど、また会えた時にフレイ君にもう一度胸を張ってやっぱり幸せだとお礼を言えるように頑張ろう。


「……フレイそろそろ帰りますよ」


「うっ……わかってるよ」


「……フレイ君……帰っちゃう前に送別会やらないっすか? みんなフレイ君とちゃんとお別れしたいと思うっすよ? ぱー! っと祝うっすからめちゃくちゃ面白いっすよ?」


 背を向けるフレイ君にそういえばと思い言った。別にちょっとした時間稼ぎや縋りではない。今この場には俺とボスとレト兄とモー達しかいないのだ。最後の見送る体勢にレト兄もモー達もホロリと涙をこぼし、ハンカチを目に当てている。だが、フレイ君と一緒に過ごした仲間は他にもたくさんいるのだ。


 ……みんな、なんだかんだ怪しみながらもフレイ君のこと好きだったっす。


 だから、何も言わずに急に去り、いなくなればみんな悲しむと思う。だけど送別会をしたらきっと楽しくお別れすることができるだろう。定番の腹踊りから曲芸、早食い早飲み対決に始まり、モージーズー達の一心同体の可憐や舞や動きなど、みんな面白い事ばかりやってくれるのだ。美味しいご飯もお菓子も特別だといっぱい作ってくれる。フレイ君もきっと気に入ってくれるはずだ。


「……それを言われたら参加したいですけど……」


「……ダメですよフレイ」


「チッ、ケチ女」


「は?」


「モウシワケゴザイマセン」


「……ツキ。誘惑するようなこと言うんじゃねぇよ」


「うぅ……ごめんなさいっすぅ……」


 女神様からすんっごい低い声がしたっす。ごめんっすフレイ君。


 シクシクシクシクシク……。


 即興の作戦はやはり上手くはいかずしょんぼりと涙を流した。そんなしんみりとしたお別れムードが漂うなかで女神様は優しく俺達へと微笑む。


「ツキさん。ラックさん方、フレイと仲良くして下さり本当にありがとうございました。……こんなにも活き活きとしたフレイを見るのは初めてでした」


「……はいっす」


 うぅ……涙止まらないっす……。


「最後に、ツキさん。ご迷惑をおかけしてしまったお詫びに私に叶えられる範囲でなんでも一つ、願いを叶えることもできますがどういたしますか?」


「…………え?」


 あ、涙止まったっす。


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