不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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121.バレてる…?    sideフレイ

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 驚きに頬を凹まされたまま大きく叫んだ。


 そうだ、そうだった! 忘れかけてたけど今話してるのラックじゃん! あれ? 僕結界張ってたしラックも結界張ってるの解けって怒ってるしこれ本物のラックだよね? なんで入って来れてるの!?!? 何平然とここにいるの!? 


 狼狽、混乱する僕の頭。


「……てめぇ今の状況わかってねぇみてぇだなァ゛」


「ッッ!?」


 指圧がまた強まる。声の凄みも増し、まだ冷たくなるんだと思うほどラックの眼光の冷ややかさも濃くなった。このまま僕の頬は口の中でくっついてしまうかもしれない。……そんな、喋りたくても喋れない、悲鳴も上げられない程に陥没する頬の状況に陥っていた時、気の抜けた声がその場に響いた。


「おーい、フレイちゃ~ん俺達もここにいるぜ~」


「っ!? みょー!? にゃんへぇひょひょに!?」(っ!? モー!? なんでここに!?)


「なんでってそれはこっち向かってる最中に合流したレーラ様の部下に転移の道具で近くまで送ってもらったからだぜ~」


「ちなみに坊ちゃんはツキんとこ行こうとしてフレイちゃんとこ来ちゃったから機嫌最悪を通り越してるぞ~」


「うー、なんか体が変な感じするな。気を抜けば体持ってかれそうなんだけど、これが結界なのか?」


「ひぇあ!?」


 聞こえた声達に目と……頑張って顔も横に動かせば、何人か足りないような気がするけれど、モーだけじゃなくジーズーやレト、それに今回の作戦に参加していた連中が木々や草むらに紛れてそこにいた。


 ラックに気を取られて気付かなかった。というかなんでお前らもいるの!! どうやって入ったの!?


「坊ちゃんフレイちゃんの顔やばいことになってるから手ぇ離してやんなよ」


「それじゃ喋らせられねぇだろ?」


「もっと違うとこ鷲掴んで捕まえてやれよ。……首とか?」


「っっ!?」


 殺す気か!? そんなとこ持たれたら怖くて余計に何も喋れなくなるよ! あとラック! ほんとそれ以上は無理だよ! 指の力強めないでよ! これが首だと折れちゃうから!!


「チッ」


 モー達の言葉にラックは不服さを隠しもせず僕の頬から手を離した。そしてすぐ顎を鷲掴んできた。クイッじゃない。ガシッだ。フェイスラインを鷲掴みにされ、今度は顎の骨がギリギリと軋む。


 ……首よりマシかもしれないけどこれも嫌だなぁ……。


「で? 結界を解くか俺達をツキの元に連れて行くかどっちだ。これ以上ツキで遊ぶな。どっちも嫌だっつうんなら――それ相応の覚悟を決めろよ?」


「……覚悟? たかが人間如きが僕に何ができるっていうの?」


 ……売り言葉に買い言葉とはこのことだと思う。言ってからすごく後悔した。凄んでくるからつい言い返しちゃった……。


 そんな僕に、ラックは口元に弧を描き――


「勝てる勝てねぇの問題じゃねぇよ。お前こそ人間さまの怒りをあんま舐めんなよ? ――全力でテメェをこの世から消し去ってやるよ」


 それを消し去ると無表情に凄み僕を見下ろした。


「……」


 殺すじゃなくて消すって言うところがなんか怖い。


 ……そんなことできるわけないとわかってる。たかだか人間が僕に勝てるわけないし張り合えると思うことこそが烏滸がましいことだ。……なのに、もしかしたら? と思ってしまう自分がいる。だってどんなに隠れても見つけられるし今現在進行形で僕の力に抗ってここにいるし。……本当になんでいるんだろう? というかなんか僕の正体バレてるような気がするのは気のせいかな……?


「おい早くしろ。両方でもいい。というかそうしろ。てめぇのせいで何人か逸れていなくなっちまっただろうが」


「情けねぇ奴らだよなぁ~」


「鍛えが足りてねぇんだよ」


「帰ったら鍛え直しだな!」


 いたただだだ! なんの鍛えだよ!!


 顎がギリギリする。


 僕の力に抗ってここまで来るだなんて鍛えてどうこうできる代物でもないと思う。たぶん今ここにいない人達の方が普通の人間としては正しい結果だよ。……ん? あれ? いや、待てよ? 


 ふと思い出した。ツキさんに力が宿ったことで姉様が怒っていた理由の一つを。


 こいつらはずっとあのツキさんと一緒にいて僕の力の影響を間近で受け続けてきた連中だ。……もしかしてそれで僕の元まで来られた? ラックも勘だと言ってたし、本当に何か感じるものがあってここまでこれたのかもしれない。話半分にしか聞いてなかったけど、これが姉様の言ってたツキさんが持つ僕の力の影響ってや――


 ギリッ

「いだだだただだだだ!!」


 顎を掴む手にさらに力が入れられる。まだ考え事の最中なのに!


「余裕だなァフレイ? ……俺のことガン無視か?」


「っい゛そ、そんなことないよ、ちゃんと話聞いてるって! わかってるから力入れないでよ!!」


 この馬鹿力野郎! 言われなくたって解くよちゃんと。ツキさんだって危ないんだし、こんなことをしている場合じゃないもんね!


 そうやって、骨が軋む痛みに目に涙を滲ませながらも結界を解こうとした時――


「っ!? やばっ!!!!」


 地面が大きく揺れた。


「……ツキ?」


「「「!?」」」


 急いで『視』てみれば、あの変態が血塗れでツキさんの前に倒れてるし、ツキさんの手も真っ赤だった。


 っまた余計なことしたな!


 この状況に至った経緯はわからないけどバーカルが笑ってるから絶対バーカルが何かした。ラック達のせいで異変に気付けなかった。これは本当に不味いっ。


「くっ! ラック!! ……あれ? どこ行った!?」


 今まで目の前にいたはずのラックが消えてる。


「ボス!!」


「!」


 レトの叫ぶ声にその方向を見ると、散々結界を解けと、ツキさんの居場所がわからないと焦っていたラックがなんの迷いもなく駆け出して山を下りていっていた。僕はそんなラックの後を追おうとするレトやモー達他の連中を慌てて止めた。


「動くな!!!!」


 これ以上好き勝手に動かれると守りづらくなる。ラックも連れ戻したけど今はちょっと難しい。ここにいる連中だけじゃなくて嫌だけどバーカル達も保護対象に入る。さっきも言ったけど基本、僕達の力で人の生死を決めちゃダメなんだよ。ツキさんのこれで誰か人死が出ればもうアウト! そのためにもここにいる連中を守りながら被害を最小に押し留めないといけない。


 でもラックいなくなっちゃった。ラックに何かあったらどうしよ?(泣) ……って


「あれ!? みんなどこ行った!?」


 僕にしては迫真的に本気で叫んだのに誰も聞いてない! 一体どこにっ――


「やべ、忘れてた」


「は!?」


『――――ぁぁぁ゛ああ゛あ゛あ゛!!!!』


「っ」


 背後から自分に巻き付く縄に驚く暇もなく、ツキさんの叫びが聞こえたような気がした。それと同時に力が暴走したのを感じ、木々が薙ぎ倒され、足場が崩れていった――。

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