不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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128.証明し続けて下さいっす!

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「……あー、坊ちゃん。ちょーっとお話し中悪いんだけど、……どこ探してもバーカルの野郎だけいねぇんだ。ツキ知ってるか?」


 一生懸命流れ落ちる涙を拭っていると、ズーがすまんすまんと俺とボスの間に入ってきた。


「あ? ……おい、あとちょっとでツキ落とせそうなところで入ってくんなよ。あと今あいつの名前出すな。あんな奴放っといていいだろ」


「悪いからんな睨むなって。俺もそー思うけどツキも全員生きてるって見てわかった方が安心するだろ?」


 バーカル……?


「バーガルも生ぎでるんっずか?」


 鼻を啜りながら見上げて聞けば、ボスは嫌そうに顔を顰めた。


「……まぁそうだな。あいつは別に生き残んなくてもいいと思うんだけどなぁ」


「ぞんなごどない゛っず……」


 ムッと泣くのを我慢するように言う。


「けどお前のその血バーカルのだろ? 何があったかまでは今はまだ詳しく聞かねぇけど絶対碌でもねぇことをあいつがしでかしたに決まってるしどっちでもいいだろ?」


「~~よぐない゛っずよぉぉ……っ」


 せっかく止まりかけていた涙がまた出てきてしまった。


「あーツキ、ほら泣くな。んーじゃあさっさとフレイに見つけてもらうか」


「僕か……」


「う゛ぅ~たぶんボス踏んでるっすよぉぉぉ……」


 泣きながらそう伝えればボスは目を丸くする。


「あ? まじか」


「「うん」」


 まだモーに担がれたままのフレイ君と二人揃って頷き、ボスが立っていた場所をモージーズーが掘り出すと、すぐにバーカルが出てきた。


「……人の上でよくも話しなんてできましたね」


「んなとこにいるからだろ」


 恨みがましく見るバーカルにボスは鼻で笑う。


「ゔぅ~生きでだっず~~」


 瓦礫の中はどうなっていたのだろうか。いや、そんなことどうでもいい。嫌で嫌いな奴だが生きている姿を見るとどんどん涙が出てくる。


「う゛ぅ~~っ」


「……ツキさん……僕のためにそんなに泣いてくれて……、こんなことならもっとナイフを押し込――」


「おい、さっさとこいつ連れてけ」ポイ


「な!? っいッ! づぅ……」


「ボス!?」


 たぶんこの中で一番の重傷人であるバーカルをあろうことかボスは放り投げた。


「お前ら、俺は今ツキと話してんだよ。これ以上邪魔すんな」


「「「ヘイヘイ」」」


「ねぇ……せっかく助けたのに止めを刺すようなことやめてくれる?」


「あんな浅い傷で死なねぇだろ。――ふん、残念だったな」


 前半をフレイ君に、後半をバーカルに向け言うボス。勝ち誇ったボスの視線の先を辿ると、バーカルが痛みに顔を歪めながらも、どこか悔しそうにボスを見ていた。


「一回こいつツキに恐怖して逃げた奴が俺から奪い返せるわけねぇだろ」


「っ……」


 それだけ言うと、ボスはバーカルから視線を離し、さっさといけとフレイ君達に手を払った。フレイ君はがっくしと項垂れ、モーに担がれるままバーカルの方に連れて行かれる。


「ボス……?」


「なんでもねぇよ」


「なんでもって……、……ならフレイ君のせっかく助けたってどういう意味っすか?」


「ああ? あぁなんかフレイが捕まってた連中やらバーカル達を助けたみたいだぞ?」


「どうやって……」


「さぁな。んなことどうでもいいだろ」


「どうでも良くないっすよぉ……」


 結構重要なことっすよぉ……。


 ああ、また涙が出てきた。色々とボスはあっけらかんと流しすぎではないだろうか。だから……


「……そうだよ。どうでもよくなんかないよ。もうちょっと僕に感謝してよ。僕頑張ったのに。縄巻かれながらでも頑張って全員助けたのに」


 ほらぁ、フレイ君も遠くでなんか言ってるっすよ……。ボスの声聞こえてるっすよぉ……。


 フレイ君が黒いオーラを漂わせてしまっている。


「まぁまぁフレイちゃんこれが日頃の行いってやつよ」


「ほら、フレイちゃん。今度は奴隷契約紙どこにあるか探してくんない? どっかに失くしたとか言ってやがんだよ」


「あとここ以外に他、人は? それが終わったらこの瓦礫と山の整備手伝ってくれよな。フレイちゃんなら余裕じゃね?」


「は!? 待って! どれだけ僕を扱き使おうとしてるの? 僕を何だと思ってるんだよ!」


「愉快犯」「痛い子」「自己中野郎」「馬鹿笑」


「っ! なにそれ!? 酷すぎるでしょ!! 特に最後の『笑』!! っあんまり僕に舐めた態度取ってると酷い目に遭わせるよ!? 僕がいなかったらバーカルも捕まってた人達もみんな危なかったんだからね! 死んでたんだからね! わかってる!? 誰のお陰で助かったと――っっ!!」


「「「「…………」」」」


「……っ~~っっわ、わかったよ! やるよ手伝うよ! うぅ……そんな急に黙って冷たい目で見なくてもいいじゃない……。さてはみんな思ってるより僕に怒ってるでしょ…………うぅ……」


「……ボス、フレイ君泣いちゃってるっすよ?」


「ほっとけ」


「ほっとけって、でも……」


 今の話からしてこの洞窟の崩落で誰も死んでいないのはフレイ君のお陰なんだろう。ということはやはり、みんなフレイ君がいなければ俺のせいで死んでいたかもしれないってことだ。


「……っ」


 あぁ、やっぱり涙出てきちゃうっす……。


 えぐえぐ泣き出してしまえばボスに心を読まれ溜息を吐かれてしまう。


「はぁぁ。だとしてもだろ。なんでもかんでも『かもしれない』を考えてても仕方がねぇだろうが。フレイがいた結果誰も死ななかった。これでいいだろ?」


「うぅ~心読まないでくださいっす……。そんな楽観的なぁ。フレイ君がいたの偶然っすよね?」


「……偶然とは言えねぇかもしれねぇけど、楽観的でいいんだよ。必然ってんなもんなんだから。――もうこれ以上同じこと言わすなよ? あれ見て自分で考えて決めろ。お前はまたあそこに戻りてぇとは思わねぇのか?」


 ボスの視線の先、またフレイ君達に視線を戻せばシクシク泣き落ち込むフレイ君をモー達が「頼りにしてる!」などと慰め煽てていた。そして、それは周りも巻き込んでのものになっていって、みんなでフレイ君を煽てて囃し立て、フレイ君が立ち直りやる気に満ち溢れたところで「よ! フレイちゃん頼もしい!」と叫んで拍手を送っていた。


「戻ったらこの馬鹿みたいな光景、好きなだけ見られるぞ? どうせお前も参加すんだろうしな」


「うぅ……」ポロポロ……


「今見るこの光景も仲間もお前が今まで俺らと一緒に過ごしてきたなかで育んで勝ち得てきた気持ちと信頼の証だ。素直に信じて受け入れとけ」


「うぅ~!」ボロボロボロボロ


 止めどなく涙がこぼれる。さっきまでもう死ぬしかないと思っていたのに嬉しいが感情を占め、そんな気持ちはとっくになくなってしまっている。……もっとみんなと一緒にいたい。ボスの言う通り誰も死ななかった。みんなまだ俺と一緒にいる未来を描いてくれている。誰も死んでいないし殺していない。俺の中のジンクスもまだ有効だ。だから戻って大丈夫。まだ大丈夫なのだ。でも――


 ……これじゃあダメなんっすよね?


「……ヒック……グスン」


 ボスも仲間達もこの先何があっても俺を追い出さない、捨てない、絶対に死んだりしない。俺より俺を信じてくれている仲間達。覚悟を決めてくれている仲間達。俺もその気持ちを、俺へと向けてくれる笑顔を心から信じなければならないのだろう。


「…………ボス、二つだけ確認してもいいっすか?」


 信じる。だけど言葉でほしい。


「なんだ?」


「本当に……本当に俺っ、こんなんっすけどっ、っ俺のこと捨てたりしないっすかっ?」


「当たり前だろ」


「っほ、本当に、本当にみんな俺と一緒にいてもっ……死なない゛っずがっ?」


 しゃくり上げるように、だんだん大きな声で言う俺にボスはニヤリと笑う。


「当たり前だろうが。俺らのしぶとさはお前もよーく知ってんだろ」


「っっぞうっずね!!!」


 知ってるっす。知っでるっずよ! 俺何回泣いて、悲鳴上げて、びっくして転けたと思ってるんっすかっ。それで何回ボスも仲間達も大丈夫だって笑ってくれたと思ってるんっすかっ!!!


「うわーーーーん!!!」


『大丈夫。ボス達は強いんっす。不幸なんかに負けないっす』


 あの時、檻の中で思った言葉は本心だった。だけどもしかしたらという思いも大きくて、強がりが混じった言葉でもあった。


 ……怖い。ずっと、いつかみんなこんな厄病神を恐れ、いらなくなってしまうのではないだろうか。いつかみんないなくなり死んでしまい、一人になってしまうのではないのだろうか。そんな恐怖をずっと抱えていた。でも俺はもうボス達を信じる。俺のせいでどれだけの災厄がボス達に襲いかかっても、ボス達は絶対に負けない。死なない。だってみんなすっごく強いのだ。……俺は誰にも死んでほしいなどと思っていない。そう思い続ける限り大丈夫。ボスの言う通りそう自分の体質も信じ続ける。そうやってもうずっとボス達と一緒にいるのだ。一緒にいたいのだ。いつかを恐れるのではなくいてくれようとするみんなを信じ抜き共にいる。それに――


「ツキ。一応もう大丈夫だとは思うけど言っとくぞ。お前が俺達と一緒にいんのが怖いって言って逃げたとしても、俺だけは絶対にお前を諦めないからな。例え何があったとしても……――俺から逃げられると思うなよ」


「ボズ怖いっずーー!!!」


 邪悪な笑みを浮かべるボスから逃げられる気がしない。


 なんでそんな最後ひっくい声だして、悪者みたいな笑み浮かべてくるんっすか!! 怖いっすよ!! でも――!!


「っっ……たいっすよ?」


 ピタリと叫ぶのをやめた。


「ん?」


「絶対にっ……逃さないで下さいっずよ……っっ!」


 そう言ってボスのお腹へと抱きついた。


「っ俺……っボスのこと……好きなんっす! すっごくすっごく好きなんっすっ。だからこそ不安なんっす怖いんっすっ。っ……お願いだから……一人にしないでくださいっす。置いて行かないでくださいっす……っ。っいくらボスでも死んだら俺絶対に許さないっすから! 死んだら俺の方こそどこまでも追いかけて文句言って一緒にいてやるっすからね!!!!」


 この中で、どれだけ危険な目にあっても、どれだけの怪我をし痛い目にあって苦しんでも、それでも一番に努力し、俺の側にいて愛してくれているのはボスだ。逃げるな? いつか逃げて死んでしまうのはボスの方だ。


「あと!! 俺が逃げようと思うようなことも絶対しないで下さいっす!! ならないで下さいっすよ! 絶対っずからね゛!!!! ……っ信じるっすからっ……そこまで言うのならもう絶対何があっても死なないって信じるっすからそれを絶対に証明し続けてずっと俺と一緒にいて下さいっすよボス!!!!」


 念を押すように、強く抱きつきながら怒るように叫び、ボスを見上げて言った。何度も絶対と言う俺にボスは嬉しそうに笑う。


「っ……当たり前だろうが」


「うぅ~~!!」


 喜ぶなっす!!


 もう一度ボスのお腹に顔を伏せ、抱きつく腕に力を込めればボスも同じように抱きしめ返してくれる。そんなボスの服に涙を擦り付けてやった。……ボスのせいでまた涙が出てきたではないか。





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