不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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65.そのための用意 

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 俺が言った言葉に眉を下げてしまったフレイ君。だけど何かに思い当たったのかその目を丸くした。


「ツキさん、もしかしてツキさんの部屋のあの荷物ってその時のためのですか?」


「……そうっすね」


 苦笑し、「秘密っすよ」と言う。『出て行け』、その言葉をいつ言われても大丈夫なように常に準備はしているのだ。自分の部屋にあるベッド下の鞄を持てばすぐだ。……それは、言われた際にはすぐに出て行けた方がいいと思うから。でも、ちょくちょくその隠し場所は変えている。なんのための用意かはバレていないはずだが、たまにボスにその鞄の存在がバレて中身をぶちまけられる時があるのだ。


 何故そんな事をするのか、ボスに聞いたことはあるが「……なんとなく気にくわねぇ」と言っていた。俺側の理由としてはボスの泊まりがけの仕事にいつでもついていけるようにとそれらしい理由を用意し、実際カモフラージュのために持って行ったりしているため、勘鋭いボスも渋々納得し誤魔化されてくれているよう。本当の理由はなんとなく知られたくなく、気まずいので内緒にしている。


「…………そうだったんですね」


 少しの間の後、深い息を吐き出すようにフレイ君が言った。


「ツキさんの気持ちはわかりました。……すみません、色々と込み入ったことを聞いてしまって。……ツキさん、色々考えてたんですね」


「へへ、大丈夫っす。俺の方こそ気を使わせちゃって、いっぱい心配もかけちゃってごめんっすね」


「いえ……」


 ちょっと二人の間に気まずい空気が流れた。俺としたことが、ついしんみりとした話を雰囲気と共に長々としてしまった。――だが、そこでふと思い出す。


 ……あれ? そういえばここ食堂っすよね?


「「「「わははははは!」」」」


「?」


 ここは食堂。そう意識した瞬間聞こえる笑い声。辺りを見回すといつもと同じ騒がしい光景が広がっていた。


 あれっす?


 話をしている時、周りからなにも声や物音が聞こえていなかったような気がしたのだが、気のせいだったのだろうか?


「どうしたんですかツキさん? 食べたのなら行きましょう?」


「え? あ、そうっすね」


 食べ終わった器のトレーを持って、立ち上がっているフレイ君に俺も慌てて立ち上がった。


「お、ツキ食い終わったのか?」


「ちゃんといっぱい食べたか!」


「おかわりはいいのか!」


「っは、はいっす! いっぱい食べたっすし、おばちゃん達山盛りよそってくれたから大丈夫っすよ!」


 かけられた声に一瞬ビクつくも、モー達はいつもと変わらない様子だった。他周囲もどこも変わった様子なく軽快な声を上げモー達と同じような言葉をかけてくる。


 ……よかったっす。さっきの話は聞かれてないみたいっすね。


 ホッとする。ついついフレイ君に聞かれるがままにこんなところで真面目っぽい話を、周りの声が聞こえなくなるほど真剣に考え語ってしまうとは、俺としたことが。


 ……でも、ま! ご飯の時はいっつもうるさくて何言ってんのかわかんないくらい騒がしいっすからあれくらいの声量なら話聞かれてないっすよね? 大丈夫っすよね?


「そうか! じゃあさっさと風呂入って寝ろよ!」


「体調戻ったばっかなんだからな。夜更かしすんなよ!」


「歯磨けよ! フレイ君、ツキを頼んだな!」


「「「じゃあ、おやすみな!」」」


「はいっす!」


 ニカッと笑うモージーズーに笑顔で頷き返し、他にも声をかけてきてくれる仲間達に返事を返して、俺はフレイ君と共にお風呂に入るため食堂から出ようと扉を開けた。


 みんな大好きっす。だからごめんなさいっす……。


 ガンッ!

 ((っ~~‼︎))


「ん? あれっす? なんか当た――」


「ってないですから早く行きましょう! ほら!」


 (((((……)))))
 

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