不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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59.よがっだっず!!

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 頭が「???」で埋め尽くされる。フレイ君の言ったことの意味がよく理解できない。だけど、目の前で胸を張るフレイ君に、さっきまで鳴り響いていた嫌な心臓の音や焦燥感に急かされる心が静まったような気がした。


 え? どういうことっすか? 力? 封印した? 安心して? ええ?


「……あ、の、いや、ちょっと待って下さいっす。……え? もう一回言ってもらってもいいっすか?」


「はい。ツキさんの力……不幸体質は一時的に僕の力で封印しました! なので当分の間は何も起こらず平穏に暮らせますよ!」


「へあ!?」


 さっきのやっぱり聞き間違いじゃなかったんっすか!? そんなさらっと明るく言っていい内容じゃないっすよ!?


「そ! う、な!」(そんな嘘な!)


「本当です!」


「!?」


 もう驚きすぎて言葉にも出なかった。俺がどれだけこの体質に苦しめられてきたと思っているのか。なのに知らないうちに治ってる(治ってはない)なんてそんな馬鹿な話あるわけがない。お疲れ様会といえば一週間以上前の話だ。一言欲しい。これは絶対言い忘れていていい話ではない。やった時? に言ってほしい。いや、とりあえず……


 い、一旦落ち着くっすよ俺。あ、頭が混乱してるっす。そんな封印とか力とか急に言われてもっすよね。ちゃ、ちゃんと落ち着いてからフレイ君に確認していかないといけないっす。


「ふぅっ、す、ぅーはぁーすぅーっっ」


 下手くそな深呼吸を数回繰り返した後、俺はフレイ君へと尋ねた。


「あ、あの、本当に本当っすか? 封印ってなんっすか? そんなのできるものなんっすか?」

 
 これ俺の生まれ持った体質なんっすけど?


「できますよ」


「ぼ、僕の力って言ってたっすけどなんの力っなんっすか?」


「僕の晴天族としての力ですね」


「へ、へー……」


 大変だ。思いっきり顔が引き攣ってしまった。


 ……ああ、やばいっす。全然全く何一つ意味がわからないっす聞いてもわかんなかったっす! 晴天族って本当になんなんっすか? どんな力もってる種族なんっすか? 何できて何できない種族なんっすか!? フレイ君ごめんっすけど力とか急に言われてもあんま信じられないっす! ほんとごめんっす! というか俺自身もあんまり意味ある質問できてなかった気がするっすし、なんか質問の言葉が軽い気がするんっす!!!!


 頭が混乱する。何が何だかわからずクラクラしてしまいそう。信じられない。……だが、そんな思いが強くても、それ希望に縋ろうとする自分がいる。フレイ君の言う言葉に納得したいと思う自分がいた。だから――


「あ、あのフレイ君。本当にもう何にも不幸なこと、起こらなくなったんっすか?」
 

「ずっとじゃないですけど効果が続いている限りはもう何も起こらないと思いますよ? 切れてもまたかければいいだけなので」


「そうなんっすか? っそんなんできるんっすか? そんなんでいいんっすかっ?」


 なんっすかその切れればまたかければいいって。そんなお手軽な感じなんっすか俺の体質!!


「で、でもその……もしかけたものが解けちゃった時に不幸が倍になって襲ってくるなんてことは……」


 こういう話よくあるっすよね?


 糠喜びにならないよう、慎重に尋ねた。


「ないですよ~」


「ないんっすか!」


 マジっすか!?


「はい! なので今のツキさんはただの普通の人間です!」


「ひゃーっ! 本当っすか!?」


 フレイ君に聞いて答えてもらうたびに興奮が隠せなくなる。さっきまでの不安はどこへやら、頬っぺたに手を当ててぴょんぴょん飛び上がり、身体全体で喜びを表現してしまう。それはまぁまぁとフレイ君が俺を落ち着かせ、椅子に座らせるほどだ。


「スーハァースー…………」


「ツキさん?」


 深呼吸をし、気を落ち着かせ考える。


 ……フレイ君、体質を封印とか力とか言ってたっすけど、やっぱり俺の体質って呪われてのことだったんっすかね? 


 わからない。わからないが、なんの自覚もないままになくなった自分の体質。本当になくなったのか疑いの念は深い。たが、このボスについていた一週間本当に何も俺の周りで問題は起こらず、ボスも怪我をすることもなく生きている。これが今ある真実で、疑うべきことはない。フレイ君の言葉を信じてもいいのだ。大丈夫なのだ……っ。


「っ……ふ……うぅ……ゔぅ~~っ」ポロポロポロ


「ツキさん!? ど、どうして泣いてっ……」


 ポロポロと涙がこぼれ落ちる。手で目を覆い隠すもそれでは隠せないほど涙が溢れ出してしまう。……ずっと悩んでいた体質が、ずっと怖かった自分の体質が一時とはいえなくなった。もう、怖がらなくていい。誰にも迷惑をかけなくて済む。傷つけなくて済む。もう……っ


「……ふっ……うっ! フレイ君……っ、ほ、ぼんどうにっありがどうっず。っブレイ君はっ、俺どボズのっみんなの救世主っず!! う゛ぇぇえーーん!」


 これはダメっす。これほど嬉しいことはないっす!!


「え゛? ……っい、いえ、あの、そこまでっ……えとはい、喜んでもらえているようでよかったです……はい……」


「っご、ごれが喜ばないわけないっずじ喜ぶごえでるっずよ!!! っ俺っ、ごの体質のぜいで……っいっばいみんなにめいわぐがげでっっ、でもどうじようもなくで……っ!! こ、今回も……っどうしよっすっていっぱい悩んでたんっす!! っでも!! フレイぐんのお陰で俺っっ……ボスも……っっ。うぅ~もゔ本当に凄いっで言葉じが出てごないっずっ、あ、ありがとうもどまらない゛っず! ほんどうにっ本当にありがどうっずフレイ君!! ありがどうっず!!」


「…………」


 泣きじゃくりながらも、胸に抱くとてつもない感謝をフレイ君へと一生懸命言葉にして伝えた。そんな俺からフレイ君はサッと顔を逸らしてしまった。


「ブレイぐん?」


「……す、すみません。大丈夫です。ちょっと良心の呵責が……っくっ苦しいやばいどうし……ハッ! い、いえ! お礼なんていいですからほら、ツキさんご飯もっと食べましょう? 朝も昼もあんまり食べてなかったでしょう? あ、おかわりなら僕、よそってくるし欲しいデザートも僕の分もあげますからどんどん食べてください。ほんとどうぞ!」


「え? あ、はいっす。ありがとうっす!」


 そう言われればお腹がぐうっと鳴った。次から次へと流れる涙をグイッと拭って、俺は止まっていた食事を再開させ口いっぱいに詰め込み味わった。美味しい。大丈夫だ。何も起こらない。ボスも大丈夫。死なない。みんな大丈夫。


 まだ止まりきっていなかった涙が目尻からポロリとこぼれる。でも……


   ……へへ/// よかったっす!


 同時に笑顔もこぼれた。




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