不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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46.お疲れ様会っす!

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「――さぁ寝るっすよフレイ君!!」


 自分の部屋にフレイ君を招き入れ、床にお布団を敷いて寝る準備を整える。


 もう今日は疲れたっす! 頑張ったっす! 主にフレイ君が!!


 あの後、一度アジトへと戻った俺達は、捕まえた連中とレト兄を尋問係としてアジトへと残し、ボスが指定する場所にまた転移した。そこからボスは何度フレイ君を突き落とせば気が済むのかというほど、坂や段差、川へとフレイ君を蹴り落としていた。また、五か所の話はどこいった? というほどにフレイ君を働かせ転移させまくっていた。働かされる以外にも、フレイ君は転んだり穴に嵌ったり、どこかからか飛んできた鹿にジャンプする踏み台にされたり、魔突兎マトツウという基本無害な突進大好きな魔物と出くわして追いかけ回されて突進されて転がり落ちたりと、後半のは俺のせいだが、それはもう俺と一緒に大変な一日であった。


「フレイ君、ほんっとお疲れ様っす! お菓子いっぱいあるっすからこっそり食べようっす!」


 泥と汗だらけだった服も体もお風呂に入ってスッキリ。ニコニコと部屋に隠して貯め置いていたお菓子を布団の上に広げた。


「ほんと疲れましたよ……って、あのツキさん? 僕本当にここで寝ていいんですか?」


「いいっすよ!」


 もうフレイ君の寝具も広げ、あとは枕を添えるだけで寝る準備バッチリだ。ジュースだってある。これから俺達はモー達がいつもやっているみたいに、酒ではないがジュースで乾杯し、お菓子を食べ、俺の部屋で今日のお仕事のお疲れ様会をするのだ。


 俺はこの間十八歳になったっすからお酒も飲めるようになったっすけど、フレイ君はまだ十四歳っすからね。お酒はダメっす!


 そして、お疲れ様会が終わればそのまま二人でおやすみする。フレイ君はいつも見張も兼ねて、ボスの言いつけで日替わりで四、五人の男共と雑魚寝で囲まれ眠っている。フレイ君がとてつもない美少年とはいえ、この組織に馬鹿なことをする仲間はいないため心配はしていないが、きっとフレイ君は鬱陶しく、暑苦しい夜を過ごしていることだろう。だってたまにフレイ君ボソッと「いびきほんっと煩い。あとむさ苦しい、暑っ苦しい」と黒いオーラを発しながら朝、部屋から出てくるからだ。だから頑張った今日くらいゆっくり眠らせてあげてもいいと思うのだ。


 監視なら俺がするっすし! あ!


「そうっす。お疲れ様会、しんどかったらやらなくていいっすよ? フレイ君今日すっごく頑張ってたっすもんね! 眠たかったらまた明日かにしようっす!」


 いけない、いけない。今日一番の功労者の気持ちを蔑ろにしてしまうところだった。

 
「……まぁ、ツキさんがいいならここで寝るけど……。えと、確かにちょっと眠たいですけど僕もお菓子食べた……いえ、大丈夫なのでお疲れ様会しましょうか」


「! やったっす!」


 いそいそと厨房からこっそり持ってきていたオオレのオレンジ色のジュースを用意する。そして、同じく厨房からこっそりと持ってきていた大きなジョッキにオオレジュースを注いだ。


 雰囲気大事っす!


「……それにしても、前から思ってたんですけどツキさんの部屋っていつ見ても片付いてますよね。ツキさんの体質からいって荒れてたり、なにか壊れて散乱しててもおかしくないのに」


 ジュースを用意し、注いでいる間手持ち無沙汰風にきょろきょろと俺の部屋を見ていたフレイ君が言う。


「毎日お掃除頑張ってるっすからね! それにもう慣れたっす! そこの大きな鞄持ったらここを出てすぐにでもどこにでも行ける用意もバッチリっすよ!」


 そこ! とベッドの下に隠してある鞄を指差した。フレイ君にならいいだろう。


 必要なもの大切なものは全部そこっす!


「どこにもってなんでそんな準備万端に用意して……。ツキさんどこか行く予定でもあるんですか?」


「…………特にないっすよ?」


 ……まぁ、保険っすよね保険。


「はい! フレイ君!」


 話は終わりとばかりに二つあるジョッキのうち一つをフレイ君に手渡し、もう一つを自分で持った。


「よし! じゃあ乾杯っ――」


「あ! ちょっと待って下さい」


「? ん?」


 ジョッキを持つ方とは逆の手をフレイ君に握られる。そこから少しの違和感を胸元に感じた。


「……これでよし。――……流石の僕もちょっと休憩挟まないとしんどいよ……」


「フレイ君?」


 今日何度目かの遠い目とぶつぶつ独り言を呟くフレイ君に首を傾げた。


「いえ、なんでもありません。……それより……えーと、ツキさん」


「はいっす?」


 フレイ君は今度は気まずそうに居住まいを正しだした。


「その……、改めて言うタイミングなくて、言えなかったんですけど……この間の……街での件は……っ本当にごめんなさい!」


「え?」


「ツキさん、自分のせいだって言って僕に何も言わないけど、やっぱりあれは僕のせいで……。まさかあそこまでだなんて思わなくて……怪我するだなんて思わなかったんです……。謹慎だってツキさんすっごく辛そうで……。僕が無理矢理連れて行って遊んじゃったから……っ」


「フレイ君……」


 ぎゅっと目を閉じ、膝に置いた手を握りしめ悔やむように謝るフレイ君。そんなフレイ君にやっぱりフレイ君はいい子だと嬉しくなった。


「大丈夫っすよフレイ君」


「で、でも……」


「気にしないでくださいっす。フレイ君に怪我なかったっすし、俺もたん瘤だけで済んでよかったっす! もうしないってボスにもちゃんと約束したっすし、謹慎辛かったっすけど、俺もフレイ君も罰を受けてそれをやり遂げたっす! ……みんな許してくれたっす。フレイ君すっごく頑張ってたってみんな言ってたっすよ? 俺もそう思うっすし、だからそんな顔しないでくださいっす。心配してくれてありがとうっすね、フレイ君!」


「……はい」


 ホッとしたように微笑むフレイ君に俺もまた笑顔になった。そして今度こそとジョッキを持ち上げる。


「それじゃあお疲れ様会、乾杯しようっす!」


「そうですね。じゃあ――」


「「お疲れ様っす(です)! 乾杯!!」」


 ガンッとジョッキがつかる音が鳴る。


 いいっすねいいっすねこういうの!


「あ」


「ん?」


 気分よくジョッキを傾け、ジュースを飲もうと口つけた瞬間、フレイ君が俺の後ろ、扉の方を見て固まった。


 ……もしかして来たっすか? これからっすのに? 今からが本番っすのに来ちゃったっすか?


「……えらく楽しそうだなァツキ」


「……」


 ……んー来てるっすね……。


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