不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

文字の大きさ
上 下
47 / 150

46.お疲れ様会っす!

しおりを挟む



「――さぁ寝るっすよフレイ君!!」


 自分の部屋にフレイ君を招き入れ、床にお布団を敷いて寝る準備を整える。


 もう今日は疲れたっす! 頑張ったっす! 主にフレイ君が!!


 あの後、一度アジトへと戻った俺達は、捕まえた連中とレト兄を尋問係としてアジトへと残し、ボスが指定する場所にまた転移した。そこからボスは何度フレイ君を突き落とせば気が済むのかというほど、坂や段差、川へとフレイ君を蹴り落としていた。また、五か所の話はどこいった? というほどにフレイ君を働かせ転移させまくっていた。働かされる以外にも、フレイ君は転んだり穴に嵌ったり、どこかからか飛んできた鹿にジャンプする踏み台にされたり、魔突兎マトツウという基本無害な突進大好きな魔物と出くわして追いかけ回されて突進されて転がり落ちたりと、後半のは俺のせいだが、それはもう俺と一緒に大変な一日であった。


「フレイ君、ほんっとお疲れ様っす! お菓子いっぱいあるっすからこっそり食べようっす!」


 泥と汗だらけだった服も体もお風呂に入ってスッキリ。ニコニコと部屋に隠して貯め置いていたお菓子を布団の上に広げた。


「ほんと疲れましたよ……って、あのツキさん? 僕本当にここで寝ていいんですか?」


「いいっすよ!」


 もうフレイ君の寝具も広げ、あとは枕を添えるだけで寝る準備バッチリだ。ジュースだってある。これから俺達はモー達がいつもやっているみたいに、酒ではないがジュースで乾杯し、お菓子を食べ、俺の部屋で今日のお仕事のお疲れ様会をするのだ。


 俺はこの間十八歳になったっすからお酒も飲めるようになったっすけど、フレイ君はまだ十四歳っすからね。お酒はダメっす!


 そして、お疲れ様会が終わればそのまま二人でおやすみする。フレイ君はいつも見張も兼ねて、ボスの言いつけで日替わりで四、五人の男共と雑魚寝で囲まれ眠っている。フレイ君がとてつもない美少年とはいえ、この組織に馬鹿なことをする仲間はいないため心配はしていないが、きっとフレイ君は鬱陶しく、暑苦しい夜を過ごしていることだろう。だってたまにフレイ君ボソッと「いびきほんっと煩い。あとむさ苦しい、暑っ苦しい」と黒いオーラを発しながら朝、部屋から出てくるからだ。だから頑張った今日くらいゆっくり眠らせてあげてもいいと思うのだ。


 監視なら俺がするっすし! あ!


「そうっす。お疲れ様会、しんどかったらやらなくていいっすよ? フレイ君今日すっごく頑張ってたっすもんね! 眠たかったらまた明日かにしようっす!」


 いけない、いけない。今日一番の功労者の気持ちを蔑ろにしてしまうところだった。

 
「……まぁ、ツキさんがいいならここで寝るけど……。えと、確かにちょっと眠たいですけど僕もお菓子食べた……いえ、大丈夫なのでお疲れ様会しましょうか」


「! やったっす!」


 いそいそと厨房からこっそり持ってきていたオオレのオレンジ色のジュースを用意する。そして、同じく厨房からこっそりと持ってきていた大きなジョッキにオオレジュースを注いだ。


 雰囲気大事っす!


「……それにしても、前から思ってたんですけどツキさんの部屋っていつ見ても片付いてますよね。ツキさんの体質からいって荒れてたり、なにか壊れて散乱しててもおかしくないのに」


 ジュースを用意し、注いでいる間手持ち無沙汰風にきょろきょろと俺の部屋を見ていたフレイ君が言う。


「毎日お掃除頑張ってるっすからね! それにもう慣れたっす! そこの大きな鞄持ったらここを出てすぐにでもどこにでも行ける用意もバッチリっすよ!」


 そこ! とベッドの下に隠してある鞄を指差した。フレイ君にならいいだろう。


 必要なもの大切なものは全部そこっす!


「どこにもってなんでそんな準備万端に用意して……。ツキさんどこか行く予定でもあるんですか?」


「…………特にないっすよ?」


 ……まぁ、保険っすよね保険。


「はい! フレイ君!」


 話は終わりとばかりに二つあるジョッキのうち一つをフレイ君に手渡し、もう一つを自分で持った。


「よし! じゃあ乾杯っ――」


「あ! ちょっと待って下さい」


「? ん?」


 ジョッキを持つ方とは逆の手をフレイ君に握られる。そこから少しの違和感を胸元に感じた。


「……これでよし。――……流石の僕もちょっと休憩挟まないとしんどいよ……」


「フレイ君?」


 今日何度目かの遠い目とぶつぶつ独り言を呟くフレイ君に首を傾げた。


「いえ、なんでもありません。……それより……えーと、ツキさん」


「はいっす?」


 フレイ君は今度は気まずそうに居住まいを正しだした。


「その……、改めて言うタイミングなくて、言えなかったんですけど……この間の……街での件は……っ本当にごめんなさい!」


「え?」


「ツキさん、自分のせいだって言って僕に何も言わないけど、やっぱりあれは僕のせいで……。まさかあそこまでだなんて思わなくて……怪我するだなんて思わなかったんです……。謹慎だってツキさんすっごく辛そうで……。僕が無理矢理連れて行って遊んじゃったから……っ」


「フレイ君……」


 ぎゅっと目を閉じ、膝に置いた手を握りしめ悔やむように謝るフレイ君。そんなフレイ君にやっぱりフレイ君はいい子だと嬉しくなった。


「大丈夫っすよフレイ君」


「で、でも……」


「気にしないでくださいっす。フレイ君に怪我なかったっすし、俺もたん瘤だけで済んでよかったっす! もうしないってボスにもちゃんと約束したっすし、謹慎辛かったっすけど、俺もフレイ君も罰を受けてそれをやり遂げたっす! ……みんな許してくれたっす。フレイ君すっごく頑張ってたってみんな言ってたっすよ? 俺もそう思うっすし、だからそんな顔しないでくださいっす。心配してくれてありがとうっすね、フレイ君!」


「……はい」


 ホッとしたように微笑むフレイ君に俺もまた笑顔になった。そして今度こそとジョッキを持ち上げる。


「それじゃあお疲れ様会、乾杯しようっす!」


「そうですね。じゃあ――」


「「お疲れ様っす(です)! 乾杯!!」」


 ガンッとジョッキがつかる音が鳴る。


 いいっすねいいっすねこういうの!


「あ」


「ん?」


 気分よくジョッキを傾け、ジュースを飲もうと口つけた瞬間、フレイ君が俺の後ろ、扉の方を見て固まった。


 ……もしかして来たっすか? これからっすのに? 今からが本番っすのに来ちゃったっすか?


「……えらく楽しそうだなァツキ」


「……」


 ……んー来てるっすね……。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者

みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】 リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。 ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。 そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。 「君とは対等な友人だと思っていた」 素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。 【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】 * * * 2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!

処理中です...