不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

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14.食堂デビューっす! 

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「イーラさん! フレイ君おはようっす! ご飯行こっす!」


「あ、ツキさん。おはようございます。少し待って下さいね」


「……ん? え? ツキ君本当に一人で来たの?」


「はいっす!」


 フレイ君が目覚めてから三日が経ち、今日からフレイ君もこの傭兵団の仲間としてのお仕事を開始する。仕事を開始すると言ってもまずはこのアジトの紹介からだが……


 その前にまずは初めの腹ごしらえと食堂への案内からっすよね!


 昨日した約束通り、ニコニコと笑顔で医務室へとフレイ君を迎えに行き、少し青ざめているイーラさんに大丈夫かと体調を尋ねた後、手を振り俺とフレイ君は共に食堂への道を歩いた。医務室は一階で食堂は二階にあるため、階段を使っての移動だ。


「ここのご飯は美味しいっすし、量もあるっすから期待するっすよ~」


「そうなんですか? 確かに出された食事、みんな美味しかったです」


「そうっすよね! おかわり自由なんでいっぱい食べて下さいっすね!」


 今までフレイ君は医務室でイーラさんと一緒に別メニューで消化のいいご飯を食べていたため、今日が初めての食堂デビューだ。ここのご飯は元料理人であるおばちゃんおじちゃん達がみんなの栄養を考えながらも量多く、そして美味さを第一に朝、昼、晩とご飯を作ってくれている。だから自分の家にご飯が用意されている、又は自分で用意している仲間達以外は大体の時間にみんな食堂に集まってご飯を食べている。おかわりしたい時はカウンターに行けばおかわりをよそってくれるし、たまにおやつの時間帯に食堂か厨房に行くとおやつを恵んでくれる時もある。


「今度フレイ君もお菓子貰いに行こうっす!」


「はい。楽しみです」


「♪」


 朝から見るフレイ君の微笑みに心が癒されるのを感じる。そうして機嫌よく歩いて行くと二階の端、目的地たる食堂に到着した。


「あ! 着いたっすね、ここが食堂っすよ! ――おはようっす!!」


 フレイ君に説明しながら元気よく食堂の扉を開けた。……が、


 シーン

「あれ?」


 いつもならガヤガヤギャハギャハとうるさいはずの食堂が水を打ったかのようにシンと静まり返り、ピリピリとした緊張感に満ちていた。こんなことは珍しい。


「みんなどうしたんっすか?」


 きょろきょろと見回しながらもフレイ君と共に中へ入れば、部屋の奥の隅の方で身を縮こまらせているモージーズーを見つけた。


「あ、モージーズー! そんなところで何してるんすか? なんか今日静かっすね~」


「「「ギクッな、何でこっちくんだよ!! あっち行けあっち!」」」


「?」


 声を掛ければ三人とも大袈裟なほどに肩を跳ねさせた。それだけでは終わらずしっしっ! と必死の形相で俺に向かって手を払う三人。首を傾げながらも近づこうとすればすぐ近くでバリンッと何かが割れる音がした。


「「「「ビクッ!!」」」」


「?」


 その音に何だと思うも、その場にいる全員がビクつき、身体を震わせはじめる。モージーズー達に至っては顔を高速で横に振り出し、聞こえた音よりその首振りの速さの方に気を取られてしまう。なんだその速さは。


 ……これは……みんな怖がってるんっすかね? 何をそんなに怖がってるんっすかね?


「……ツキさん、ツキさん」


「ん? なんっすか?」


 首を傾げていると、後ろからフレイ君に服の袖を引かれた。


「あそこにラックさんがいますよ?」


「え?」


 フレイ君が指差す方を見てみると、食堂に入ってきた時には気付かなかったが、入ってすぐのテーブルの椅子にボスが座っていた。割れたコップを手にしてだ。


 ……なるほどっす! さっきの割れた音はボスがコップを割っちゃった音だったんっすね。これも珍しいっすね!


 普段あまり失敗をしないボスがコップを割ってしまったという事実にちょっと喜んでしまう。そして、ボスならばこの静かな状況が何なのかを教えてくれるかもしれないと思いボスの元へ。


「ボスおはようっす! レト兄もおはようっす! さっきぶりっすね!」


「あの、おはようございます」


「…………」


「……あ、ああおはよう」


「?」


 ボスは下を向いたまま黙り、その隣にいるレト兄は顔を引き攣らせている。いつもならすぐにボスからも「おはよう」と返ってくるはずなのに今日は返ってこない。心なしかボスの近くの空気が冷たい。


「……ボス?」


 これは近づいたのは失敗だったかもしれない。


「……お前、なにそいつと飯食いにきてんだよ」


 低音で、下から睨みつけてくるように聞いてくるボスに首を傾げた。


「? 今日からフレイ君、お仕事開始っすからまず食堂の案内とご飯食べようと思って来たんっすけど……なんかダメだったっすか?」


 ちゃんと許可とったっすよね?


「別にダメじゃねぇけど……」


「じゃあなんで怒ってるんっすか?」


「……別に怒ってねぇよ。…………けどなんで俺を誘いに来なかったんだよ」


「……なるほど!」


 少し考えた末、ボスの言いたいことがわかった。いつも朝ご飯を食べに行く時、俺はボスの部屋に行って、ボスを誘ってから一緒に食堂に来ているのだ。だけど、今日はフレイ君と一緒に行くのでレト兄にボスのことを任せていたのだが……でもそうか……


「ボスもフレイ君と一緒にご飯食べたかったんっすね」


 ボス、フレイ君のことあんまり好きじゃないのかと思って誘わなかったんっすけど本当はお喋りしたかったんっすかね。


「……っ」


 ガタッと辺りからテーブルの音が鳴る。見てみればレト兄を含めみんなテーブルに肘をつき頭を抱えていた。


 あれ?


「……っ何がどうなってそうなった! 馬鹿かてめぇはっ」


「照れなくてもいいんっすよボス」


 俺は優しい目をボスへと向けた。人は誰だって間違いを起こすものだ。もしかしてボスはフレイ君に対し、初めの態度が悪かったからどう接すればいいのか悩んでいたのかもしれない。この三日間何か言いたげによく俺を見てきていたし。


 ……ハッ! もしかしてあの視線はボスが俺にフレイ君との橋渡しを望んでる視線だったんすかね? なのにそんなことにも気付かずボスを無視して食堂に来ちゃったすからそれでボスは怒って……なるほどっす! これっすね!


「……それは悪いことしちゃったっすね……。ごめんっすボス」


「~~っなにがだ! そのガキはどうでもいいんだよ! 俺が言いたいのはそれじゃねぇよ! 勝手に納得すんな!」


「大丈夫っす。俺はわかってるっすよ」


「~~~~!」


 ボスがぷるぷると下を向いて震えてしまう。そんな照れ隠しを、俺は生暖かい目で見守った。すると、隣から大きなお腹の鳴る音が聞こえた。


 きゅるるるる


「……す、すみません///」


「! 可愛いっす! そうっすよね、お腹空いたっすよね! ご飯取りに行こうっす!」


「は、はいっ」


 照れるフレイ君の手を引き、俺達は料理を受け取るためカウンターへと向かった。


「…………」


「あの二人大物だな……」



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