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「な、な、何故ここにいるのじゃ!!」


「きょ、今日は見合いの日ではないはず!!」


「どうやってここに!?」


「「「!?」」」


 このスターチス邸は不届者が侵入しないよう十全な警備体制と様々な防犯装置が施されている。それなのに使用人達に混ざりニコニコと微笑んでそこにいるアリスに皆、背筋が凍る。


「これでもぉ~私鍛えていますからぁ~頑張って侵入しちゃいましたぁ~!」


 「ごめんなさい♪」と言ってアリスはその場にいる者達の警戒の目を気にすることもなくテヘペロ♪と笑う。


「…侵入など何故」


 イアンは城へと泊まり込みの仕事のため今日屋敷には帰ってこない。ということはアリスは自分達に用があってここまで来たはず。まさかニコニコ笑っているように見えて本当はとても怒っていたのだろうか?それで今日、自分達に仕返しをするためにこの場に来たのか?いや、だがアリス自身も使用人一同が自分アリスにかかって来るのを避けたり利用したり、反撃したりして楽しそうにしていた。ならば一体何しに…


「だってぇそろそろ認めてくれたかなぁ~と思ってぇ」


「……認める?」


「はい~今までの全部ぅ私がイアン様に相応しいか見極めるためのものだったんですよねぇ~」


「……ああそうじゃ」


「……ええそうね」


「……ああ、そうだな」


「「「…………」」」


 アリスの言葉に執事長、メイド長、護衛長以下略達がスッと目を逸らす。


 確かに初めはアリスの見極めのためだったが後半はただの意地である。


「ですよねぇ~。それでぇ~私は合格ですかぁ?」


「「「「「…………」」」」」


 アリスの言葉にその場にいる者達は口を閉ざす。合格か不合格かで言えばもちろん合格だ。…認めなければならない。悔しいがここらが潮時か…。


「……合格じゃ」


「本当ですかぁ!やったぁ~!」


「「「「「………」」」」」


 無邪気に喜ぶアリスに使用人一同内心複雑に思う。アリスは本当に怒っていないのだろうか?見極めるためとは言え今から考えれば結構色々なことをやってしまったように思う。


 飲食物は全て激苦、甘、辛はもちろんのこと、最初は庭に仕掛けた躓く程度だった穴(イアンに抱きつくきっかけにされた)が大きな落とし穴になり、そこにアリスを突き落とそうとしたし(反対に避けられて落とされた)、夜道を襲ってみたり(一撃で返り討ちにされた)、メイド達総出で掃除道具を投げつけたり(全部避けられた)と他にも色々とやってしまったように思う。


「「「「「……?」」」」」……コテン?


「………」


 あれ?いつからこんな過激になっていったっけ?と悩む使用人一同に執事見習いは冷たい視線を送る。


「…ッコホンそれで貴方様は私共に言いたいことなどないのですか?」


 執事見習いの冷たい視線に執事長は一つ咳払いをした後、姿勢を正しアリスに尋ねる。思い返せば結構なことをアリスにしていたのだ。文句の1つもあるだろう。


 だがそこに一切の後悔はない。これで叱られようが恨まれようがイアンに報告され首を切られることになろうが執事長にとっては構わなかった。…いや、流石に首にされてしまうと堂々とイアンの側にいることが出来なくなってしまうので困る。内心ヒヤヒヤとしながらもアリスの言葉を待つ。



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