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しおりを挟む(((((…………)))))
(……執事長)
(……なんじゃ?)
(今、聖女様こっちを見ましたよね?)
(…気のせいじゃろ)
(…そうですか?)
「イアン様ぁ~ここにあるクッキー全部食べてもいいですかぁ~?」
(((((何!?)))))
「ぬ?そんなに美味かったのか?」
「はい~とっても~!これこの屋敷の人達が作ってくれたんですよね~?」
そう言ってまたチラリとこちらを見るアリス。
(((((…………)))))
(…あの……やっぱり普通に私達の存在聖女様にバレてません?)
(おいおい、何言ってんだよ。そんなわけないだろう。どれだけ距離が離れてると思ってんだよ)
(そうですよ。それに私達はイアン様のために日々努力を重ねています。あんな小娘が私達の存在に気付くことなどあり得ません)
(ですが……)
「ああそうだ。私のためにいつも手作りで作ってくれているのだ。他所の菓子も美味いが我が屋敷の者達が作る料理は全て絶品である」
「ふふ、そんなんですね~。このクッキーと紅茶、本当にすぅっごく美味しいですよぉ~。イアン様がとーっても愛されているっていうのが伝わってくる味ですぅ~♪」パク
そう言ってアリスはクッキーを食べつつまたチラリと見る。
(…あの、やっぱり完全にバレてますって。それに嫌がらせされてるってわかっててのあのセリフですよ?理由も含めて全部バレてそうなんですけど?)
(たわけが!黙らぬか!)
執事長も内心アリスに場所と目的がバレていることに焦る。流石は聖女。侮れぬ。
「そ、そうか?」
「そうですよぉ~!」
イアンはどこか自慢げに嬉しそうに呟く。その姿にアリスは優しく微笑みつつ、今度こそニコニコと笑いながら執事長達の方を見ながら言葉を発した
「…本当に愛されていますね~。何だか久しぶりに楽しくなって来ちゃいますよぉ。ーーこんなものでは私は負けませんよ♪」ボソ
(((((ブルッ⁉︎))))))
その場にいた使用人達に寒気が走る。アリスはニコニコと笑っているはずなのにどこかその雰囲気が挑発的だ。
(((((…………)))))
「む?何か言ったか?」
「いいえ~♪」
ニコニコと笑うアリスにイアンは不思議に思うものの「そうか」とその話を終わらせ、それから1時間後にアリスは「ではまた~」と言って帰っていった。
ーー使用人部屋(休憩室)
「……あの執事長?皆さん?」
アリスが去った後、室内に戻った皆の様子に見習い執事が戸惑い気味に声をかける。
アリスが言った「負けませんよ」と言う言葉。あの言葉はイアンには聞こえていなかったようだが、耳を強化しアリス達の会話を聞き逃さまいとしていた使用人達の耳にはきちんと届いていた。そこから執事長、他使用人達が皆下を向いたまま無言なのである。
「……あの…」
「………ゃ」
「……執事長?…っ?」
何事かを呟いた執事長の言葉に耳を澄ませようとした執事見習いは気づいた。執事長…いや、その場にいる全員の口元が弧を描いていることに。
「……上等じゃ」
「いいね~久々にたぎるじゃねぇか」
「ええ、ええ、本当に」
「「「フフフ…」」」
暗い笑みを浮かべつつ「フフフ」と笑い出す上司達に執事見習いは嫌な予感に顔が引き攣る。
「…あの皆さ…」
「「「「「っあの女!!何が負けないだぁ!!絶対目にもの見せてやる!!」」」」」
「………」
執事見習いの言葉を遮り、目に闘志を宿しながらそう叫ぶ執事長達に執事見習いは悟った。これは絶対に面倒臭いことになると…。
そうしてイアンへの愛を拗ねらせた者達は暴走を始めた。
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