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「イアン様ぁ~こんにちわぁ~。今日も美味しそうなお菓子がたくさんありますね~食べてもいいですかぁ?」


 今日はお見合い○回目の日であり、記念すべき第1回アリスの本性を暴け!の日だ。天気は晴天、絶好の嫌がらせ日和に使用人一同気合いが入る。


「好きにするがよい」


「わぁ~ありがとうございますぅ~!」


(……よし、早く食え…食うのだ!)


(……執事長仕事して下さいよ)


(そんなこと後でじゃ!)


(貴方は黙っていなさい!)


(お前は黙っていろ!)


(((コクコク!!)))


(………はぁぁ)


 イアンに見えないよう、離れた柱の影から執事長の他、メイド長や護衛長など他にも数名気配を消しつつアリス達の様子を伺っていた。いくら距離があろうともこんな大勢で1箇所に隠れていれば普通バレるのではないかという疑問もあるだろうがスターチス邸に仕える者達はいついかなる時でも尊敬すべき主人の盾となり矛となるために訓練を積んでいる。気配を消して対象の様子を監視するなどお手のものである。


 皆、目と耳に神経を集中させつつ、イアンとアリスの会話に耳を傾け、アリスの対応を見る。


「それでは頂きま~すぅ!」パクッ


(よし!食った!)


(((((よし!)))))


「モグモグ…?」


「うむ?どうかしたのか?」


「……いえ、なんでもないですよ~!」パクッ


 アリスは一瞬きょとんとしたような顔になったもののすぐにいつもの笑顔に戻り、美味しそうに二口目を食べる。


(何!?あの激まずクッキーを二口目だと!?何故吹きださない!!)


((((そんな馬鹿な!!))))


(……ちょっと待ってください。あのクッキーそんなに不味いんですか?)


(ここにいる皆が吹き出し吐き出してしまうほどに不味い)


((((コクコク))))


(ご令嬢になんて物食わせてんですか?あんたらアホか?何考えてんですか?)


(((((だって…やるなら妥協したくなくて)))))キュルン


(クッキーの不味さに妥協もクソもあるかっ)


 目を潤ませ可愛子ぶりながら自分達は悪くないと言う奴らに執事見習いはため息が押し殺せない。


(あ!おい!紅茶を飲んだぞ!)


(何!?)


((((!!))))


「?」


「?どうしたのだ?」


「……いえ、何でもないですぅ~!」パクッモグモグ…コクコク


(何!?あの激苦紅茶(ぬるま湯)を顔も変えずに飲んだだと!!何故吹き出さない!!)


((((そんな馬鹿な!!しかも3口目だと!?))))


(あんたらあの人一応貴族で聖女だぞ!?)


 相手は元平民と言えども今は貴族。そして聖女として市民に大人気の人物だ。下手なことをすれば自分達の首が飛ぶことくらいわからないのか?しかもイアンにもしバレでもしたら大目玉を食らうことにもなる。そんな疑問に執事見習いはつい叫んでしまう。


 …と、その時一瞬アリスの目がこちらを向いた。


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