上 下
9 / 31

第8話

しおりを挟む


 この国を救った聖女であるアリス・ロードの好きな人、それがこの国で1番醜いとされているイアン・スターチス。その言葉を聞き皆が唖然とし、その後に起こったのは絶叫の嵐である。


「な、な、な、冗談だろ!!!」


「あらあらあらあら、まあまあまあまあ」


「………。」


 サランは叫び、アリアは珍しく驚愕を表にし、国王に至っては言葉の意味を理解できず、その言葉に裏があるのかと考えている。イアン本人は突然出された名前に放心状態であり、他の参加者達も各々でリアクションをとっておりカオスである。


「ムッ!冗談じゃないですよぉ~。」


「あ、あの宰相だぞ!裏で何をしているかわからない極悪人の!」


「サラン!貴様は何を根拠にアイツを極悪人などと申しておるのだ。」


「ち、父上。ですが噂で…。」


「まさかそのようなくだらない噂に躍らされておるのではあるまいな?奴の身が潔白であることなど等に調べがついておるわ!」


「そうですよぉ~サラン様めっ!」


「「「………」」」


 大勢の前でこの国の宰相を極悪人と言ってしまったサランは国王から叱責を受けるが、アリスの気の抜ける怒り方に気力が抜け、変な空気が漂う。


コホン

「で、ですがアリスさん。どうしてイアン宰相様のことが好きなんですか?」


「えぇ~///」


「それは私も聞きたいな。なぜうちの宰相を?」


 アリアも国王もアリスを見極めようと目つきを鋭くする。


「私ぃ~昔から格好いい人よりぃ~ちょっと不細工な人の方がキュンッ!ってきちゃうんですぅ。」


「「「「「………。」」」」」


「イアン様を初めて見たのは5年前の新年の挨拶の時だったんですけどぉ、一目惚れしちゃった!きゃっ///」


「「「「「………。」」」」」


「それからぁ、宰相様のことを色々と調べてぇ~もっともっと好きになりましたぁ~」


「「「「「………。」」」」」


「イアン宰相様わぁ、確かに顔は悪いかもしれませんけどぉ、努力家でぇ~何事にも一生懸命でぇ~噂とかいろいろな悪口を言われたとしてもすっごく立派に国王様の隣に立って国を守っていることが何よりも素晴らしくてぇ~知れば知るほど好きになっちゃいましたぁ~。…恥ずかしいぃ~///」


そうアリスは微笑みながら目を輝かせ、両手を頬に置いてくねくね身悶えている。


「「「「「………」」」」」


「そ、そんなぁ…」


「あらあら、まあまあ!」


「ふむ。」


 アリスの言葉に嘘があるように思えずサランはショックを受け、アリアや国王はアリスを見直している。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?

ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

聖女ですが、婚約破棄を言い渡しました

kanon
恋愛
「エルドレッド様。私この指輪が欲しいですぅ」 「じゃあこれにしよう、大好きなロロンとの一周年記念だからね」 なんだか、見知った声が聞こえてくるなと思った。 たくさんの指輪が棚に並べられている街一番の宝石店。 私の背丈を優に超す棚の向こうで、その二人は話しているようだった。 偶然、エルドレッドという名前には馴染みがある。 私の婚約者もちょうどその名前だったのだ……

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

不憫なままではいられない、聖女候補になったのでとりあえずがんばります!

吉野屋
恋愛
 母が亡くなり、伯父に厄介者扱いされた挙句、従兄弟のせいで池に落ちて死にかけたが、  潜在していた加護の力が目覚め、神殿の池に引き寄せられた。  美貌の大神官に池から救われ、聖女候補として生活する事になる。  母の天然加減を引き継いだ主人公の新しい人生の物語。  (完結済み。皆様、いつも読んでいただいてありがとうございます。とても励みになります)  

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

処理中です...