私、あなた達の味方ではないから。

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「ミルー様…。ずっと前から好きだった。必ず幸せにするから俺と一緒に逃げて欲しい」


「…そうね」


 ジージルの言葉に鼓動が早くなる。ジージルの言葉が本気だと分かるからこそ私もずっと心にしまっておいた気持ちを打ち明ける。


「…私もずっとジージルの事が好きだったわ。だからこそあなた以外の誰と結婚してもみんな同じだし逃げても仕方がないと思っていたわ」


「じゃあ!」


「…でもダメよ」


 ジージルの言葉は本当に嬉しい。だけどすぐに頷くことはできない。


「この家にはまだお姉様がいるもの。私がここから逃げてしまえばその怒りがお姉様に向くわ。そうなればお姉様がどうなるかわからない」


 流石に姉を見捨てて自分だけ両親から逃げる選択なんてできるはずがない。


「…まぁそう言われることはわかっていました。だからこそミルー様が逃げないと言うのなら俺もミルー様の意思を尊重します」


「…ありがとう」


 苦笑しつつも頷いてくれるジージルに少し安心する。


「だけどそれはミルー様が結婚しなければの話です。もしあのナルシスト野郎と結婚することになるような事があれば俺は迷わずミルー様を攫いますよ」


「ぶっ!な、なにそれ?」


「当たり前でしょう?さっきの言葉もありますし、せっかく俺の気持ちにミルー様が応えてくれたんです。もう誰にも渡すつもりはありませんし他の奴に取られるだなんて我慢なりませんからね」


「そ、そう///」


 …慣れないからやめて欲しいわ。


「…ミルー様もしかして照れていますか?」


「なっ!あ、当たり前でしょう…」


「…そんなに可愛く真っ赤な顔で言わないでください。すぐにでも攫いたくなってしまうでしょう」


「はぁ?……あなた本当にジージル?偽物ではないわよね?」


「…どうしてそこで怪しむ顔になるんですか。普通照れるところでしょう?」


「急に態度を変えるあなたが悪いのよ」


「…まぁそれは謝ります。ミルー様に対して余裕がなかったんですよ」


「…そう」


 余裕がなかった?いつも澄ました顔をしていたくせに?


「……何ですかその目は。まぁいいです。とりあえず明後日にカーバル様の様子を見るんですよね?」


「ええ。そのつもりよ」


「では俺も近くにいますね。カーバル様がミルー様に余計なことをしないか見張るためにも」


「わ、わかったわ」


 …だから慣れないからやめてって。


「…ミルー様」


「…何よ」


ぶっきらぼうに返事を返しつつジージルを見ると真剣な目をして私を見ていた。


「本当にルルー様の問題が片付いたら俺と一緒に逃げてくれますか?」


「…ええ」


「そうですか」


 私の言葉に安心したように微笑むジージルに何だか胸が締め付けられるような感覚がする。早くあの両親の元から解放されてジージルと一緒に過ごしたい。そのためにもどうにかして早く姉をここからーー


「ーーミルー。ジージル。ごめんなさい迷惑をかけてしまって」


「!?お姉様!!」「!?ルルー様」


 急に自分達以外の声が聞こえたことに驚く。そして声がした方を振り向けばそこには申し訳なさそうな表情を浮かべた姉がいた。


「…お姉様どうしてここに」


「ごめんなさいミルー。窓からあなたの姿が見えたの。何か思い詰めているようだったから気になってしまって後をつけたのよ」


「そうだったの…」


 流石姉。全く気づかなかったわ…。


「それで悪いのだけれど話は全て聞かせてもらったわ」


「「………」」


「まずはミルー、ジージル、2人ともおめでとう。やっと想いが通じ合えたのね」


「なっ!お、お姉様!?や、やっとってどう言うことよ!べ、別に私は!」


 突拍子のない姉の言葉につい動揺してしまう。いきなり何を言い出すんだこの姉はっ!!


「あら?隠さなくていいわよ。幼い頃からミルーはジージルしか見ていなかったじゃない」


「~~///」


「…ルルー様」


「ジージルもいつミルーに想いを伝えるのかヤキモキさせられていたけれどやっとミルーに伝えられたようでよかったわ。…でも2人ともごめんなさいね。私のせいでここから逃げられないのよね…」


「…別にお姉様のせいじゃないわ」


「そうですよ」


「…ありがとう。でも2人とも逃げる準備はしていて」


「「え?」」


「さっきの話を聞いてカーバル様が私との婚約を破棄してミルーと婚約を結ぼうとしていることはわかったわ。予想だけれど次に会ったときに私は婚約破棄されるでしょう。そうなればお父様達はすぐにでも私を追い出すはずよ」


「「………」」


 否定はできない。多分あの両親ならその日のうちに姉を外に放り出すくらいはするだろう。


「あなた達もその時に2人一緒に逃げたらいいのよ」


「待って2人一緒に?お姉様は一緒に逃げないの?」


「私は別で行くわ。流石に想いが通じ合えた同士の中に私が割って入るのはダメだと思うの。だって今までミルーはジージルは私が好きだって勘違いしていたでしょう?」


「え?そうなんですか?」


「………」


「そんな中でミルー達について行けば何だかややこしいことになりそうじゃない?」


「「………」」


 確かに…



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