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しおりを挟む私の名前はミルー。私の曽祖父の曽祖父の曽祖父は土属性1つで平民から貴族にまで成り上がった実力者だ。何でもその時代争い事が多かったらしく、曽祖父の曽祖父の…もう長いから初代で…はこの国を守るため豊富な魔力とその実力をもって敵と戦い、また土魔法で城壁を作り上げてこの国に入り込もうとする敵達を退けるなどしてこの国を守り抜いたらしい。
そして、その功績から貴族の爵位を頂き、今のザルコーノ子爵家となった。そのため、私の一族はそんな初代を尊敬している。だから私達ザルコーノ子爵家の者達は土属性を尊び、土属性を持っていることこそが至高であると考え私達一族が他から婿や嫁をとる時には相手の家柄より土属性を持っているか持っていないかそして魔力量は多いかで決めていた。だが、それは一昔前の話であり今は時代と共に土属性こそ至高!と考える一族の者達はほとんどいない。私の祖父母も土属性を持ってはいるけれどそこまでの信仰心はない。それなのに私の両親は何故か土属性を持っていない者は一族の人間ではないという偏見まみれの持ち主だ。そしてそんな2人の間に生まれた待望の第一子である姉ルルーは両親の色に全く似ずライムグリーン色の髪に新緑を思わせるような瞳の色をしている。
この世界では自分が持っている魔法の属性によって髪や瞳の色が左右される。私の両親も色の濃さに違いはあれど茶系の色彩で、私もよく似た色合いだ。
だからこそ両親達の動揺はすごかった(産まれていないから知らないけれど)。土属性至高主義の自分達のもとに土属性ではなく風属性を持った姉が生まれたのだ。父は母の浮気を疑い、一時は一家離散の危機にまで陥ったらしい。だが、その2年後に私が生まれたことで両親の仲は修復された。でも両親にとって自分達の間に生まれた子どもが土属性を持っていなかったことに耐えられなかったらしく、体裁もあったことから手元におき育てはしても姉を虐げることで日々の鬱憤を晴らしているようで姉はいつも見窄らしい格好で下女の真似事のようなことをさせられている。
そんな両親のもとで育った私も当初は姉のことを馬鹿にし、見下していた。だけど今から10年前に仲良くしていた令嬢から言われた言葉によって目が覚めた。
『ミルー様のお姉様って風属性なのですよね?』
『ええ!そうよ!だから役立たずなの!』
『どうして?』
『だって私達土属性は至高でとても強い選ばれた存在なのにお姉様はだけは違って風属性だったからよ!それに私達の誰にも似ていないし、色だって違うからお姉様は仲間はずれで残念な出来損ないなの!』
『でも、土って風には弱いですし、ありふれた属性ですよね?それなのにどうしてそんなにも威張るんですか?変なの。それに色も似てなくて当たり前ではありませんか?だって属性によってそんなのは作用されるんですから』
『……え?』
令嬢の言葉に固まる。
…土って風に弱いの?それに変って私が?似てなくて当たり前?作用されるって何?そんな疑問が次々と頭を埋め尽くす。
『それにミルー様のお姉様の髪色も瞳の色もとても綺麗でミルー様の色彩よりそっちの方が良くありません?』
『…………』
そのご令嬢はとても純粋に思ったことを言う子だった。その時も悪気は一切なく本当に不思議そうに首を傾げながら私を見ていた。だからこそ私の心に容赦なくその言葉達が突き刺さった。反論しようにも私達の話を聞いていたその令嬢の親が慌てて駆け寄ってきてその子を連れてどこかに行ってしまった。
『……』
幼かった私にはその光景をポカンとして見ていることしかできなかった。でも確かにその子とその子の親の色合いは全く別の色をしていた。
あの令嬢が言っていた言葉の意味が正しいのか知りたくて帰りの馬車の中、父に尋ねるも鼻で笑って『教育がなっていないな』とその子を馬鹿にするだけだった。それでもあの令嬢が嘘を言っていたようには思えず家に帰った私は苦手で見ることすら嫌いだった本を一生懸命読み漁りあの令嬢が言っていた言葉が真実だと知った。
土属性は風属性に弱いし、土属性なんて別に特別でもなんでもないありふれた属性。それに私達の一族は初代と二代目を除き別に土属性だからと言って秀でているわけではないことを知った。初代は上級より上の特級や超級魔法を自由自在に扱うことができた人物であったため、平民から貴族に成り上がれたのだ。だけど今の私達…両親も祖父母もその前もみんな詠唱ありの中級程度の魔法しか使えない。私なんかまだ初級すら危うい状態だ。それなのにどうして父はあれ程までに威張れるのだろう?そんな疑問が生じた。
それに、属性は遺伝的な要素もあるが絶対ではなく70%の確率で親から受け継がれるだけで普通に別属性の子どもが生まれることもあることを知った。別に姉がザルコーノ家に生まれたからと言って両親と同じ色合いではなく緑色だったのも何もおかしくないのだ。…今まで父達から教えられてきた常識がガラガラと崩れ去る。こんなこと私より長く生きている父達が知らないはずがない。それなのに父達は自分達は選ばれた存在であり姉はそんな自分達の元に生まれてしまった失敗作だと言って姉の存在を認めず、虐げる。そして私を必要以上に持ち上げる。
だが姉は天才だ。家庭教師もつけてもらえない姉は私よりも劣っているはずなのに1教えられれば10は理解することができる人だった。両親は姉のことを全く知らずに馬鹿だ無能だの囃し立てているが私がした努力を軽々と超えていくのが姉である。そんな人と比べられ私の方が天才だと毎度お決まりの定型文で褒められ持て囃されても惨めになるだけ。そんなこともわからず両親はただただ私を誉め続ける。
「……はぁぁ」
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