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記録2 ヴァンパイアさんと次の目的地について
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超大陸ファンデラの南の大部分を占める分陸帯『ドリグラン』、その一角のダヌシャ広盆地の東の川の更に枝分かれした小川の一つの側。小川と言っても他と比べての話で幅は3mは超えていますが、兎角誰も入らない様な木々の深い場所で、人間でもエルフでもなく、血を吸い生きるヴァンピールと主張する男性と出会いました。
「何か弁解はありますか?」
「申し訳ございませんでした…」
しかしその出会い方は最悪な物でした。その男は私に姿を見せる事無く拘束し、目も隠した上で首筋から血を吸い上げ気絶させたのです。『クイン』と名乗った当の彼は、眉間に皺を寄せた私の前で地べたにきっかりと手を突いた綺麗な土下座をしていました。
「久方振りに上質で美味な血だったのと、貴女の総血液量が同じ体躯の方々より何分少ないらしく感覚を誤りました」
気絶してから何時間経っているのか分かりませんでしたが、この時には体調は回復していました。彼が名乗って、私が名乗って、そして彼が私の旅に同行させてくれと言って、私はそれに「はい」と返しました。その直後の数秒は頬が熱くなりましたが、正気になってみれば沸々と静かに怒りが湧き上がり、いつ以来かも忘れた怒った顔で立ち上がり「何か弁解はありますか?」と問い質していたのです。
「口がよく回りますね」
そう言いながらも私の目線は放られた掛け布が土に汚れていたのを見ていました。そのままチラリと見る場所を変えると私の荷物は枕の側に置いてあり、頭を垂れる彼の向こうへ目線を逸せば野営地の中心点の切り株が、その上にクインが読んでいたらしい褪せた小説が置いてあるのも見えました。横になっていた時見えなかった切り株の裏には既に焦茶色の手提げ鞄が置いてあり、私の答えがどうであれここを離れる気だった様でした。それにしてもベルトで閉じられた鞄の大きな事、私なら身を屈めれば容易く入ってしまう程に。
「…私ってそんなに血が少ないの?」
クインが先に謝ったのと今理由を質したので二回謝罪を受けた事になりました。彼の言葉に耳を傾けている最中に嵐が去るよりも早く怒りが冷めて行き、彼の言動の前半は後回しとして、後半の言葉が気になりました。そしてクインは額を地面に擦り付けたまま答えました。
「食料である前に友人ですので、死なれたら夢見が悪いのです。故に気が混濁するまでは飲みますがその程度に留めます。人も三者三様と言いますので都度調整しますが、長年の感覚が狂った事は直近千何百年の間でありませんでした。そして飲んだ量からしても200㎖程度。そして気を失うには血液量の三割が必要ですので、貴女の持っている血液量は同じ体格の者に対して20%程少ないかと」
その少し長い説明は罪悪感の表れだったのでしょう、それにずっと顔を見せずに話していて「言いすぎたかな」と思えてきました。
「分かりました、頭を上げてください」
私は腕を組んでため息を一つ、そうする間にクインが頭をさっと上げていて前髪に砂がついているのが見えました。私は彼の汚れた髪に相当する自分の髪の毛の箇所を指先でちょいちょいと払いました。それを見て、クインは大雑把に髪をわしゃわしゃとかき乱して付いた砂を払いました。
「今までの所作に対して随分と豪快ですね」
私は前髪がボサボサになった彼のキョトンとした顔に言いました。クインは私の言葉を受け取ると、顎を少し突き出し細めた目で長い前髪を整えて言いました。
「無礼を働いた身ですので…。元々貴族らしい振る舞いの稽古は苦手でしたから今のは見なかった事に」
私はクインのその言葉で、改めて彼が数千年生きているんだと実感しました。歴史によると、貴族が存在していたのは大陸地図が完成するずっと前です。それなのに彼の着ている黒い服は、全て上質な布と丈夫な縫い方で仕上げられている様に見えましたし、ほつれた様子もありません。それは現代では失われてしまった技術でした。
胸側でチェーンで繋がれたマント、その下の黒いコート、少し見える白いシャツ、黒のタイトストレートなズボン、黒い革靴。それらが身長2mを超えている男性が着こなしているのです。ただ、今は所々砂で汚れてしまっていました。
「まあいいでしょう、もう気にしていませんよ。それより、なぜ私の旅に同行したいのですか?」
忙しかった私の感情が凪いで、やっと一番聞きたい事を口にできました。背丈が大きな癖してほっとした様な柔らかい表情を見せて、彼は言いました。
「それは、私が神や運命を信仰しているからです。神が定めた運命と出会いを、私は大事にしたいのです。それと、単純にこの周辺に居着き過ぎたと思ったからです。近場の村で噂が広まってしまいまして、人があまり立ち入らず潮時かと思ったのです」
私は二つの理由を聞いて思いました。(神だって?)と。この世界には、神龍種と呼ばれる超常的な生き物達がいます。彼らは神の文字を冠していますが、それは彼らの持つ不思議な力を由来にして付けられた名前であり、実際に神などではありませんでした。
ですが私は別の理由で神と言う者に覚えがありました。それは70年前の旅立ちの更に一年前の事です。私がまだ自由ではなかった時に聞こえて来た義父の言葉でした。
『そうか、理解した。本物の、神か』
私は神と言う者と縁がありました。私が自由に大陸を歩きまわる事ができているのも、その神様のお陰なのです。
十中八九、彼が信じて居る神は別物だとは思いましたが、運命は私もあると信じている物でした。ですから、私も彼との出会いを大切にしようと思いました。ですがそれを直接言うつもりは有りません。胸に秘めておこうと決めていましたし、それより言いたい事が山ほどあったのです。
「ああ、森に何か出るって貴方のことだったんですか?」
クインはキリッとした顔から一転、瞼が下がって私から目線を少し逸らしました。そして少し俯いて呟いていました。
「何だよ『何か』って…」
姿を隠していたのだから当然だと思いましたが、せめてモンスターであって欲しかったのでしょうか。そこは私には分からないですし、聞こえないふりをして別の疑問を問い詰めました。
「あと、何で他人が気絶するまで血を飲む必要があるんですか?」
しょぼくれたクインは少しだけ目線を上げてそれに答えました。
「人が血を抜かれて気絶するラインは凡そ総量の三割です。その時々での違いや個人差がありますが健康状態や反応で分かります」
私はそう言うクインに見つめられている事を知った上で私自身に指先を向けて、瞼を落とし怪訝な顔をして見せました。彼はばつが悪そうな様子で言葉が詰まっていましたが、すぐに続きを話しました。
「…血を抜かれ気絶する寸前で止める事で意識が朦朧とし、助かりたい一心から私の正体を知る前に多くの者がその場から離れようと行動します。無論無理に動けば結局気絶します。が、死にはしません。牙で付けた首の傷も目覚め起き上がる時には治っていますし、夢の様な物として片付けられるのです」
私はそう聞いて無意識に噛まれた首筋に手を当てていました。もう手触りでは全く傷がない様に思いましたし、違和感さえ無かったことに気付きました。
「私の、と言うか父や祖父などこの体質を持つ者の体液には人の傷を癒す効果があるらしく、噛んだ時に唾液が体内に入り治癒が早まるのです」
私は「へぇー…」と目を見開いたままぼうっとしていました。そして一つ言いました。
「そんなに誤魔化せるものですか?」
クインはそう質問した私に、先の言葉に付け加える様に答えてくれました。
「こうした食事の作法は父から受け継ぎました。そして父はそのまた父、私の祖父から受け継いでいます。一族が生まれて血を吸い始めてとうに万年は超えていますから、程なくして市井にてある存在が噂され始めました。それは『血を吸う怪物』です。結局は私達の事ですが、言葉を囁やけど姿だけは見せず、大事になる前に大陸各地をを転々とした為、今や全土に同じ伝承が残っています。殊ここ周辺でも名前は無くてもそう言った何かが居ると噂があったのでしょう」
彼は長くも最もらしい答えを教えてくれました。今まで私が訪れた数十か百何十の村々にもその様な噂や言い伝えがあったのかは分かりませんが、正確な知見を得る事が難しく記録も失いやすいこの世界の記録媒体ではそれだけ大雑把な伝承でも残っている方が奇跡みたいな物でした。そして不明な相手、しかも人類の言語を操る相手ともなれば名のある狩人が調査をする事が一般的です。辺鄙なギリーヌ住村にはそんな実力者は居ませんから、手を出さないが主流になるのは当然でした。
「生まれた村でも旅の中でも聞いたことありませんよ。ですが一応真実として覚えておきましょう。それで最後に。一体『ヴァンピール』とはどこから出て来た名前なんです?」
クインからつらつらと説明を受けていれば察しはついていましたが、私は改めて最後の質問を投げかけました。クインは少し微笑んで答えました。
「先に言った中に『怪物』とあったでしょう?ヴァンピールとは、その中でも人の姿をしていると考えられた存在の一つです。しかし私が人前に出てもエルフとして見られる様に、それはそれは人と掛け離れた姿を想像されていた様です」
そう言うクインの表情は言うにつれてトホホと言った様に落ち込んでいきました。
「他人が付けた名前使うんだ…」
私は小さな声でそう言っていました。同時に(先に使っていた名前があるだろうに)とも思いましたが、直後のクインの発言でそれは私の見当違いだと知りました。
「はい。元々私の家系にのみ、しかも長男だけに現れた性質ですので、単に変異種の一つと考えていたのです。故に自身をエルフと疑わず、それ以外に考えませんでした」
私は(やっぱり)と思いました。一つ、彼は本来私と同じエルフであると。もう一つ、私とはまた違う理由でエルフから逸脱していると。彼は話し続けました。
「しかし私は何でも良いから決まった名が欲しかったのです。呼ばれた名前は『ヴァンピール』の他に、『ストリゴイ』、『ヴラード』、『ウルリスモ』。『チュパカブラ』『ヤラマヤー』『ニャリュシュ』など様々な中、一番実態に近いのが私の選んだ名というだけです」
私は「へぇー…」と再び開いた口から声を漏らしていました。
「聞きたい事はこれで最後でしたか?」
彼はまた指を揃えた手を胸に当てて頭を下げて言いました。私は思った以上に様々な事を知ってそれらを理解しようとしていましたが、結局飲み込めたものは半分くらいだったと思います。それは私に必要な物だけを覚える為であり、少々思いついた事を言い出そうとしていたからです。
「…大方の理解は出来ました。それと、最後に伺っても良いですか?これからの貴方の食糧について」
私は最後の気になっていた事をクインに聞きました。何千年も生きて、各地を回っているなら、移動中の食糧、彼にとっては人の血の確保はどうしているのか。彼は先の神の話というインパクトのある話題でこの事を誤魔化そうとしていました。その証拠にクインの表情から堂々とした気概が消えていきました。そして申し訳なさそうに言いました。
「そこは…貴女の血を頂こうかと…十日に一度で充分ですので…。もし抵抗があるなら通常の食事でも持ち堪える事は可能です」
元々低く下げていた頭をさらにぺこぺこと何度も上げ下げしながら、彼はそう頼んで来ました。
「持ち堪えるという事は、しれでは限度があるのですね?」
私の問いにクインは「はい」とだけ答えました。どう言う理屈かを言う事はありませんでしたが、もし血を飲まずにいられるなら彼もそうしているはずです。私は彼の発言からそうと信じました。
「分かりました。私の血を飲んで下さいね、他の方にこれ以上の迷惑はかけない様に」
クインはまた「はい」と言い、「ありがとうございます」と感謝を述べました。私は彼に対してもう恐れていませんでした。しかしこれからの長い期間、鋭い牙と血を吸われる感覚への恐怖を抱える事になりました。それは抱きしめられて暖かい暗闇で、徐々に体が冷えていく過程を鮮明に覚えてしまったからでした。
それでも、私の血を美味しいと言った事がどこか嬉しかったです。だから彼には出来る限り私の血を。そうすれば被害は私で止まりますし、彼があまり出来なかった住村や住都へ入る事もできるでしょう。
「それじゃあ準備も良い様ですし、出発しましょうか、ヴァンパイアさん」
私は体を野営地の外へ向けて言いました。この時クインの緊張が緩んだ事を、彼の立派なコートの衣擦れの音で察知しました。
「ヴァンパイア…とは…?」
それは彼が緊張と引き換えに抱えた困惑から出た言葉でした。だって、今私が考えた新しい言葉でしたから。
「…『それはエルフの様な外見で、身長は2mと高く赤い瞳を持ちます。エルフとの差異は、数千年以上の寿命を持つこと、少しばかり力強いこと、そして血を吸い生きると言う事だけです』っと、これがヴァンパイア。私が決めた、貴方の新しい種の名前です」
私が一番言い出したかった事はこれでした。せっかく真実を知ったのだから、全てを知った上で彼らの種の名前を考えたのです。元々言い伝わっていたらしい特徴が似ていた怪物『ヴァンピール』を語源に、彼の特徴と一致する様に、もし世に広まったとしても新しい人類として受け入れられやすい様に、名前を決めたのです。
「そう…ですか…」
私は少しだけ振り返ってクインの顔を見ました。彼は胸に手を当てて微笑んでいました。ただ視線は落ちていて、私が思うところ、彼自身の心を見つめていたのだと思います。
「そうだ、私、この川を渡りたいのだけど、橋か良い感じの岩場はありませんか?」
私は彼の事を色々尋ねていた間聞くことの出来ず、どうしても後回しにしていた当初の目的を伝えました。クインはさっと顔と眉を上げて私の質問を聞き、置いていた本と荷物を手に取り答えました。
「残念ながらその様な物は近くにはございません。私のせいで流され壊れたままの橋はありますが。しかしすぐそこの幅なら軽く飛び越えて渡れますよ」
私は彼の発言で二つのことを理解しました。まず前者の橋。地図に載っていてしかし壊れたままの橋は、クインが、怪物がいたから誰も直そうとしなくて放置されていた事。そして後者。その言葉と彼の笑みで、これから起こる事がなんとなく予想がつきました。
「あっえ?」
そして1分もすれば川を渡る準備は終えていました。クインが私のバックパックを背負い腕に自分のバッグも引っ提げて、野営地から川に向かって走り出す姿勢をとっていました。私はと言うと、少しの恐怖と不安で顔は青ざめ表情強張り、体を震わせ赤ん坊の様に縮こまった姿勢でクインに抱きかかえられていました。つまり、私を抱えて川を飛び越えようと言うのです。
「ねぇ!ホントに大丈夫だよねぇ!?」
「はい!一瞬ですから!」
クインが一層姿勢を落として抱きしめる力も増した直後、私は激しい揺れに苛まれました。等間隔に強く揺れ、地面を蹴る音も荷物の揺れる音もその時はただの雑音に感じました。あれこれと考える事が出来ず、私はずっと気を紛らわすために声を絞り出す事しか出来ませんでした。そして一際音が強く響いた時でした。体が押し潰される様な取り残されている様な、またそれを無理やり連れて行こうとする力を感じました。
「…ぁ」
しかしそれも束の間、今度は体を芯からくすぐられる様な浮遊感に襲われました。その間はそれ以外には何も感じずとても静かでした。
最後にドカンと強い衝撃が私を意識ごと揺らしました。私の呼吸はこの衝撃によって詰まってしまい、しばらく混乱した状態になってしまっていました。その後も胸が苦しいままグラグラと体が揺れました。いつしか揺れは全く無くなり、胸のつかえも徐々に解消されて、クインにゆっくりと地面に降ろされている事に気づいて思わずそこへ手を伸ばしました。
「…大丈夫…でしょうか?」
クインは自分の胸中から転がり込む様に逃れた私に言いました。
「アゥ…はぁ…あぁ……覚悟しました。」
彼は私に「大袈裟です」といって細く笑いました。一瞬殺意が湧きましたが、手っ取り早く川を渡れた事は事実ですし荷物も無事でした。私は強く不満を押し殺して立ち上がり、彼から預けていたバックパックを受け取りました。膝が笑って上手く立つ事も出来ませんでしたが、結局はクインの申出を断り頑張って立ち上がりました。
「強情ですね」
クインが未だに呼吸の整わない私に言いました。立った気も収まりきっていないのに彼から何かされるのが気に入らなかったのだと思います。「ふぅ」と私が一息吐くと、彼は私にとても重要なことを尋ねました。
「川を渡ったと言う事は、このまま西へ進むのですか?」
それはこれから向かう方角、ひいては場所についてでした。
「あ、まだ言ってませんでしたね。まぁ、大まかに西です。でも寄りたい場所があるので、しばらく西に進んだら当分北に向かいますよ」
私は地面に転がった時についた土を払いながらクインに教えました。
「まさか、大陸の中央に?」
彼は驚きを隠せない様な表情で言いました。そして更に私が言い続けた時、彼の見開いた目は更に大きくなりました。
「はい、行き先はドリグランとケティルメッタの境界、『カリフィス駐屯地』です」
彼の額から一筋流れる汗は、後悔の表れだったのでしょうか。ですが私に着いて行くと言った手前、後戻りは当然出来ませんでした。私は言い連ねます。
「魔境には入りませんよ?あの駐屯地に義父の知り合いがいるんです。いつか私も挨拶をって思ってたら、70年経っちゃいました」
「…70?」
次の行き先はカリフィス駐屯地、現在地から2000km前後の道のりになると思います。私はその第一歩として、彼の手を取り引っ張りました。すぐに手放しましたが、彼も歩み始めるのにはちょうど良いきっかけになりました。私はやっと長い足止めを、旅の道連れとして一人の男性を獲得して抜けたのでした。
現在地
ドリグラン分陸帯東部
ダヌシャ広盆地東部
ディルジーナ分川7-03近辺の森
クインの隠れ家の川を跨いだ向かい側
「何か弁解はありますか?」
「申し訳ございませんでした…」
しかしその出会い方は最悪な物でした。その男は私に姿を見せる事無く拘束し、目も隠した上で首筋から血を吸い上げ気絶させたのです。『クイン』と名乗った当の彼は、眉間に皺を寄せた私の前で地べたにきっかりと手を突いた綺麗な土下座をしていました。
「久方振りに上質で美味な血だったのと、貴女の総血液量が同じ体躯の方々より何分少ないらしく感覚を誤りました」
気絶してから何時間経っているのか分かりませんでしたが、この時には体調は回復していました。彼が名乗って、私が名乗って、そして彼が私の旅に同行させてくれと言って、私はそれに「はい」と返しました。その直後の数秒は頬が熱くなりましたが、正気になってみれば沸々と静かに怒りが湧き上がり、いつ以来かも忘れた怒った顔で立ち上がり「何か弁解はありますか?」と問い質していたのです。
「口がよく回りますね」
そう言いながらも私の目線は放られた掛け布が土に汚れていたのを見ていました。そのままチラリと見る場所を変えると私の荷物は枕の側に置いてあり、頭を垂れる彼の向こうへ目線を逸せば野営地の中心点の切り株が、その上にクインが読んでいたらしい褪せた小説が置いてあるのも見えました。横になっていた時見えなかった切り株の裏には既に焦茶色の手提げ鞄が置いてあり、私の答えがどうであれここを離れる気だった様でした。それにしてもベルトで閉じられた鞄の大きな事、私なら身を屈めれば容易く入ってしまう程に。
「…私ってそんなに血が少ないの?」
クインが先に謝ったのと今理由を質したので二回謝罪を受けた事になりました。彼の言葉に耳を傾けている最中に嵐が去るよりも早く怒りが冷めて行き、彼の言動の前半は後回しとして、後半の言葉が気になりました。そしてクインは額を地面に擦り付けたまま答えました。
「食料である前に友人ですので、死なれたら夢見が悪いのです。故に気が混濁するまでは飲みますがその程度に留めます。人も三者三様と言いますので都度調整しますが、長年の感覚が狂った事は直近千何百年の間でありませんでした。そして飲んだ量からしても200㎖程度。そして気を失うには血液量の三割が必要ですので、貴女の持っている血液量は同じ体格の者に対して20%程少ないかと」
その少し長い説明は罪悪感の表れだったのでしょう、それにずっと顔を見せずに話していて「言いすぎたかな」と思えてきました。
「分かりました、頭を上げてください」
私は腕を組んでため息を一つ、そうする間にクインが頭をさっと上げていて前髪に砂がついているのが見えました。私は彼の汚れた髪に相当する自分の髪の毛の箇所を指先でちょいちょいと払いました。それを見て、クインは大雑把に髪をわしゃわしゃとかき乱して付いた砂を払いました。
「今までの所作に対して随分と豪快ですね」
私は前髪がボサボサになった彼のキョトンとした顔に言いました。クインは私の言葉を受け取ると、顎を少し突き出し細めた目で長い前髪を整えて言いました。
「無礼を働いた身ですので…。元々貴族らしい振る舞いの稽古は苦手でしたから今のは見なかった事に」
私はクインのその言葉で、改めて彼が数千年生きているんだと実感しました。歴史によると、貴族が存在していたのは大陸地図が完成するずっと前です。それなのに彼の着ている黒い服は、全て上質な布と丈夫な縫い方で仕上げられている様に見えましたし、ほつれた様子もありません。それは現代では失われてしまった技術でした。
胸側でチェーンで繋がれたマント、その下の黒いコート、少し見える白いシャツ、黒のタイトストレートなズボン、黒い革靴。それらが身長2mを超えている男性が着こなしているのです。ただ、今は所々砂で汚れてしまっていました。
「まあいいでしょう、もう気にしていませんよ。それより、なぜ私の旅に同行したいのですか?」
忙しかった私の感情が凪いで、やっと一番聞きたい事を口にできました。背丈が大きな癖してほっとした様な柔らかい表情を見せて、彼は言いました。
「それは、私が神や運命を信仰しているからです。神が定めた運命と出会いを、私は大事にしたいのです。それと、単純にこの周辺に居着き過ぎたと思ったからです。近場の村で噂が広まってしまいまして、人があまり立ち入らず潮時かと思ったのです」
私は二つの理由を聞いて思いました。(神だって?)と。この世界には、神龍種と呼ばれる超常的な生き物達がいます。彼らは神の文字を冠していますが、それは彼らの持つ不思議な力を由来にして付けられた名前であり、実際に神などではありませんでした。
ですが私は別の理由で神と言う者に覚えがありました。それは70年前の旅立ちの更に一年前の事です。私がまだ自由ではなかった時に聞こえて来た義父の言葉でした。
『そうか、理解した。本物の、神か』
私は神と言う者と縁がありました。私が自由に大陸を歩きまわる事ができているのも、その神様のお陰なのです。
十中八九、彼が信じて居る神は別物だとは思いましたが、運命は私もあると信じている物でした。ですから、私も彼との出会いを大切にしようと思いました。ですがそれを直接言うつもりは有りません。胸に秘めておこうと決めていましたし、それより言いたい事が山ほどあったのです。
「ああ、森に何か出るって貴方のことだったんですか?」
クインはキリッとした顔から一転、瞼が下がって私から目線を少し逸らしました。そして少し俯いて呟いていました。
「何だよ『何か』って…」
姿を隠していたのだから当然だと思いましたが、せめてモンスターであって欲しかったのでしょうか。そこは私には分からないですし、聞こえないふりをして別の疑問を問い詰めました。
「あと、何で他人が気絶するまで血を飲む必要があるんですか?」
しょぼくれたクインは少しだけ目線を上げてそれに答えました。
「人が血を抜かれて気絶するラインは凡そ総量の三割です。その時々での違いや個人差がありますが健康状態や反応で分かります」
私はそう言うクインに見つめられている事を知った上で私自身に指先を向けて、瞼を落とし怪訝な顔をして見せました。彼はばつが悪そうな様子で言葉が詰まっていましたが、すぐに続きを話しました。
「…血を抜かれ気絶する寸前で止める事で意識が朦朧とし、助かりたい一心から私の正体を知る前に多くの者がその場から離れようと行動します。無論無理に動けば結局気絶します。が、死にはしません。牙で付けた首の傷も目覚め起き上がる時には治っていますし、夢の様な物として片付けられるのです」
私はそう聞いて無意識に噛まれた首筋に手を当てていました。もう手触りでは全く傷がない様に思いましたし、違和感さえ無かったことに気付きました。
「私の、と言うか父や祖父などこの体質を持つ者の体液には人の傷を癒す効果があるらしく、噛んだ時に唾液が体内に入り治癒が早まるのです」
私は「へぇー…」と目を見開いたままぼうっとしていました。そして一つ言いました。
「そんなに誤魔化せるものですか?」
クインはそう質問した私に、先の言葉に付け加える様に答えてくれました。
「こうした食事の作法は父から受け継ぎました。そして父はそのまた父、私の祖父から受け継いでいます。一族が生まれて血を吸い始めてとうに万年は超えていますから、程なくして市井にてある存在が噂され始めました。それは『血を吸う怪物』です。結局は私達の事ですが、言葉を囁やけど姿だけは見せず、大事になる前に大陸各地をを転々とした為、今や全土に同じ伝承が残っています。殊ここ周辺でも名前は無くてもそう言った何かが居ると噂があったのでしょう」
彼は長くも最もらしい答えを教えてくれました。今まで私が訪れた数十か百何十の村々にもその様な噂や言い伝えがあったのかは分かりませんが、正確な知見を得る事が難しく記録も失いやすいこの世界の記録媒体ではそれだけ大雑把な伝承でも残っている方が奇跡みたいな物でした。そして不明な相手、しかも人類の言語を操る相手ともなれば名のある狩人が調査をする事が一般的です。辺鄙なギリーヌ住村にはそんな実力者は居ませんから、手を出さないが主流になるのは当然でした。
「生まれた村でも旅の中でも聞いたことありませんよ。ですが一応真実として覚えておきましょう。それで最後に。一体『ヴァンピール』とはどこから出て来た名前なんです?」
クインからつらつらと説明を受けていれば察しはついていましたが、私は改めて最後の質問を投げかけました。クインは少し微笑んで答えました。
「先に言った中に『怪物』とあったでしょう?ヴァンピールとは、その中でも人の姿をしていると考えられた存在の一つです。しかし私が人前に出てもエルフとして見られる様に、それはそれは人と掛け離れた姿を想像されていた様です」
そう言うクインの表情は言うにつれてトホホと言った様に落ち込んでいきました。
「他人が付けた名前使うんだ…」
私は小さな声でそう言っていました。同時に(先に使っていた名前があるだろうに)とも思いましたが、直後のクインの発言でそれは私の見当違いだと知りました。
「はい。元々私の家系にのみ、しかも長男だけに現れた性質ですので、単に変異種の一つと考えていたのです。故に自身をエルフと疑わず、それ以外に考えませんでした」
私は(やっぱり)と思いました。一つ、彼は本来私と同じエルフであると。もう一つ、私とはまた違う理由でエルフから逸脱していると。彼は話し続けました。
「しかし私は何でも良いから決まった名が欲しかったのです。呼ばれた名前は『ヴァンピール』の他に、『ストリゴイ』、『ヴラード』、『ウルリスモ』。『チュパカブラ』『ヤラマヤー』『ニャリュシュ』など様々な中、一番実態に近いのが私の選んだ名というだけです」
私は「へぇー…」と再び開いた口から声を漏らしていました。
「聞きたい事はこれで最後でしたか?」
彼はまた指を揃えた手を胸に当てて頭を下げて言いました。私は思った以上に様々な事を知ってそれらを理解しようとしていましたが、結局飲み込めたものは半分くらいだったと思います。それは私に必要な物だけを覚える為であり、少々思いついた事を言い出そうとしていたからです。
「…大方の理解は出来ました。それと、最後に伺っても良いですか?これからの貴方の食糧について」
私は最後の気になっていた事をクインに聞きました。何千年も生きて、各地を回っているなら、移動中の食糧、彼にとっては人の血の確保はどうしているのか。彼は先の神の話というインパクトのある話題でこの事を誤魔化そうとしていました。その証拠にクインの表情から堂々とした気概が消えていきました。そして申し訳なさそうに言いました。
「そこは…貴女の血を頂こうかと…十日に一度で充分ですので…。もし抵抗があるなら通常の食事でも持ち堪える事は可能です」
元々低く下げていた頭をさらにぺこぺこと何度も上げ下げしながら、彼はそう頼んで来ました。
「持ち堪えるという事は、しれでは限度があるのですね?」
私の問いにクインは「はい」とだけ答えました。どう言う理屈かを言う事はありませんでしたが、もし血を飲まずにいられるなら彼もそうしているはずです。私は彼の発言からそうと信じました。
「分かりました。私の血を飲んで下さいね、他の方にこれ以上の迷惑はかけない様に」
クインはまた「はい」と言い、「ありがとうございます」と感謝を述べました。私は彼に対してもう恐れていませんでした。しかしこれからの長い期間、鋭い牙と血を吸われる感覚への恐怖を抱える事になりました。それは抱きしめられて暖かい暗闇で、徐々に体が冷えていく過程を鮮明に覚えてしまったからでした。
それでも、私の血を美味しいと言った事がどこか嬉しかったです。だから彼には出来る限り私の血を。そうすれば被害は私で止まりますし、彼があまり出来なかった住村や住都へ入る事もできるでしょう。
「それじゃあ準備も良い様ですし、出発しましょうか、ヴァンパイアさん」
私は体を野営地の外へ向けて言いました。この時クインの緊張が緩んだ事を、彼の立派なコートの衣擦れの音で察知しました。
「ヴァンパイア…とは…?」
それは彼が緊張と引き換えに抱えた困惑から出た言葉でした。だって、今私が考えた新しい言葉でしたから。
「…『それはエルフの様な外見で、身長は2mと高く赤い瞳を持ちます。エルフとの差異は、数千年以上の寿命を持つこと、少しばかり力強いこと、そして血を吸い生きると言う事だけです』っと、これがヴァンパイア。私が決めた、貴方の新しい種の名前です」
私が一番言い出したかった事はこれでした。せっかく真実を知ったのだから、全てを知った上で彼らの種の名前を考えたのです。元々言い伝わっていたらしい特徴が似ていた怪物『ヴァンピール』を語源に、彼の特徴と一致する様に、もし世に広まったとしても新しい人類として受け入れられやすい様に、名前を決めたのです。
「そう…ですか…」
私は少しだけ振り返ってクインの顔を見ました。彼は胸に手を当てて微笑んでいました。ただ視線は落ちていて、私が思うところ、彼自身の心を見つめていたのだと思います。
「そうだ、私、この川を渡りたいのだけど、橋か良い感じの岩場はありませんか?」
私は彼の事を色々尋ねていた間聞くことの出来ず、どうしても後回しにしていた当初の目的を伝えました。クインはさっと顔と眉を上げて私の質問を聞き、置いていた本と荷物を手に取り答えました。
「残念ながらその様な物は近くにはございません。私のせいで流され壊れたままの橋はありますが。しかしすぐそこの幅なら軽く飛び越えて渡れますよ」
私は彼の発言で二つのことを理解しました。まず前者の橋。地図に載っていてしかし壊れたままの橋は、クインが、怪物がいたから誰も直そうとしなくて放置されていた事。そして後者。その言葉と彼の笑みで、これから起こる事がなんとなく予想がつきました。
「あっえ?」
そして1分もすれば川を渡る準備は終えていました。クインが私のバックパックを背負い腕に自分のバッグも引っ提げて、野営地から川に向かって走り出す姿勢をとっていました。私はと言うと、少しの恐怖と不安で顔は青ざめ表情強張り、体を震わせ赤ん坊の様に縮こまった姿勢でクインに抱きかかえられていました。つまり、私を抱えて川を飛び越えようと言うのです。
「ねぇ!ホントに大丈夫だよねぇ!?」
「はい!一瞬ですから!」
クインが一層姿勢を落として抱きしめる力も増した直後、私は激しい揺れに苛まれました。等間隔に強く揺れ、地面を蹴る音も荷物の揺れる音もその時はただの雑音に感じました。あれこれと考える事が出来ず、私はずっと気を紛らわすために声を絞り出す事しか出来ませんでした。そして一際音が強く響いた時でした。体が押し潰される様な取り残されている様な、またそれを無理やり連れて行こうとする力を感じました。
「…ぁ」
しかしそれも束の間、今度は体を芯からくすぐられる様な浮遊感に襲われました。その間はそれ以外には何も感じずとても静かでした。
最後にドカンと強い衝撃が私を意識ごと揺らしました。私の呼吸はこの衝撃によって詰まってしまい、しばらく混乱した状態になってしまっていました。その後も胸が苦しいままグラグラと体が揺れました。いつしか揺れは全く無くなり、胸のつかえも徐々に解消されて、クインにゆっくりと地面に降ろされている事に気づいて思わずそこへ手を伸ばしました。
「…大丈夫…でしょうか?」
クインは自分の胸中から転がり込む様に逃れた私に言いました。
「アゥ…はぁ…あぁ……覚悟しました。」
彼は私に「大袈裟です」といって細く笑いました。一瞬殺意が湧きましたが、手っ取り早く川を渡れた事は事実ですし荷物も無事でした。私は強く不満を押し殺して立ち上がり、彼から預けていたバックパックを受け取りました。膝が笑って上手く立つ事も出来ませんでしたが、結局はクインの申出を断り頑張って立ち上がりました。
「強情ですね」
クインが未だに呼吸の整わない私に言いました。立った気も収まりきっていないのに彼から何かされるのが気に入らなかったのだと思います。「ふぅ」と私が一息吐くと、彼は私にとても重要なことを尋ねました。
「川を渡ったと言う事は、このまま西へ進むのですか?」
それはこれから向かう方角、ひいては場所についてでした。
「あ、まだ言ってませんでしたね。まぁ、大まかに西です。でも寄りたい場所があるので、しばらく西に進んだら当分北に向かいますよ」
私は地面に転がった時についた土を払いながらクインに教えました。
「まさか、大陸の中央に?」
彼は驚きを隠せない様な表情で言いました。そして更に私が言い続けた時、彼の見開いた目は更に大きくなりました。
「はい、行き先はドリグランとケティルメッタの境界、『カリフィス駐屯地』です」
彼の額から一筋流れる汗は、後悔の表れだったのでしょうか。ですが私に着いて行くと言った手前、後戻りは当然出来ませんでした。私は言い連ねます。
「魔境には入りませんよ?あの駐屯地に義父の知り合いがいるんです。いつか私も挨拶をって思ってたら、70年経っちゃいました」
「…70?」
次の行き先はカリフィス駐屯地、現在地から2000km前後の道のりになると思います。私はその第一歩として、彼の手を取り引っ張りました。すぐに手放しましたが、彼も歩み始めるのにはちょうど良いきっかけになりました。私はやっと長い足止めを、旅の道連れとして一人の男性を獲得して抜けたのでした。
現在地
ドリグラン分陸帯東部
ダヌシャ広盆地東部
ディルジーナ分川7-03近辺の森
クインの隠れ家の川を跨いだ向かい側
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