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目指せ!王都
出発前の準備
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『改装が 完了しました』
ンー?ン、ウー!眠い。
あー、でも改装?改装終わった…。眠気が残るぼんやりとした頭で、ゆっくりとベッドから起き上がる。
パチパチと目を瞬いた。
ベッドから起き上がってすぐ見えるのは廊下のはずなのに、廊下は消えてクローゼットの扉になっている。
ローテーブルの位置は変わってないが、左手にドアが一つできている。
ベッドを降りてドアを開ければ、寝室の倍はありそうながらんとしたリビングダイニング。
対角線上には、開けたドアと同じデザインのドア。そのドアを開けてみれば、寝ていた寝室と同じサイズの部屋があった。ただ、家具が無い分だけこちらの方が広く見える。
ダイニングの方に行くと丁度、寝ていた部屋の隣がキッチンになっていた。結構な広さなだけに、一人暮らしサイズの冷蔵庫とサイズ感が合っていない。
キッチン道具や食料もきちんと揃っているようだ。
設備もグレードアップして、一口IHコンロしか無かったのが、二口IHコンロが取り付けられている。
キッチンの対角線にドアがあり、そこを開けると小さなホールになっていて、右手に玄関、左手にトイレ、奥に洗面所とお風呂があった。お風呂は大きくなったので、足を伸ばして入れそう。
収納は寝室のクローゼットとキッチンの戸棚くらいだが、旅する身なので物を増やす余裕はないから当分このままでも問題はないだろう。
玄関のシューズボックスには、ノラのショートブーツと亜美の靴が規則正しく並んでいる。
玄関を開けて宿の部屋を覗けば、めちゃくちゃ不機嫌そうなユフィと目があった。
「お、おはよう」
「おはよう。改装は上手くいって?」
「それはもう、ばっちり」
「そう、良かったわ」
「…えーと、眠れなかった?」
はぁぁぁぁと、お嬢様らしからぬでかいため息を吐かれた。
「ええ、こんなにも安全って物に依存してたとは思わなかったわ」
ああ、天から貰ったスキルだからね。安全性なら世界一な自信がある。
「えーと、とりあえずルーム見てみる?」
「ええ」
玄関ドアを開けるとキョロキョロと見渡す。
様変わりし過ぎだしね。観察したくなるのはわかる。
「こっちがトイレでー、あっちがお風呂」
ドアを開けてリビングダイニングキッチンを見せる。
「広いわね。リビングとダイニングが一緒なのって落ち着かないわ」
「前世じゃ人気の間取りだよ」
「こっちが寝室ね。…こんな形になるのね」
「そーだね。一人暮らし最低限の家具しか無いからこっちで買うか…ネット通販目指して頑張るか…」
「ねっとつうはん?」
「前世の世界の商品を取り寄せられる能力!」
「凄く便利じゃない…!」
「ただし、能力解放まで100,000が必要なの」
「100,000…一週間で10,000強ぐらいだったから…先は長い…」
「しかも、ユフィが一週間ほぼ引きこもってた状態で」
「本当に能力解放まで長いわ!」
「それはそうと、そろそろ行かないと」
今日はダンジョンには行くが、早めに切り上げようと決めている。取得したものは売らず、ポーションを作りながら道中で売りながら路銀にしようと決めていた。
ポーションは基本的にどこにでも需要はあるが、やはり安定してどの季節でも材料が手に入るのはダンジョンだ。だから、ポーションを作れる人はダンジョン近くに集まりやすい。
冒険者も多いため、作れば作るほど売れるというのもポーション作りができる人には魅力だ。その分単価は安くなるが、安定収入は得られる。
結果、田舎でポーション作りができる人は減り、旅人なんかが売ると高値で買ってくれると言う仕組み。
路銀を稼ぎつつ、ユフィはルームで過ごして馬車代と宿代を浮かそう作戦。
******
昨日と同じメニューの朝食を食べると、朝一番のダンジョン行きの馬車に乗る。
朝一番の馬車は剣などの武器を持った中学生ぐらいの男の子が多い。これぐらいの子達は何かとイキっている時期だし、絡まれるかと思ったが意外と絡まれない。
どうやら、この年頃の子は見習い時期を終えて正式な冒険者となる一歩前のため、余計な揉め事を起こすと見習い期間が伸びるらしい。見習いではランクの低い仕事しか受けられず、その分収入も少ないから割と正式な冒険者になる前はやんちゃな子でもある程度大人しく過ごす。
割と切実な理由だった。
見習い期間がもうすぐ終わる子は、一階や二階に留まることが少なく、採取を目的にしている子はもう少し後に来る。
つまり、薬草もハーブも取り放題の最高の時間帯だ。
ぶちぶちと癒し草を採取してアイテムボックスに放り込む。売る用の麻痺草や鎮痛効果のあるメルリッサ草。
ひたすら集めに集めつつ、時折出てくる魔物を倒す。この作業にも慣れたし、魔物を倒すことへの躊躇も無くなった。
残念ながらレベルアップしないで、このダンジョンに未練がわかない。
レベルアップしたら、もうちょっと粘って居座ったかもしれない。
ユフィも三階には行かず二階で換金用の薬草採取と魔物討伐に集中している。
午前中いっぱいはダンジョンに篭り、昼前に出て街に戻った。
******
冒険者ギルドでウサギの肉や角、スライムの核に癒し草以外の薬草を売れば小金貨一枚と大銀貨六枚になった。
大銀貨三枚をユフィに預けて、ポーション用の瓶を購入する。
それが終わると市場へと向かう。市場の屋台でチャパティのような生地に、焼いたソーセージを乗せてその上から刻んだピクルスを大胆にかけたものを昼食として食べる。
屋台飯って無性に美味しく感じるよね…。
ユフィも物珍しそうに食べている。
昼食を食べると買い物を開始した。キャベツともうすぐ旬が終わるアスパラガスとオレンジ色の濃い人参。出始めパプリカを三つにレモーナと呼ばれる緑色のレモンを二つ。ニンニクも二つ。
じゃがいもはまだあるから、市場近くのチーズ屋で地球的に言うとエメンタール、パルミジャーノ・レッジャーノ、ラクレットを二百グラム程度買う。丘陵地帯で酪農を行なっているせいか、チーズは比較的安め。ついでに少しの牛乳も買えた。保存状態は心配だけど鑑定したから大丈夫…だと思いたい。
肉屋に行って鶏肉と猪肉を五百グラムずつにソーセージとベーコンを一つ。卵を一籠。一籠で十個前後入っている。
最後にパン屋でカンパーニュのようなパンを買って終了。
合計大銀貨三枚と小銀貨一枚。ユフィが全て「料理を作る貴方への手間賃よ」と出しました。ユフィも居候という立場じゃ居心地悪いかなと思って、ありがたくいただきます。
ユフィが宝石を換金したいと言うので、宝石店へと向かう。餅は餅屋。この世界では、宝石店が買取も行なっている。
今は旅人ですと言った風情のユフィだが、所作などで良いところのお嬢様だと判断されたのか丁寧に対応してもらえた。
屋敷から持ち出した刻印などがされていない、宝石が一つだけついたシンプルな指輪を二つ査定し、大金貨三枚と中金貨一枚になった。宝石の質が良かったらしい。
ユフィは契約書をじっくりと読み、問題ないと判断したのかサインをする。宝石屋の店主もそれを満足気に見つめて、ユフィがお金を受け取り取り引きが終わる。
******
宿に戻ると夕食にはまだ早いので、ルームに篭って食材の処理を開始する。
暇な時に作って冷凍していたサラダ油で作ったタルト生地を冷凍庫から取り出し解凍。
鍋に水を入れたら火にかける。鶏肉と豚肉は一口ほどの大きさに切ったり薄切りにして冷凍。鶏肉の一部は砂糖や塩、すり下ろしたニンニク、ダンジョンで採ってきたローズマリーと一緒にポリ袋に入れて揉み込みしばらく待つ。
アスパラガスはすべて湯がき、残ったお湯の中にポリ袋を入れて火を止めて放置。
じゃがいもと玉ねぎとベーコンを炒めて塩胡椒してコンソメで味付け。牛乳と卵で卵液を作ったら、油紙に包まれたパルミジャーノ・レッジャーノを取り出し削って卵液に入れて塩胡椒。そこに炒めた具材とアスパラガスを入れて混ぜる。
オーブンの予熱を開始して解凍したタルト生地を薄く伸ばしたらタルト型に入れ、卵液を流し込む。
温めたオーブンで約三十分。
余った生地もついでに焼く。小腹が空いた時にジャムでもつけて食べるクッキーだ。
手を洗ってゴロゴロしていたユフィと夕飯を食べに行く。ウサギのブラウンシチューだった。
部屋に戻ったら、鶏肉をお湯から取り出して中まで火が通っているかチェック。充分火が通っている様だから粗熱がとれたら保存袋のまま冷蔵庫。
最後にナッツを使ってビスコッティ作り。グラノーラバーも悪くないけど、グラノーラは朝食とかでも食べるから消費を抑えたい。
ビスコッティはイタリアのお菓子で二度焼きするため、保存性が高く硬いため腹持ちする。
ビスコッティが焼き上がれば、お風呂に入って就寝。
明日からは王都に向かう。
ンー?ン、ウー!眠い。
あー、でも改装?改装終わった…。眠気が残るぼんやりとした頭で、ゆっくりとベッドから起き上がる。
パチパチと目を瞬いた。
ベッドから起き上がってすぐ見えるのは廊下のはずなのに、廊下は消えてクローゼットの扉になっている。
ローテーブルの位置は変わってないが、左手にドアが一つできている。
ベッドを降りてドアを開ければ、寝室の倍はありそうながらんとしたリビングダイニング。
対角線上には、開けたドアと同じデザインのドア。そのドアを開けてみれば、寝ていた寝室と同じサイズの部屋があった。ただ、家具が無い分だけこちらの方が広く見える。
ダイニングの方に行くと丁度、寝ていた部屋の隣がキッチンになっていた。結構な広さなだけに、一人暮らしサイズの冷蔵庫とサイズ感が合っていない。
キッチン道具や食料もきちんと揃っているようだ。
設備もグレードアップして、一口IHコンロしか無かったのが、二口IHコンロが取り付けられている。
キッチンの対角線にドアがあり、そこを開けると小さなホールになっていて、右手に玄関、左手にトイレ、奥に洗面所とお風呂があった。お風呂は大きくなったので、足を伸ばして入れそう。
収納は寝室のクローゼットとキッチンの戸棚くらいだが、旅する身なので物を増やす余裕はないから当分このままでも問題はないだろう。
玄関のシューズボックスには、ノラのショートブーツと亜美の靴が規則正しく並んでいる。
玄関を開けて宿の部屋を覗けば、めちゃくちゃ不機嫌そうなユフィと目があった。
「お、おはよう」
「おはよう。改装は上手くいって?」
「それはもう、ばっちり」
「そう、良かったわ」
「…えーと、眠れなかった?」
はぁぁぁぁと、お嬢様らしからぬでかいため息を吐かれた。
「ええ、こんなにも安全って物に依存してたとは思わなかったわ」
ああ、天から貰ったスキルだからね。安全性なら世界一な自信がある。
「えーと、とりあえずルーム見てみる?」
「ええ」
玄関ドアを開けるとキョロキョロと見渡す。
様変わりし過ぎだしね。観察したくなるのはわかる。
「こっちがトイレでー、あっちがお風呂」
ドアを開けてリビングダイニングキッチンを見せる。
「広いわね。リビングとダイニングが一緒なのって落ち着かないわ」
「前世じゃ人気の間取りだよ」
「こっちが寝室ね。…こんな形になるのね」
「そーだね。一人暮らし最低限の家具しか無いからこっちで買うか…ネット通販目指して頑張るか…」
「ねっとつうはん?」
「前世の世界の商品を取り寄せられる能力!」
「凄く便利じゃない…!」
「ただし、能力解放まで100,000が必要なの」
「100,000…一週間で10,000強ぐらいだったから…先は長い…」
「しかも、ユフィが一週間ほぼ引きこもってた状態で」
「本当に能力解放まで長いわ!」
「それはそうと、そろそろ行かないと」
今日はダンジョンには行くが、早めに切り上げようと決めている。取得したものは売らず、ポーションを作りながら道中で売りながら路銀にしようと決めていた。
ポーションは基本的にどこにでも需要はあるが、やはり安定してどの季節でも材料が手に入るのはダンジョンだ。だから、ポーションを作れる人はダンジョン近くに集まりやすい。
冒険者も多いため、作れば作るほど売れるというのもポーション作りができる人には魅力だ。その分単価は安くなるが、安定収入は得られる。
結果、田舎でポーション作りができる人は減り、旅人なんかが売ると高値で買ってくれると言う仕組み。
路銀を稼ぎつつ、ユフィはルームで過ごして馬車代と宿代を浮かそう作戦。
******
昨日と同じメニューの朝食を食べると、朝一番のダンジョン行きの馬車に乗る。
朝一番の馬車は剣などの武器を持った中学生ぐらいの男の子が多い。これぐらいの子達は何かとイキっている時期だし、絡まれるかと思ったが意外と絡まれない。
どうやら、この年頃の子は見習い時期を終えて正式な冒険者となる一歩前のため、余計な揉め事を起こすと見習い期間が伸びるらしい。見習いではランクの低い仕事しか受けられず、その分収入も少ないから割と正式な冒険者になる前はやんちゃな子でもある程度大人しく過ごす。
割と切実な理由だった。
見習い期間がもうすぐ終わる子は、一階や二階に留まることが少なく、採取を目的にしている子はもう少し後に来る。
つまり、薬草もハーブも取り放題の最高の時間帯だ。
ぶちぶちと癒し草を採取してアイテムボックスに放り込む。売る用の麻痺草や鎮痛効果のあるメルリッサ草。
ひたすら集めに集めつつ、時折出てくる魔物を倒す。この作業にも慣れたし、魔物を倒すことへの躊躇も無くなった。
残念ながらレベルアップしないで、このダンジョンに未練がわかない。
レベルアップしたら、もうちょっと粘って居座ったかもしれない。
ユフィも三階には行かず二階で換金用の薬草採取と魔物討伐に集中している。
午前中いっぱいはダンジョンに篭り、昼前に出て街に戻った。
******
冒険者ギルドでウサギの肉や角、スライムの核に癒し草以外の薬草を売れば小金貨一枚と大銀貨六枚になった。
大銀貨三枚をユフィに預けて、ポーション用の瓶を購入する。
それが終わると市場へと向かう。市場の屋台でチャパティのような生地に、焼いたソーセージを乗せてその上から刻んだピクルスを大胆にかけたものを昼食として食べる。
屋台飯って無性に美味しく感じるよね…。
ユフィも物珍しそうに食べている。
昼食を食べると買い物を開始した。キャベツともうすぐ旬が終わるアスパラガスとオレンジ色の濃い人参。出始めパプリカを三つにレモーナと呼ばれる緑色のレモンを二つ。ニンニクも二つ。
じゃがいもはまだあるから、市場近くのチーズ屋で地球的に言うとエメンタール、パルミジャーノ・レッジャーノ、ラクレットを二百グラム程度買う。丘陵地帯で酪農を行なっているせいか、チーズは比較的安め。ついでに少しの牛乳も買えた。保存状態は心配だけど鑑定したから大丈夫…だと思いたい。
肉屋に行って鶏肉と猪肉を五百グラムずつにソーセージとベーコンを一つ。卵を一籠。一籠で十個前後入っている。
最後にパン屋でカンパーニュのようなパンを買って終了。
合計大銀貨三枚と小銀貨一枚。ユフィが全て「料理を作る貴方への手間賃よ」と出しました。ユフィも居候という立場じゃ居心地悪いかなと思って、ありがたくいただきます。
ユフィが宝石を換金したいと言うので、宝石店へと向かう。餅は餅屋。この世界では、宝石店が買取も行なっている。
今は旅人ですと言った風情のユフィだが、所作などで良いところのお嬢様だと判断されたのか丁寧に対応してもらえた。
屋敷から持ち出した刻印などがされていない、宝石が一つだけついたシンプルな指輪を二つ査定し、大金貨三枚と中金貨一枚になった。宝石の質が良かったらしい。
ユフィは契約書をじっくりと読み、問題ないと判断したのかサインをする。宝石屋の店主もそれを満足気に見つめて、ユフィがお金を受け取り取り引きが終わる。
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宿に戻ると夕食にはまだ早いので、ルームに篭って食材の処理を開始する。
暇な時に作って冷凍していたサラダ油で作ったタルト生地を冷凍庫から取り出し解凍。
鍋に水を入れたら火にかける。鶏肉と豚肉は一口ほどの大きさに切ったり薄切りにして冷凍。鶏肉の一部は砂糖や塩、すり下ろしたニンニク、ダンジョンで採ってきたローズマリーと一緒にポリ袋に入れて揉み込みしばらく待つ。
アスパラガスはすべて湯がき、残ったお湯の中にポリ袋を入れて火を止めて放置。
じゃがいもと玉ねぎとベーコンを炒めて塩胡椒してコンソメで味付け。牛乳と卵で卵液を作ったら、油紙に包まれたパルミジャーノ・レッジャーノを取り出し削って卵液に入れて塩胡椒。そこに炒めた具材とアスパラガスを入れて混ぜる。
オーブンの予熱を開始して解凍したタルト生地を薄く伸ばしたらタルト型に入れ、卵液を流し込む。
温めたオーブンで約三十分。
余った生地もついでに焼く。小腹が空いた時にジャムでもつけて食べるクッキーだ。
手を洗ってゴロゴロしていたユフィと夕飯を食べに行く。ウサギのブラウンシチューだった。
部屋に戻ったら、鶏肉をお湯から取り出して中まで火が通っているかチェック。充分火が通っている様だから粗熱がとれたら保存袋のまま冷蔵庫。
最後にナッツを使ってビスコッティ作り。グラノーラバーも悪くないけど、グラノーラは朝食とかでも食べるから消費を抑えたい。
ビスコッティはイタリアのお菓子で二度焼きするため、保存性が高く硬いため腹持ちする。
ビスコッティが焼き上がれば、お風呂に入って就寝。
明日からは王都に向かう。
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