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世界はとても残酷で(特にご飯が)
お家帰りたい
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母娘の心温まる会話(笑)が終わると、二階に案内される。
二階は子供部屋となっていて、三階が両親の部屋という間取り。三階に子供部屋を置くと、足音がうるさいからこんな間取りになっているらしい。
「あー!みのりだー!」
二階に上がった途端、現れたのは次兄の洸平だ。私の一つ上で、年子。
パパに似た女の子のような顔立ちをしているが、自由奔放な典型的なクソガキ様である。
「なんでもっと遊びに来ないんだよ!」
「豊華ちゃん達と遊ぶ方が楽しいからかな」
「は~?お前は俺の妹じゃん」
「妹だからお兄ちゃんを蔑ろしてるんだよ」
「ないがしろってなんだよー!」
「なんなんだろうね」
お父さんのコイツ、いつの間にそんな語彙を…?!みたいな視線が痛い。
洸平は洸平なりに妹を可愛がっているつもりではあるだろうが、少々可愛がり方が乱暴だ。
今の私なら六歳児ならこんなもんだろ、と思うのだが蝶よ花よと育てられたみのりはちょっと一つ上の兄が苦手。
「荷物置いてくるー」
「じゃあ、それが終わったら遊ぼーぜ」
「ゲームなら相手してあげる」
二階にある四部屋あるうちの一番日当たりの悪い部屋が、私のこの家の部屋になっている。
一番広くて日当たりの良い部屋を与えられそうになったが、みのりが「みのりは別のお家の子だから、一番狭い部屋で良いよ」と言った結果、この部屋になった。
別のお家の子というのは、家から出された結果、この家には二度と戻ることができないから別の家の子になったのだと小さいなりに解釈したことで出た言葉だ。
里帰りさせられてかなりびっくりしたよね。家出た当初は何日も泣き喚いて、もうお家には帰れないんだ…!って覚悟を決めた矢先、正月だから帰るよとか言われて。
部屋のドアを開けると、施設の子ども部屋とはまた違ったオシャレな部屋だ。
施設の部屋がお姫様の部屋なら、こっちはアメリカの陽キャみたいなビビットカラーがアクセントカラーになっている派手な部屋。
おお、ベッドの布団カバーが豹柄。
可愛いけど落ち着かないー!
誰の趣味?たぶんダディっぽい。
まあ、二週間しか寝泊まりしないし、いいか…。
「実、こんな部屋で良いのか?」
お父さんは気に入ってないらしい。
確かにお父さん趣味では無いよね。
「別に良いよぉ、どうせ寝るだけの部屋だし」
スーツケースを置いてクローゼットをチェック。
圧倒的ワンピース率。
厚手のタイツとレギンスがあるかもチェック。しかし、シンプル、フリフリ、お嬢様風と取り揃えられているけどこんなに着ないよ?
スカートはあっても、ズボンはないってどういうことなの?
めっちゃ趣味押し付けてくるじゃん…。
…ところで誰が女児の下着を買った………いや、止めよう、そこは考えてはいけない。
次男の洸平と長男の慎は見た目は似ていないが、性格も似ていない。
慎は二番目の父である裕一郎によく似たおっとりとした美形で、浮気はなかったと確信できる顔立ちだ。顔だけなら、ぱっと見女の子に見えなくもない。
性格はやんちゃを体現したような洸平と違って、長男らしい落ち着きがある。
「もうやらねー!」
「そう?」
洸平が妹に負けて悔しかったのか、コントローラを放り投げる。
久しぶりに対戦ゲームをしたけど、なかなか面白かった。
「次は桃鉄でもやる?」
「やらない。公園行こー!」
慎と顔を見合わせる。
寒いからヤダ。こたつでぬくぬくしていたい。みかんがあれば最高だけど、生の果物はお高い上に、品種改良されてないから酸っぱいのよね…。
「もうすぐご飯だからダメだろ。みのりはなんかしたいことある?」
「映画見たいかなぁ」
「じゃあ、映画見ようか」
幼女、誘拐の恐れがあるから外遊び出来ない。施設の中庭以外の外で遊ぶ時には、完全予約制の児童遊戯施設に行くしかないの。
豊華と果穂と一緒に行ったけど、女の子という希少種の登場で、他の客の雰囲気がとんでもないことになったのは、若干トラウマ。
兄二人の子ども部屋でテレビを流しつつトランプで遊んでいると、ダディが呼びに来た。
ダディは美形は美形だけど、それ以上に温和そうという感想が浮かぶ顔立ちをしている。
仕事はアジア系の雑貨や家具、服飾を中心に取り扱っている貿易会社を営んでいるらしい。
職業を知った時、インテリアや家具にアジアンの雰囲気を感じることに納得した。
出張も多い仕事だから、あまり家に来ないので一番関わりが薄い父親だ。
東南アジアとか出張行った時、ナンプラーとか胡椒とか買ってきてくれないかな…。ダメ元で頼んでみようかな…。
「ご飯だよー」
「はーい」
来ましたよ。苦行タイム。
味気ないトレーに乗っているのは緑色のペーストとシリアルバー、サプリメント。ついでに牛乳が出てくる。
ディストピア飯ぃ…。
もちろん我が家でも出てくるけど、軽く済ませたい朝食だけ、昼食を食べ過ぎた夕食のときぐらいしか活用してない。
あとディストピア飯の時でも、常備している昆布水で作ったお吸い物があるだけでも、気持ちが楽。
お吸い物下さい!とも言えず、薄味のペーストとシリアルバーをもそもそと食べ始める。
本当に美味い不味いじゃなくて、栄養摂取以外の何者でもないって感じ。
ママも食べてるけど、スゴいよね…コレで妊婦に必要な栄養素補えてるの…。まあ、一緒に野菜とお肉の入ったお粥のレトルトも食べてるけど。
あくまでお粥なのがポイント。お粥に野菜と肉を入れただけで薄っすい味付けしかしてない。雑炊とは呼べないのよ…。
透子さん…透子さんのご飯が既に恋しい…。
バー系の食べ物はかっっったいクッキーみたいなボソボソした食べ物なので口の中の水分が持っていかれるから、牛乳やお茶は必須。水分とらないと便秘になるから、推奨水分摂取量とかも決められている。
デザートは水溶性食物繊維やビタミンが配合されたゼリー。藻みたいな色しているが、天然色素らしい。
久しぶり思い出したよ。
そう、この世はとても残酷なの。主に食方面。
あー、お家帰りたい。
二階は子供部屋となっていて、三階が両親の部屋という間取り。三階に子供部屋を置くと、足音がうるさいからこんな間取りになっているらしい。
「あー!みのりだー!」
二階に上がった途端、現れたのは次兄の洸平だ。私の一つ上で、年子。
パパに似た女の子のような顔立ちをしているが、自由奔放な典型的なクソガキ様である。
「なんでもっと遊びに来ないんだよ!」
「豊華ちゃん達と遊ぶ方が楽しいからかな」
「は~?お前は俺の妹じゃん」
「妹だからお兄ちゃんを蔑ろしてるんだよ」
「ないがしろってなんだよー!」
「なんなんだろうね」
お父さんのコイツ、いつの間にそんな語彙を…?!みたいな視線が痛い。
洸平は洸平なりに妹を可愛がっているつもりではあるだろうが、少々可愛がり方が乱暴だ。
今の私なら六歳児ならこんなもんだろ、と思うのだが蝶よ花よと育てられたみのりはちょっと一つ上の兄が苦手。
「荷物置いてくるー」
「じゃあ、それが終わったら遊ぼーぜ」
「ゲームなら相手してあげる」
二階にある四部屋あるうちの一番日当たりの悪い部屋が、私のこの家の部屋になっている。
一番広くて日当たりの良い部屋を与えられそうになったが、みのりが「みのりは別のお家の子だから、一番狭い部屋で良いよ」と言った結果、この部屋になった。
別のお家の子というのは、家から出された結果、この家には二度と戻ることができないから別の家の子になったのだと小さいなりに解釈したことで出た言葉だ。
里帰りさせられてかなりびっくりしたよね。家出た当初は何日も泣き喚いて、もうお家には帰れないんだ…!って覚悟を決めた矢先、正月だから帰るよとか言われて。
部屋のドアを開けると、施設の子ども部屋とはまた違ったオシャレな部屋だ。
施設の部屋がお姫様の部屋なら、こっちはアメリカの陽キャみたいなビビットカラーがアクセントカラーになっている派手な部屋。
おお、ベッドの布団カバーが豹柄。
可愛いけど落ち着かないー!
誰の趣味?たぶんダディっぽい。
まあ、二週間しか寝泊まりしないし、いいか…。
「実、こんな部屋で良いのか?」
お父さんは気に入ってないらしい。
確かにお父さん趣味では無いよね。
「別に良いよぉ、どうせ寝るだけの部屋だし」
スーツケースを置いてクローゼットをチェック。
圧倒的ワンピース率。
厚手のタイツとレギンスがあるかもチェック。しかし、シンプル、フリフリ、お嬢様風と取り揃えられているけどこんなに着ないよ?
スカートはあっても、ズボンはないってどういうことなの?
めっちゃ趣味押し付けてくるじゃん…。
…ところで誰が女児の下着を買った………いや、止めよう、そこは考えてはいけない。
次男の洸平と長男の慎は見た目は似ていないが、性格も似ていない。
慎は二番目の父である裕一郎によく似たおっとりとした美形で、浮気はなかったと確信できる顔立ちだ。顔だけなら、ぱっと見女の子に見えなくもない。
性格はやんちゃを体現したような洸平と違って、長男らしい落ち着きがある。
「もうやらねー!」
「そう?」
洸平が妹に負けて悔しかったのか、コントローラを放り投げる。
久しぶりに対戦ゲームをしたけど、なかなか面白かった。
「次は桃鉄でもやる?」
「やらない。公園行こー!」
慎と顔を見合わせる。
寒いからヤダ。こたつでぬくぬくしていたい。みかんがあれば最高だけど、生の果物はお高い上に、品種改良されてないから酸っぱいのよね…。
「もうすぐご飯だからダメだろ。みのりはなんかしたいことある?」
「映画見たいかなぁ」
「じゃあ、映画見ようか」
幼女、誘拐の恐れがあるから外遊び出来ない。施設の中庭以外の外で遊ぶ時には、完全予約制の児童遊戯施設に行くしかないの。
豊華と果穂と一緒に行ったけど、女の子という希少種の登場で、他の客の雰囲気がとんでもないことになったのは、若干トラウマ。
兄二人の子ども部屋でテレビを流しつつトランプで遊んでいると、ダディが呼びに来た。
ダディは美形は美形だけど、それ以上に温和そうという感想が浮かぶ顔立ちをしている。
仕事はアジア系の雑貨や家具、服飾を中心に取り扱っている貿易会社を営んでいるらしい。
職業を知った時、インテリアや家具にアジアンの雰囲気を感じることに納得した。
出張も多い仕事だから、あまり家に来ないので一番関わりが薄い父親だ。
東南アジアとか出張行った時、ナンプラーとか胡椒とか買ってきてくれないかな…。ダメ元で頼んでみようかな…。
「ご飯だよー」
「はーい」
来ましたよ。苦行タイム。
味気ないトレーに乗っているのは緑色のペーストとシリアルバー、サプリメント。ついでに牛乳が出てくる。
ディストピア飯ぃ…。
もちろん我が家でも出てくるけど、軽く済ませたい朝食だけ、昼食を食べ過ぎた夕食のときぐらいしか活用してない。
あとディストピア飯の時でも、常備している昆布水で作ったお吸い物があるだけでも、気持ちが楽。
お吸い物下さい!とも言えず、薄味のペーストとシリアルバーをもそもそと食べ始める。
本当に美味い不味いじゃなくて、栄養摂取以外の何者でもないって感じ。
ママも食べてるけど、スゴいよね…コレで妊婦に必要な栄養素補えてるの…。まあ、一緒に野菜とお肉の入ったお粥のレトルトも食べてるけど。
あくまでお粥なのがポイント。お粥に野菜と肉を入れただけで薄っすい味付けしかしてない。雑炊とは呼べないのよ…。
透子さん…透子さんのご飯が既に恋しい…。
バー系の食べ物はかっっったいクッキーみたいなボソボソした食べ物なので口の中の水分が持っていかれるから、牛乳やお茶は必須。水分とらないと便秘になるから、推奨水分摂取量とかも決められている。
デザートは水溶性食物繊維やビタミンが配合されたゼリー。藻みたいな色しているが、天然色素らしい。
久しぶり思い出したよ。
そう、この世はとても残酷なの。主に食方面。
あー、お家帰りたい。
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