15 / 18
世界はとても残酷で(特にご飯が)
お正月…それは試練
しおりを挟む
「うっ…透子さん、早く迎えに来てねぇ…!」
泣いちゃダメ!
いくら地獄の実家行きとはいえ、透子さんにだってお休みは必要なんだから!
幼女、前世の記憶があるけど幼女だからイヤなことには泣きそうになる!
施設にいる女児専用ベビーシッター達は基本住み込みだけど、そんな彼女達にも当然休みはある。
ただどうしても都合上、安全面からシッターを交代と言うことは出来ないので、休みたい土日は父親の誰かが泊まりに来るような制度だ。
料理バレしてからはお父さんが積極的に来ている。
長期休暇として、夏と冬に最低でも二週間ずつの休みを設けるように法律で決まっているらしい。幼女はそのへんよくわからない。
ベビーシッターを休ませるのと同時に、ちょっと血縁と一緒に生活して関係修復してほしいなって思惑もあるんだろう。
二週間ぐらいなら双方我慢できるでしょう、って感じかな…。
正直、自分は関係修復できるとは思ってないよね。
「お嬢様、お土産買ってきますから…!」
透子さんは長期休暇を利用して、北海道へ旅行に行く。
二人で旅行雑誌眺めてテンション上げてたけど、美味しいお土産はないんだよね。
北海道産にこだわったパワーバーとかならあったけど。…そういうこだわりが残ってるのは、パラレルワールドでも日本を感じる。
「できれば美味しいもの見つけて来てねェ…!」
そんな会話を交わして、透子さんとはしばしの別れ。
葛木のおばあちゃまのところにも行けず、美味しいものも食べられない。
前世では長い休みで旅行や、お取り寄せなど楽しみも多かった正月。
ごちそうもおせちもお餅も消え去った今世…。
一体何を楽しみにしたらいい…?
せめて気分を上げるためとお気に入りのブラウスとカーディガン、長袖のワンピースだのを用意して、ミント色の子供用スーツケースに入れる。
入れるのはお気に入りだけ。どうせ実家に行けば、服はある。一言お洋服欲しいって言えば、父親達が買ってくれる。
イヤ、前世の価値観から言えばホイホイ物を買う親でいいの?とは思うけど、娘に貢ぐってのはこの世界では一種のステータスだから…。
実知ってる。休みが終わったら、職場で言うんだぜ。正月は娘に振り回されていましたよ、なんて言ってマウント取るの。
最後にチェック柄のコートに黒いボアキャスケットを被って完成。
「お待たせ、お父さん」
「ああ」
いざ、実家に出発ー!
施設から車で約三十分。
閑静な住宅地に我が家は合った。
マンション住まいかと思いきや、三階建ての一軒家である。
ただ、芸能人のお宅並みにセキュリティが高そう。と言うか実際に高いのだろう。
高級住宅街ってやつなのか、まわりのお宅も豪邸ばかり…。
私、本当にお嬢様だったんだな…。
イヤ、ご飯のことしか頭になくて、家族とか生活レベルとか考えてこなかったから…。
ガレージのシャッターが開くと、お父さんの車がスムーズに駐車した。
案外手慣れた手つきで、チャイルドシートのシートベルトを外してくれる。
お父さん…ちゃんと子どもの面倒見てるのね。仕事にしか興味ないみたいな容姿なのに…。
「やっぱり、男の子と女の子は違うな。お兄ちゃんたちはこんなに良い子にしていない」
この年頃の幼児なんて男女関係なく怪獣よ。
私が特殊なだけ。
ただいまと自宅に入れば、広々とした玄関。シューズクロークも広く色々な種類の靴が詰め込まれている。
土間の部分には2台の子ども用自転車、壁にはロードバイクが飾りのように掛けられているが、傷がついているので父親の誰かが使っているのだろう。
人口増加がないから、都内でもお家も庭も広い。キッチンは狭い…と言うか、納戸か給湯室かなってサイズ。
とりあえず、冷蔵庫は大きめだけどおそらく入っているのは酒。
手洗いうがいをして、リビングへと向かう。
キッチンが無い分だけリビングが広くて、こだわっていることがわかる。
そこには、お腹の大きな女性が寛いでいた。
ママだ。
何というか、お腹の大きな妊婦なのに不思議と母親と言うよりは女性と表現する方が正解な気がする人。
子どもである自分が言うのもなんだが、美人ではある。ただ、清楚な見た目と雰囲気は完全に仕事ができるOL感があるため、この人にとって本当に出産は仕事なんだなって感じ。
いや、相性悪くて施設に預けられた身としてはもっと毒々しい毒花系美女を想像していたのだが…。
よく考えたらこの人、まだ二十代半ばなんだよね。
こんな世界じゃなきゃ、バリキャリにでもなっていそう。
私を産んで一旦、妊娠はお休みしたが二十代のうちにあと二人ぐらいは産んでおきたいらしい。
パパ、そう言うことを明け透けに娘に言うのどうかと思うよ。
「来たの」
「おじゃまします」
これ、約八ヶ月ぶりくらいに会う母と幼女の会話な。
「お元気そうで何よりです。赤ちゃんの様子はどうですか?」
「順調よ。来年の一月末ぐらいには生まれるわ」
「楽しみですね」
「そうね」
もう一度言う。親子の会話ね、コレ。
前世の会社の同僚だって、もうちょっとフレンドリーに話してたわ。
関係修復とか無理無理。
うわーん、透子さん早く迎えに来てー!
「ところで、最近英治と仲良しね」
英治=お父さん。
一瞬、誰の名前だっけって思っちゃった。
「親子が仲良しなのは良いことでは?」
「そうね。でも、英治が居ないと不安だわ。もうすぐ、弟も生まれるし、貴方も可愛がってくれる?」
「もちろん」
弟生まれるから、大人しくして。英治盗るんじゃないわよってことね。
だってさ、お父さん。
幼女に対してマウントとる女ってどう思う?
私の位置からじゃ、お父さんの顔見えなくて残念。
泣いちゃダメ!
いくら地獄の実家行きとはいえ、透子さんにだってお休みは必要なんだから!
幼女、前世の記憶があるけど幼女だからイヤなことには泣きそうになる!
施設にいる女児専用ベビーシッター達は基本住み込みだけど、そんな彼女達にも当然休みはある。
ただどうしても都合上、安全面からシッターを交代と言うことは出来ないので、休みたい土日は父親の誰かが泊まりに来るような制度だ。
料理バレしてからはお父さんが積極的に来ている。
長期休暇として、夏と冬に最低でも二週間ずつの休みを設けるように法律で決まっているらしい。幼女はそのへんよくわからない。
ベビーシッターを休ませるのと同時に、ちょっと血縁と一緒に生活して関係修復してほしいなって思惑もあるんだろう。
二週間ぐらいなら双方我慢できるでしょう、って感じかな…。
正直、自分は関係修復できるとは思ってないよね。
「お嬢様、お土産買ってきますから…!」
透子さんは長期休暇を利用して、北海道へ旅行に行く。
二人で旅行雑誌眺めてテンション上げてたけど、美味しいお土産はないんだよね。
北海道産にこだわったパワーバーとかならあったけど。…そういうこだわりが残ってるのは、パラレルワールドでも日本を感じる。
「できれば美味しいもの見つけて来てねェ…!」
そんな会話を交わして、透子さんとはしばしの別れ。
葛木のおばあちゃまのところにも行けず、美味しいものも食べられない。
前世では長い休みで旅行や、お取り寄せなど楽しみも多かった正月。
ごちそうもおせちもお餅も消え去った今世…。
一体何を楽しみにしたらいい…?
せめて気分を上げるためとお気に入りのブラウスとカーディガン、長袖のワンピースだのを用意して、ミント色の子供用スーツケースに入れる。
入れるのはお気に入りだけ。どうせ実家に行けば、服はある。一言お洋服欲しいって言えば、父親達が買ってくれる。
イヤ、前世の価値観から言えばホイホイ物を買う親でいいの?とは思うけど、娘に貢ぐってのはこの世界では一種のステータスだから…。
実知ってる。休みが終わったら、職場で言うんだぜ。正月は娘に振り回されていましたよ、なんて言ってマウント取るの。
最後にチェック柄のコートに黒いボアキャスケットを被って完成。
「お待たせ、お父さん」
「ああ」
いざ、実家に出発ー!
施設から車で約三十分。
閑静な住宅地に我が家は合った。
マンション住まいかと思いきや、三階建ての一軒家である。
ただ、芸能人のお宅並みにセキュリティが高そう。と言うか実際に高いのだろう。
高級住宅街ってやつなのか、まわりのお宅も豪邸ばかり…。
私、本当にお嬢様だったんだな…。
イヤ、ご飯のことしか頭になくて、家族とか生活レベルとか考えてこなかったから…。
ガレージのシャッターが開くと、お父さんの車がスムーズに駐車した。
案外手慣れた手つきで、チャイルドシートのシートベルトを外してくれる。
お父さん…ちゃんと子どもの面倒見てるのね。仕事にしか興味ないみたいな容姿なのに…。
「やっぱり、男の子と女の子は違うな。お兄ちゃんたちはこんなに良い子にしていない」
この年頃の幼児なんて男女関係なく怪獣よ。
私が特殊なだけ。
ただいまと自宅に入れば、広々とした玄関。シューズクロークも広く色々な種類の靴が詰め込まれている。
土間の部分には2台の子ども用自転車、壁にはロードバイクが飾りのように掛けられているが、傷がついているので父親の誰かが使っているのだろう。
人口増加がないから、都内でもお家も庭も広い。キッチンは狭い…と言うか、納戸か給湯室かなってサイズ。
とりあえず、冷蔵庫は大きめだけどおそらく入っているのは酒。
手洗いうがいをして、リビングへと向かう。
キッチンが無い分だけリビングが広くて、こだわっていることがわかる。
そこには、お腹の大きな女性が寛いでいた。
ママだ。
何というか、お腹の大きな妊婦なのに不思議と母親と言うよりは女性と表現する方が正解な気がする人。
子どもである自分が言うのもなんだが、美人ではある。ただ、清楚な見た目と雰囲気は完全に仕事ができるOL感があるため、この人にとって本当に出産は仕事なんだなって感じ。
いや、相性悪くて施設に預けられた身としてはもっと毒々しい毒花系美女を想像していたのだが…。
よく考えたらこの人、まだ二十代半ばなんだよね。
こんな世界じゃなきゃ、バリキャリにでもなっていそう。
私を産んで一旦、妊娠はお休みしたが二十代のうちにあと二人ぐらいは産んでおきたいらしい。
パパ、そう言うことを明け透けに娘に言うのどうかと思うよ。
「来たの」
「おじゃまします」
これ、約八ヶ月ぶりくらいに会う母と幼女の会話な。
「お元気そうで何よりです。赤ちゃんの様子はどうですか?」
「順調よ。来年の一月末ぐらいには生まれるわ」
「楽しみですね」
「そうね」
もう一度言う。親子の会話ね、コレ。
前世の会社の同僚だって、もうちょっとフレンドリーに話してたわ。
関係修復とか無理無理。
うわーん、透子さん早く迎えに来てー!
「ところで、最近英治と仲良しね」
英治=お父さん。
一瞬、誰の名前だっけって思っちゃった。
「親子が仲良しなのは良いことでは?」
「そうね。でも、英治が居ないと不安だわ。もうすぐ、弟も生まれるし、貴方も可愛がってくれる?」
「もちろん」
弟生まれるから、大人しくして。英治盗るんじゃないわよってことね。
だってさ、お父さん。
幼女に対してマウントとる女ってどう思う?
私の位置からじゃ、お父さんの顔見えなくて残念。
4
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説


義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます
富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。
5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。
15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。
初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。
よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中

転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました
市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。
……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。
それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?!
上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる?
このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!!
※小説家になろう様でも投稿しています

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜
朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。
(この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??)
これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。
所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。
暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。
※休載中
(4月5日前後から投稿再開予定です)

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!
美月一乃
恋愛
前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ!
でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら
偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!
瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。
「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」
と思いながら

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる