転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください

木野葛

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世界はとても残酷で(特にご飯が)

胃袋には逆らえまい

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「実が料理をするのは認めよう。それに合わせて、食費も増額させる」

 いえーい、最良の結果~!

「ただ…条件がある」
「条件とは?」
「…週に一回食事をしたい」
「…ご飯、美味しいもんね」

 言いづらそうに目を伏せながら言うお父さんなんか可愛いな。…ママンもしかしてお父さんのこーゆーところにキュンときた?
 まあ、しゃーない。ご飯美味いもんな…。
 スポンサーの要望には応えなきゃならない。
 透子さんと顔を見合わせて頷き合う。

「前もって連絡してね」
「アレルギーはありませんか?」
「受け入れるが早すぎる」

 お父さん用の新しい食器買わなきゃね。


 ということで、スポンサーを得た私たちが最初にやったことは…。

「牛肉~~~~!!!」

 この世界でも牛肉はお高い。
 牛乳は流通してるので、その副産物ように牛肉自体は売られている。
 霜降りなどは無く赤み肉ばかりだが、それもまた美味しい。と言うか、贅沢は言って言っていられない。牛肉食べられるだけでもありがたい。感謝、こんな世界でも畜産頑張ってる農家さんに圧倒的感謝…!

「立派な肉だね」

 牛肉の塊を前に葛木のおばあちゃまがしみじみ呟く。

「ごちそうメニューお願いします!」
「ふむ…牛肉そのものを味わうならローストビーフ、みんな大好きステーキに和の心すき焼き…冬の定番ビーフシチュー、ワイン煮なんかも大人の味わい」
「なんだか想像つきませんがごちそうって感じなのはわかります!」

 ひゃー!どれも美味しそう~!テンション上がる~!
 名前だけで料理を知らない透子さんのテンションも上がってる。

 と言うわけでシャリアピンステーキを作ります。
 ローストビーフと迷ったけど、牛肉ならやっぱりステーキかなって。
 あと、肉を食べ慣れない貧弱な胃腸を持つ私達なので玉ねぎの力で肉を柔らかくしてから食べた方が良いとおばあちゃまが言っていたので。
 透子さんと一緒に玉ねぎを擦りおろします。
 イヤホント、葛木さん料理上手…。
 シャリアピンステーキなんて、前世でも食べたことないよ…。牛肉の塊があったらとりあえずローストビーフ一択。それか薄く切って焼肉。

「て、手順が複雑…!」
 
 まあ、切って混ぜて焼くか煮るの調理工程ばっかりだったものね。
 肉を叩いて伸ばしたり、玉ねぎの酵素を使って柔らかくするって発想が出ない。
 ソースも醤油入れて終わりじゃ無いし。
 肉が漬け終わるまで、副菜を作る。
 芋を茹でて滑らかに潰してマッシュポテト。
 人参はグラッセにして、インゲンはバター炒め。
 トマトは冷製スープですよ。飾りでパラリとかけられたパセリが食欲をそそる。
 人間は三色あると無条件に美味そうと思うらしいね。
 そしてメインのお肉様ですよ。

 ジューと音を立てて焼かれるお肉様に涎が止まらん。

 牛肉が焼かれると、何故人はこんなにもテンションが上がるのか…!

「美味しい」
「まだ食べてないよ、透子さん」

 前世ぶりの牛肉は大変美味しゅうございました。


 よし、お父さんにも食べさせてより食事沼に沈めよう。
 スポンサーの確保大事。





「牛肉は早いよ…」

 おばあちゃまに相談したら却下を食らいました。
 おばあちゃまに出してもらった粉末を溶かすのではなく、きちんと茶葉を急須でいれた緑茶を啜る。
 はー、美味い。
 粉末茶も味はそこそこなんだけど、お茶を淹れるのが上手い人がちゃんといれたお茶には敵わない。

「牛肉が早いとは?」
「実ちゃんも透子さんも若いだろ。それだけ消化器官が若いってことだよ。今までシリアルバーとサプリで生きてきたんだろう?そんな食生活だった人間に、いきなり牛肉なんか食べさせたら消化不良起こすよ」
「お父さん、三十代」
「人によるけど、脂がキツくなってくる年頃だね」
「脂が…キツくなる…」
 
 消化機能の衰えを知り、ショックを受ける透子さん。

「というか、最初にコロッケのレシピ渡したけどね、それ以降料理教室は基本の米炊きを教えた後は負担の少ないスープから始めて徐々に煮物、焼き物、それから野菜の揚げ物って段階踏んでいただろう」

 めっちゃ考えてくれてる…!

「牛肉食べさせるなら、食事に慣れさせてからにしな」
「はーい」
 
 とりあえず、卵雑炊あたりから食べさせよう。
 出汁が好きなら喜んでもらえるよ、たぶん。
 


 ご飯を食べに来たお父さんに卵雑炊を出したら、無言で黙々と食べてた。
 おそらくこの人、出汁と卵好き。
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