転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください

木野葛

文字の大きさ
上 下
13 / 18
世界はとても残酷で(特にご飯が)

男性(父)の心を掴む料理とは?

しおりを挟む
「料理を食べ慣れない人向けの料理とは?」
「お嬢様、餃子行きましょ餃子!」
 
 あの日食べて以来、透子さんは餃子の魅力に取り憑かれている。
 わかる。餃子美味しいよね。

「だがしかし、餃子はパンチが効き過ぎているのでは?効果は抜群だ?」
「…そう言われると、いきなりアレを食べさせるのは罪悪感がありますね」
「うーん、誰も抵抗なく食べられる好きな料理…」
 
 ふと頭に過ぎる、絶対今世では出てこない前世のフレーズ。

『こーいうのでいいんだよ、こーいうので』

 コレだ!
 炊き立てご飯に勝てるやついるぅ!?いねーよなぁ!!(異論は認める)
 


 透子さん焚いた土鍋ご飯はちょっと硬め。しっかりお焦げの入ったそれをふんわりと解してボウルに移す。
 広げたラップに塩を振り、ご飯を乗せて常備菜として私も透子さんも好きな鶏そぼろを乗せて、その上にご飯をかぶせて丸く握る。あちち。
 …手が小さいせいか三角にできない。
 まあ、小さい手で握った小さいおにぎりはそれはそれで可愛いからよし。
 サプリメント用に辛うじて生きていた昆布も、出汁用としてなんとか手に入れられた。葛木さんのツテである。
 鰹節は滅んでいたが、物好きがいるのか椎茸は観賞用として栽培キットが売られていた。始めます、椎茸栽培。
 自作の塩昆布は胡麻と混ぜて握る。
 白米の美味さはやっぱコレだよねってことで、シンプルに塩おにぎりも一つ。 
 海苔…海苔も欲しいんだけど…海苔は…消滅した食べ物になりました…。

 悲しみに浸りつつ横を見れば透子さんが器用な手つきでだし巻き卵を作っている。
 卵をうまく割れなかった人が上手くなったものだ。

 本当はがっつり生姜焼きとか作りたいけど、最初から肉肉しいのは流石に抵抗あるかなって…。
 よっぽど偏食って場合を除いて、働き盛りで生姜焼きとかハンバーグと嫌いなヤツ居ないだろ(偏見)とは思うけど、いかんせん見た目が。
 前世ならヴィーガンだのベジタリアンだの居たけど、この世界だとそんなこと言ってる余裕ないから…野菜が好きって人はいても野菜オンリーで生きていくってのは難しい。

 味噌汁は手軽に作れる味噌玉を溶いたもの。具は大葉と天かすと胡麻。
 胡麻もサプリメント用に栽培されていて、少量ながらスーパーで売られていたよ!
 味噌はちょっと分けて貰った貴重品だぞ。味わって食え。醤油は高かったけど通販されてたからポチった。我が家の基本的な汁物はお吸い物。
 しかし、味噌汁は飲みたい。
 今年は味噌作るときに、私たちの分も一緒に作るんだー!
 前世でも味噌は作ったことないから楽しみ!
 最後にキャベツと人参の浅漬けを出して完成。

 本来ならここに焼いたウインナーをつけたいところだが、食肉加工食品は絶滅している。
 ソーセージの自作いつかやってやると心の決めた。ダンボールを加工して燻製器を作ってハムとベーコンも作る気満々。
 ありがとう前世の食いしん坊。
 あなたが自家製ハム&ベーコンを作っていなければ、今世で食肉加工食品を口にできなかった。
 あとの問題は、スモークチップが見つかるかということ…。
 あ、忘れる可能性を考えて色々レシピを書いておこう。

 三人分の食事出来上がると、透子さんと私が向かい合わせ。左にお父さんが座る。いつもいない人が居るのは違和感。

「「いただきます」」

 両手を合わせて挨拶するのは、葛木さんに教わった。
 戸惑ったようにこちらを見ていたお父さんも、つられたように小さく「いただきます」と言う。
 ラップを剥いて塩おにぎりを一口。
 安定の美味しさ。

「だし巻き、キレイにできたねー」
「ありがとうございます!最近は安定して作れるようになってきました」
「スクランブルエッグもアレはあれで美味しいよ」
「スクランブルエッグは嫌いじゃありませんが、卵焼きは卵焼きとして成立させたいじゃないですか」
「まあ、どっちも美味しいけど、違う美味しさだよね」

 卵料理は良い。
 手軽で栄養が取れる。洋食和食ジャンルを問わず美味しい。
 もぐもぐ抵抗なく食べ進める私たちを観察しながら、お父さんも恐る恐る食べている。

「この…黒いのは…?」

 昆布のおにぎりを持って困惑している。
 そう言えば黒い食べ物ってないね。

「昆布だよ。海藻。えーと、すいよーせいのしょくもつせんいが摂れてお腹に優しい」
「海藻…」

 黒い食べ物に抵抗があるのか、目をつぶって食べ始めた。
 無理せんでもええんやで、と思いつつ見守るとめちゃくちゃよく噛んで食べてる。
 お父さんは一度昆布を食べてみると抵抗がなくなったのか、色々と食べ始めた。
 見てると味噌汁とだし巻き卵、塩昆布のおにぎりが気に入ったっぽい。
 さては出汁が気に入ったな。
 
「…美味いとはこういうことか…」

 しみじみ呟いたお父さんに、だよね!と頷く。
 食いしん坊の才能があるよ。


 食事が終わり、私が食器をキッチンに持っていき、除菌シートでテーブルを拭く。
 その間に透子さんが皿洗いをして、布巾で皿を拭いて食器棚へと片付ける。食事が無くなったせいで、食器乾燥機とかないからね…。
 食器を持っていくところを見ていたお父さんが、「良い子になっていたとはこう言うことか…」と呟く。
 しつれーね。みのりはいつでも良い子です。
 前世思い出す前はどうだったって?
 普通にワガママでしたけど?
 両親から引き剥がされた幼児なら、泣き虫でワガママで当然じゃない。
 まあ、前世思い出してご飯食べられるようになったら、情緒安定したけど。
 今から実家に帰って家族と暮らそう、でも食事は前までのディストピア飯な、って言われたら家族関係の修復より透子さんとご飯をとるけどね!

 
 

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます

富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。 5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。 15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。 初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。 よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!

美月一乃
恋愛
 前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ! でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら  偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!  瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。    「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」  と思いながら

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

妖精の取り替え子として平民に転落した元王女ですが、努力チートで幸せになります。

haru.
恋愛
「今ここに、17年間偽られ続けた真実を証すッ! ここにいるアクリアーナは本物の王女ではないッ! 妖精の取り替え子によって偽られた偽物だッ!」 17年間マルヴィーア王国の第二王女として生きてきた人生を否定された。王家が主催する夜会会場で、自分の婚約者と本物の王女だと名乗る少女に…… 家族とは見た目も才能も似ておらず、肩身の狭い思いをしてきたアクリアーナ。 王女から平民に身を落とす事になり、辛い人生が待ち受けていると思っていたが、王族として恥じぬように生きてきた17年間の足掻きは無駄ではなかった。 「あれ? 何だか王女でいるよりも楽しいかもしれない!」 自身の努力でチートを手に入れていたアクリアーナ。 そんな王女を秘かに想っていた騎士団の第三師団長が騎士を辞めて私を追ってきた!? アクリアーナの知らぬ所で彼女を愛し、幸せを願う者達。 王女ではなくなった筈が染み付いた王族としての秩序で困っている民を見捨てられないアクリアーナの人生は一体どうなる!? ※ ヨーロッパの伝承にある取り替え子(チェンジリング)とは違う話となっております。 異世界の創作小説として見て頂けたら嬉しいです。 (❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾ペコ

処理中です...