転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください

木野葛

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世界はとても残酷で(特にご飯が)

師匠をゲットした

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「上手くいったのかい?」
「うん、コロッケ美味しかった!」

 やる気の出した透子さんに連れられて、再び来ましたスーパーまるやま。
 また、ぎょっとされつつも、パンケーキのために蜂蜜・メイプルシロップ・バターを購入したところで、葛木さんと行き合った。
 スーパーの片隅でコロッケがいかに美味しかったかを力説する。
 
「みのりちゃん、あんた料理に興味あるかい?」
「ものすごく、ある!」
「えっと、あんた、透子さんだっけ?」
「申し遅れました。みのりお嬢様のシッターをしております、木崎透子と申します」
「木崎さんかい。あんたたち、料理習って見る気はある?」
「え!いいの!?」

 思わずグイッと身を乗り出す。

「…いいか悪いかって言ったら、女の子のあんたにこんな誘いはあんまりよくないだろうね」
「では、何故?」
「このままじゃ、料理って技術が失われるからさ」
「技術…」
「女がいなくなって、それを補うために色んなものが効率化されて、食事も楽しむものじゃなくて摂取するものになってさぁ。時間の捻出や環境には良いんだろうけど、これで良いのかとはずっと考えていたんだ」

 ふっと葛木さんは顔を上げて、食品売り場の方を見た。


「女が少なくなって約四十年くらいで、料理ってのが無くなった。料理を作って食卓に出していたのは、今の七十代からギリギリ六十代くらいまでだろう。料理食べて育った四十代くらいも、忙しいからシリアルバーで食事を済ますことが多い。それ以下の世代となると、料理自体知らない奴も多い」
「それが問題でも…?」
「問題だらけだろう。今はなんとか食糧供給体制が整っているけど、それが崩壊したら自分達で食糧確保しなきゃならないって事態になるかもしれない。そんな時肉の焼き方、野菜の茹で方、魚の捌き方なんか知っておけば生存確率は高くなる」
 
 う~ん、ディストピア。
 思った以上に薄氷のような世界なのかもしれない。
 かといって世界情勢と調べられない…。流石にニュースを真剣に見るなんて幼女できないし…。

「…分かりました。…お嬢様はどうしたいですか?」

 ん?あ、そうか。透子さんの雇い主はパパ達だけど、女の子の意思優先なんだ。
 そんなん答えは一択でしょ!

「やりたい!」

 こうして私は料理の師匠をゲットした。
 料理教室は週一回。水曜日に葛木さんの家。
 習い事なんだから月謝を払うと言う私と、要らないと言う葛木さんとの攻防の末に、食材を私が用意して、余ったものは葛木に進呈するという形に落ち着いた。
 需要と供給が成り立ってないから高い食材を月謝代わりにすることで、こちらとしても罪悪感がなくなる。
 何にせよ、料理ができる環境ができたことは喜ばしい。
 ニッコニコ笑顔のまま帰り、おやつとして透子さんに作ってもらったパンケーキは焦げていた…。
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