転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください

木野葛

文字の大きさ
上 下
8 / 18
世界はとても残酷で(特にご飯が)

師匠をゲットした

しおりを挟む
「上手くいったのかい?」
「うん、コロッケ美味しかった!」

 やる気の出した透子さんに連れられて、再び来ましたスーパーまるやま。
 また、ぎょっとされつつも、パンケーキのために蜂蜜・メイプルシロップ・バターを購入したところで、葛木さんと行き合った。
 スーパーの片隅でコロッケがいかに美味しかったかを力説する。
 
「みのりちゃん、あんた料理に興味あるかい?」
「ものすごく、ある!」
「えっと、あんた、透子さんだっけ?」
「申し遅れました。みのりお嬢様のシッターをしております、木崎透子と申します」
「木崎さんかい。あんたたち、料理習って見る気はある?」
「え!いいの!?」

 思わずグイッと身を乗り出す。

「…いいか悪いかって言ったら、女の子のあんたにこんな誘いはあんまりよくないだろうね」
「では、何故?」
「このままじゃ、料理って技術が失われるからさ」
「技術…」
「女がいなくなって、それを補うために色んなものが効率化されて、食事も楽しむものじゃなくて摂取するものになってさぁ。時間の捻出や環境には良いんだろうけど、これで良いのかとはずっと考えていたんだ」

 ふっと葛木さんは顔を上げて、食品売り場の方を見た。


「女が少なくなって約四十年くらいで、料理ってのが無くなった。料理を作って食卓に出していたのは、今の七十代からギリギリ六十代くらいまでだろう。料理食べて育った四十代くらいも、忙しいからシリアルバーで食事を済ますことが多い。それ以下の世代となると、料理自体知らない奴も多い」
「それが問題でも…?」
「問題だらけだろう。今はなんとか食糧供給体制が整っているけど、それが崩壊したら自分達で食糧確保しなきゃならないって事態になるかもしれない。そんな時肉の焼き方、野菜の茹で方、魚の捌き方なんか知っておけば生存確率は高くなる」
 
 う~ん、ディストピア。
 思った以上に薄氷のような世界なのかもしれない。
 かといって世界情勢と調べられない…。流石にニュースを真剣に見るなんて幼女できないし…。

「…分かりました。…お嬢様はどうしたいですか?」

 ん?あ、そうか。透子さんの雇い主はパパ達だけど、女の子の意思優先なんだ。
 そんなん答えは一択でしょ!

「やりたい!」

 こうして私は料理の師匠をゲットした。
 料理教室は週一回。水曜日に葛木さんの家。
 習い事なんだから月謝を払うと言う私と、要らないと言う葛木さんとの攻防の末に、食材を私が用意して、余ったものは葛木に進呈するという形に落ち着いた。
 需要と供給が成り立ってないから高い食材を月謝代わりにすることで、こちらとしても罪悪感がなくなる。
 何にせよ、料理ができる環境ができたことは喜ばしい。
 ニッコニコ笑顔のまま帰り、おやつとして透子さんに作ってもらったパンケーキは焦げていた…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます

富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。 5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。 15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。 初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。 よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!

美月一乃
恋愛
 前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ! でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら  偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!  瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。    「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」  と思いながら

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

妖精の取り替え子として平民に転落した元王女ですが、努力チートで幸せになります。

haru.
恋愛
「今ここに、17年間偽られ続けた真実を証すッ! ここにいるアクリアーナは本物の王女ではないッ! 妖精の取り替え子によって偽られた偽物だッ!」 17年間マルヴィーア王国の第二王女として生きてきた人生を否定された。王家が主催する夜会会場で、自分の婚約者と本物の王女だと名乗る少女に…… 家族とは見た目も才能も似ておらず、肩身の狭い思いをしてきたアクリアーナ。 王女から平民に身を落とす事になり、辛い人生が待ち受けていると思っていたが、王族として恥じぬように生きてきた17年間の足掻きは無駄ではなかった。 「あれ? 何だか王女でいるよりも楽しいかもしれない!」 自身の努力でチートを手に入れていたアクリアーナ。 そんな王女を秘かに想っていた騎士団の第三師団長が騎士を辞めて私を追ってきた!? アクリアーナの知らぬ所で彼女を愛し、幸せを願う者達。 王女ではなくなった筈が染み付いた王族としての秩序で困っている民を見捨てられないアクリアーナの人生は一体どうなる!? ※ ヨーロッパの伝承にある取り替え子(チェンジリング)とは違う話となっております。 異世界の創作小説として見て頂けたら嬉しいです。 (❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾ペコ

処理中です...