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世界はとても残酷で(特にご飯が)
スーパーまるやま
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ふんふん前世で気に入っていた曲を鼻歌で歌っちゃう。
柔らかいピンクのスカートを翻して踊っちゃう。子どもってなんで訳わかんない動きするんだろーねー。
男装の方が良いかと思ったんだけど、このディストピア世界は男の子でも誘拐されることがあるから、むしろ女の子の格好で視線を集めた方が安全らしい。…シンプルに怖い…。
「行きますよー」
「はぁい」
靴を履いてハンカチとティッシュとキッズケータイの入ったポシェットを身につけて、ツインテールを揺らして透子さんの手を握る。
一階に降りればロビーには五十代くらいのダンディなおじさまと、二十代前半くらいのヤンチャそうなお兄さん。
「おはようございます。今日、護衛を務める羽瀬と後藤です」
「おはようございます。よろしくお願いします」
「おはよーございます」
頭を下げる透子さんの横で挨拶したら、二十代の後藤さんがギョッとしたようにこちらをみて、横腹を羽瀬さんに殴られた。
そっと見ないフリをする。
女性の前であからさまに感情を出すなってことかな…?
「それでは、行きましょうか」
案内されたのは、マンションの前に着けられた車。車名とかわかんないしベンツとまでは言わないけど、国産車の立派なヤツだな…。
記憶が戻って今世初の乗車をする…透子さんに抱っこされて、チャイルドシートに乗せられしっかりシートベルトを装着させられる。…そうね…。幼女、着用年齢ね…。
記憶と感覚の違いにしんみりしていると、車が動き出す。
外ばかり見ていると、やっぱり違和感が大きくなる。
やっぱり視界に映るのが、ほとんど男性。都会のはずだが、人類のほぼ半分がいないせいか前世の様な都会特有のごちゃごちゃ感がなく、歩きやすそうではあるもの寂しく感じた。
車で走り出して十分もかからず、スーパーマーケットに到着した。
スーパーまるやまと看板に大きく描かれている。
中に入れば、至って普通のスーパーに見えるもののやっぱり店員は男性で、ギョッとした様にこちらに視線を向けていた。
一通り見て回れば、食糧品のスペースが小さい。前世のスーパーでは半分以上占めていた物がなくなり、生活雑貨がその分多く売られている。
三分の一ほどが食糧。シリアルバー・パワーバー・野菜や肉のペースト・おかゆ系のレトルト・サプリメントが、各種揃っていた。
…惣菜売り場は?併設されたパン屋は?
無いよね…知ってた。
食品コーナーの片隅に、僅かばかりの生鮮食品が売っている。コレよ!ヒャッホーウ!!肉魚野菜ー!!!
走らない様に気をつけながら生鮮食品のところへ向かう。
野菜はカレーが作れそうなラインナップに、僅かなキノコや葉物野菜、魚は鮭の切り身を中心に数種類、肉なら牛豚鳥が揃っているが、内臓系のものはなく塊肉だけがどんと売られていた。
ひき肉や食肉加工食品はない。
こ、コレはソーセージやハムは手作りしろってこと…!?
お菓子販売員さんは作るのも割と好きだったから、ざっくりとした作り方はわかる。けど、羊の腸とか手に入るの…?
皮なしソーセージってレシピもあるけど…え、待って、この世界、スモークチップとかあるの?
塩と砂糖はあるのは確認したけど、胡椒は?ハーブは?
最悪、自分で育てる必要がある…。
胡椒って育てられたっけ?
ルーも香辛料もないから、カレーも絶望的…。
あまりに遠い美味しいご飯の道に愕然としていると、すっと隣に誰か来て自然に葉物野菜を手に取ると籠に入れた。
「ったく、年々高くなってるね…」
小さく呟くのが聞こえた。
パッと顔が明るくなったのが自分でもわかる。
その人のシャツをがしっと掴む。驚いてこちらを見るその人に、思わずキラキラした視線を向けた。
「おばあちゃま、コロッケって知ってますか?!」
「え、え!?女、女の子?!!久しぶりに見た…じゃなくて、あんたどこの子だい?保護者は!?」
「お嬢様!?申し訳ございません。見知らぬ方に話かけるとは思わず…。お嬢様、離しましょうね」
「や。おばあちゃま、コロッケ!知ってますか?!」
「こ、コロッケぇ…?」
ごめんね、見知らぬおばあちゃま!
私のハッピーご飯計画のためには、ここで貴女を逃すわけにはいかないの!
スーパーの一角に設けられた休憩スペースに、見知らぬおばあちゃま、私、透子さんが座って、護衛二人は立ったままこちらを見守る。
「それで、コロッケだっけ?」
「そう!おばあちゃま、コロッケってどんなの?美味しい?」
「茹でたじゃがいも、潰してパン粉つけて揚げたものだよ」
「茹でたじゃがいもって美味しい?」
「バターでもつけりゃ美味いけどね。そのまま食うもんじゃないよ」
「でも、コロッケわかんないから、茹でたじゃがいもでだきょーしなきゃ」
「妥協って難しい言葉知ってるね…。よし、ばーちゃんがレシピ書いてやるから、ねーちゃんに作ってもらいな」
やった!
「しかし、今時良くコロッケなんて知ってたね」
「11匹のニャンコ、コロッケ屋さんやってるんだよ!」
「ああ…あれか…私も息子に読んだ覚えがあるわ」
「あとねー、ぐりとぐらのカステラとー、カラスのパンも気になる!」
「あー…息子もぐりとぐらのヤツは食べたいって駄々捏ねてたね。作ったような気がする」
「いいなー。みのりも食べたい」
「あんた、みのりちゃんっていうのかい」
「そう、とうどうみのり五歳です!おばあちゃまは?」
「ここの近くに住んでる葛木だよ。気になる物があって好奇心旺盛なのはいいけど、変なのに声かけるんじゃないよ」
「みのりそこまでおばかさんじゃ無いよ!おばあちゃまだから声かけたの」
六十代後半ぐらいに見える葛木さんは、年齢の割に姿勢が良く暗い雰囲気もない。
変な人でも護衛がいるから大丈夫だろって、楽観的な考えもあったけど。
「実ちゃんは料理に興味あるの?」
「料理はわかんないけど、美味しいの食べたい!」
「あんた、シリアルバーで育ってるだろうに良く料理に興味持ったね」
「絵本やつ美味しそう。一番食べたいのはぐりとぐらのヤツ」
「なかなか食いしん坊の素質があるね。んー、ぐりとぐらのレシピは難しいけどパンケーキのレシピも教えてやる」
やったぁぁぁぁ!料理の道が開けたぞぉぉぉぉ!!
「透子さん!透子さん作ってね!」
「が、がんばります」
「と言うか、作れるだけの調理器具持ってる?」
「鍋とヤカンはあります」
「足りないね。わかった。器具選びも手伝ってやるよ」
「ありがとうございます!」
苦労をかけてごめんね、透子さん。
でも、幼女そろそろシリアルバーとペーストとサプリメント生活から脱出したいの…。
柔らかいピンクのスカートを翻して踊っちゃう。子どもってなんで訳わかんない動きするんだろーねー。
男装の方が良いかと思ったんだけど、このディストピア世界は男の子でも誘拐されることがあるから、むしろ女の子の格好で視線を集めた方が安全らしい。…シンプルに怖い…。
「行きますよー」
「はぁい」
靴を履いてハンカチとティッシュとキッズケータイの入ったポシェットを身につけて、ツインテールを揺らして透子さんの手を握る。
一階に降りればロビーには五十代くらいのダンディなおじさまと、二十代前半くらいのヤンチャそうなお兄さん。
「おはようございます。今日、護衛を務める羽瀬と後藤です」
「おはようございます。よろしくお願いします」
「おはよーございます」
頭を下げる透子さんの横で挨拶したら、二十代の後藤さんがギョッとしたようにこちらをみて、横腹を羽瀬さんに殴られた。
そっと見ないフリをする。
女性の前であからさまに感情を出すなってことかな…?
「それでは、行きましょうか」
案内されたのは、マンションの前に着けられた車。車名とかわかんないしベンツとまでは言わないけど、国産車の立派なヤツだな…。
記憶が戻って今世初の乗車をする…透子さんに抱っこされて、チャイルドシートに乗せられしっかりシートベルトを装着させられる。…そうね…。幼女、着用年齢ね…。
記憶と感覚の違いにしんみりしていると、車が動き出す。
外ばかり見ていると、やっぱり違和感が大きくなる。
やっぱり視界に映るのが、ほとんど男性。都会のはずだが、人類のほぼ半分がいないせいか前世の様な都会特有のごちゃごちゃ感がなく、歩きやすそうではあるもの寂しく感じた。
車で走り出して十分もかからず、スーパーマーケットに到着した。
スーパーまるやまと看板に大きく描かれている。
中に入れば、至って普通のスーパーに見えるもののやっぱり店員は男性で、ギョッとした様にこちらに視線を向けていた。
一通り見て回れば、食糧品のスペースが小さい。前世のスーパーでは半分以上占めていた物がなくなり、生活雑貨がその分多く売られている。
三分の一ほどが食糧。シリアルバー・パワーバー・野菜や肉のペースト・おかゆ系のレトルト・サプリメントが、各種揃っていた。
…惣菜売り場は?併設されたパン屋は?
無いよね…知ってた。
食品コーナーの片隅に、僅かばかりの生鮮食品が売っている。コレよ!ヒャッホーウ!!肉魚野菜ー!!!
走らない様に気をつけながら生鮮食品のところへ向かう。
野菜はカレーが作れそうなラインナップに、僅かなキノコや葉物野菜、魚は鮭の切り身を中心に数種類、肉なら牛豚鳥が揃っているが、内臓系のものはなく塊肉だけがどんと売られていた。
ひき肉や食肉加工食品はない。
こ、コレはソーセージやハムは手作りしろってこと…!?
お菓子販売員さんは作るのも割と好きだったから、ざっくりとした作り方はわかる。けど、羊の腸とか手に入るの…?
皮なしソーセージってレシピもあるけど…え、待って、この世界、スモークチップとかあるの?
塩と砂糖はあるのは確認したけど、胡椒は?ハーブは?
最悪、自分で育てる必要がある…。
胡椒って育てられたっけ?
ルーも香辛料もないから、カレーも絶望的…。
あまりに遠い美味しいご飯の道に愕然としていると、すっと隣に誰か来て自然に葉物野菜を手に取ると籠に入れた。
「ったく、年々高くなってるね…」
小さく呟くのが聞こえた。
パッと顔が明るくなったのが自分でもわかる。
その人のシャツをがしっと掴む。驚いてこちらを見るその人に、思わずキラキラした視線を向けた。
「おばあちゃま、コロッケって知ってますか?!」
「え、え!?女、女の子?!!久しぶりに見た…じゃなくて、あんたどこの子だい?保護者は!?」
「お嬢様!?申し訳ございません。見知らぬ方に話かけるとは思わず…。お嬢様、離しましょうね」
「や。おばあちゃま、コロッケ!知ってますか?!」
「こ、コロッケぇ…?」
ごめんね、見知らぬおばあちゃま!
私のハッピーご飯計画のためには、ここで貴女を逃すわけにはいかないの!
スーパーの一角に設けられた休憩スペースに、見知らぬおばあちゃま、私、透子さんが座って、護衛二人は立ったままこちらを見守る。
「それで、コロッケだっけ?」
「そう!おばあちゃま、コロッケってどんなの?美味しい?」
「茹でたじゃがいも、潰してパン粉つけて揚げたものだよ」
「茹でたじゃがいもって美味しい?」
「バターでもつけりゃ美味いけどね。そのまま食うもんじゃないよ」
「でも、コロッケわかんないから、茹でたじゃがいもでだきょーしなきゃ」
「妥協って難しい言葉知ってるね…。よし、ばーちゃんがレシピ書いてやるから、ねーちゃんに作ってもらいな」
やった!
「しかし、今時良くコロッケなんて知ってたね」
「11匹のニャンコ、コロッケ屋さんやってるんだよ!」
「ああ…あれか…私も息子に読んだ覚えがあるわ」
「あとねー、ぐりとぐらのカステラとー、カラスのパンも気になる!」
「あー…息子もぐりとぐらのヤツは食べたいって駄々捏ねてたね。作ったような気がする」
「いいなー。みのりも食べたい」
「あんた、みのりちゃんっていうのかい」
「そう、とうどうみのり五歳です!おばあちゃまは?」
「ここの近くに住んでる葛木だよ。気になる物があって好奇心旺盛なのはいいけど、変なのに声かけるんじゃないよ」
「みのりそこまでおばかさんじゃ無いよ!おばあちゃまだから声かけたの」
六十代後半ぐらいに見える葛木さんは、年齢の割に姿勢が良く暗い雰囲気もない。
変な人でも護衛がいるから大丈夫だろって、楽観的な考えもあったけど。
「実ちゃんは料理に興味あるの?」
「料理はわかんないけど、美味しいの食べたい!」
「あんた、シリアルバーで育ってるだろうに良く料理に興味持ったね」
「絵本やつ美味しそう。一番食べたいのはぐりとぐらのヤツ」
「なかなか食いしん坊の素質があるね。んー、ぐりとぐらのレシピは難しいけどパンケーキのレシピも教えてやる」
やったぁぁぁぁ!料理の道が開けたぞぉぉぉぉ!!
「透子さん!透子さん作ってね!」
「が、がんばります」
「と言うか、作れるだけの調理器具持ってる?」
「鍋とヤカンはあります」
「足りないね。わかった。器具選びも手伝ってやるよ」
「ありがとうございます!」
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