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世界はとても残酷で(特にご飯が)
転生先のご飯が不味い件
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前世を思い出すきっかけは色々ある。
生まれた時から、鏡を見て違和感を感じたから、頭を打ってその衝撃で、ファンタジーならスキルや魔力の目覚めと一緒に、と言ったところかな?
私の場合は、初めて大人と同じ味付けの食事をしたときでした。
「お嬢様、今日のご飯はお肉とお魚どっちにしましょうか?」
絵本を読んでいた私に声をかけてきたのは、ベビーシッターの透子さんだった。
いつも優しい透子さんが大好きで、お肉!と元気よく答えるとにっこり微笑んでくれました。
「今日のお昼ご飯は大人と同じ味付けのご飯にしましょうか」
「やったぁ!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表現しちゃう!
だっていつまでも薄味の赤ちゃんのご飯みたいなんだもの。もう五歳なんだからハンバーグくらい食べたいわ!
なんて考えていたけどよくよく考えてみると私、ハンバーグなんて料理知らなかったのよね。この時点だと。
「はい、ご飯ですよー」
差し出されたのは、赤黒いペースト。とサプリメントとシリアルバー。
何だか分かんないけど、思ってたんと違う…!という気分に支配されながら、ペーストをスプーンで掬って食べてみた。
塩味とハーブの香りが突き抜け、ブホッと吹き出した。
「お、お嬢様!?」
透子さんの慌てる声。
そんな声に応えることなく、私は自分のことで精一杯だった。
醤油!味噌!出汁!旨味!
そんな言葉と共に、前世を思い出していたからだ。
物産展に出店することの多い北国の某お菓子屋の販売員。物産展の出張はしんどいし観光なんてできないけど、その土地の名物を夕食に食べたり、お土産に評判のお菓子やおつまみを買って自分で楽しんだり、家族に持って行ったり…。
食べるのもお酒も好きで、ついでに作るのも嫌いじゃなかった。
最後の記憶はなんか衝撃が来たな、という曖昧なもの。…交通事故かなぁ…?と考えたところで気を失った。
次に目を開けると、天蓋付きのベッドに寝かされていた。
自室だ。ベージュとピンクで構成された自室はおしゃれな子供部屋って感じで、前世の一人暮らししていた部屋よりも大きい。
コレ、何帖あるんだろう。
…今世、もしかしてお嬢様だったりする?
うーん、何だか可笑しい。しっかり今世の記憶もあるけど変だな。でも、何が変なのかがわからない。
うーんうーんと悩んでいるとノックもなく部屋のドアが開いた。透子さんが入ってくる。
「お嬢様!」
水差しを持った透子さんが、慌てて入ってくる。そりゃ、目の前で幼女が倒れたら慌てるよね。
「お加減どうですか?お医者様は問題無いとおっしゃっていましたが…。具合が可笑しいなら言ってください!」
過剰な反応だなぁと思いながら、具合悪くないよ、ご飯の匂いにビックリしちゃったと告げれば、ほっとしたように息を吐き出す。
「ハーブがダメだったんでしょうか…?次は茹でたものから始めましょうね」
それは冷しゃぶ的なものですか?それなら喜んで!!!
夕食に出てきたのは…くったくたになるまで茹でた野菜。…茹で続けて硬くゴムみたいな推定牛肉。なんかのサプリメントと固い塩味のシリアルバー。
…透子さんはメシマズなのかな…?
「い、いただきます」
うん…美味しくない…。
塩味すらついていない肉と野菜はもはや苦行。
飲み込むタイミングが分からず、もっちゃもっちゃと噛み続け、ようやく飲み込めた。
味付けが無いのが…キツい…。
「透子さん…お醤油ください」
「お醤油って何ですか?」
何ですと!?
文字通り味のしない食事を終えると、慌ててリビングに駆け込みタブレットを立ち上げると大手検索サイトで醤油を調べる。
醤油または醬油(しょうゆ)は、主に穀物を原料とし、醸造技術により発酵させて製造する液体調味料。中国の醤を起源とする、東アジアの料理などに使われていた調味料の一つである。
by Wikipedi○
あるじゃん!!!wikiも醤油もあるじゃん!!!!
良かった良かった。醤油自体なかったら麹菌買ってきて自分で作るところから始めなきゃならないかと思った。
しかし、何で透子さんは外国人でも知っている調味料知らんの?と思いつつ、醤油の歴史の部分を流し読む。
つらつら読んでいると、気になる部分があった。
第二世界大戦前後、食糧難により主原料の大豆が確保できず、味噌と共に統制物資の対象となった。
ふんふん。
戦後、日本の伝統的な醸造技術は一時的に断絶する危機になった。
その後、田野醤油(今の吉祥醸造)が新技術による醤油を復活させるも、女性減少によって再び大豆の確保が難しくなることで現在は廃れた調味料である。
しかし根強い人気があるため、千葉と兵庫の一地域で現在も細々と作られている。
…うん?
女性減少って何ぞ?
助けてWiki○edia。
女性減少現象とは、1980年頃から始まった女性が生まれなくなる現象である。
2000年代になってもその原因は分かっておらず、各国で研究が進められている。
2010年頃から出生比率は落ち着き、どの国でも8:2程度である。
ぽかんと口を開けて、何度も文面を読み直す。
???????
文字としては理解できる。でも、内容がさっぱり理解できない。
もしかして、日本に転生したと思ったけど、パラレルワールド日本だった…?
透子さんのもう寝る時間ですよ、と言う言葉に頷く。
今日はもう何も考えたく無いな…。
生まれた時から、鏡を見て違和感を感じたから、頭を打ってその衝撃で、ファンタジーならスキルや魔力の目覚めと一緒に、と言ったところかな?
私の場合は、初めて大人と同じ味付けの食事をしたときでした。
「お嬢様、今日のご飯はお肉とお魚どっちにしましょうか?」
絵本を読んでいた私に声をかけてきたのは、ベビーシッターの透子さんだった。
いつも優しい透子さんが大好きで、お肉!と元気よく答えるとにっこり微笑んでくれました。
「今日のお昼ご飯は大人と同じ味付けのご飯にしましょうか」
「やったぁ!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表現しちゃう!
だっていつまでも薄味の赤ちゃんのご飯みたいなんだもの。もう五歳なんだからハンバーグくらい食べたいわ!
なんて考えていたけどよくよく考えてみると私、ハンバーグなんて料理知らなかったのよね。この時点だと。
「はい、ご飯ですよー」
差し出されたのは、赤黒いペースト。とサプリメントとシリアルバー。
何だか分かんないけど、思ってたんと違う…!という気分に支配されながら、ペーストをスプーンで掬って食べてみた。
塩味とハーブの香りが突き抜け、ブホッと吹き出した。
「お、お嬢様!?」
透子さんの慌てる声。
そんな声に応えることなく、私は自分のことで精一杯だった。
醤油!味噌!出汁!旨味!
そんな言葉と共に、前世を思い出していたからだ。
物産展に出店することの多い北国の某お菓子屋の販売員。物産展の出張はしんどいし観光なんてできないけど、その土地の名物を夕食に食べたり、お土産に評判のお菓子やおつまみを買って自分で楽しんだり、家族に持って行ったり…。
食べるのもお酒も好きで、ついでに作るのも嫌いじゃなかった。
最後の記憶はなんか衝撃が来たな、という曖昧なもの。…交通事故かなぁ…?と考えたところで気を失った。
次に目を開けると、天蓋付きのベッドに寝かされていた。
自室だ。ベージュとピンクで構成された自室はおしゃれな子供部屋って感じで、前世の一人暮らししていた部屋よりも大きい。
コレ、何帖あるんだろう。
…今世、もしかしてお嬢様だったりする?
うーん、何だか可笑しい。しっかり今世の記憶もあるけど変だな。でも、何が変なのかがわからない。
うーんうーんと悩んでいるとノックもなく部屋のドアが開いた。透子さんが入ってくる。
「お嬢様!」
水差しを持った透子さんが、慌てて入ってくる。そりゃ、目の前で幼女が倒れたら慌てるよね。
「お加減どうですか?お医者様は問題無いとおっしゃっていましたが…。具合が可笑しいなら言ってください!」
過剰な反応だなぁと思いながら、具合悪くないよ、ご飯の匂いにビックリしちゃったと告げれば、ほっとしたように息を吐き出す。
「ハーブがダメだったんでしょうか…?次は茹でたものから始めましょうね」
それは冷しゃぶ的なものですか?それなら喜んで!!!
夕食に出てきたのは…くったくたになるまで茹でた野菜。…茹で続けて硬くゴムみたいな推定牛肉。なんかのサプリメントと固い塩味のシリアルバー。
…透子さんはメシマズなのかな…?
「い、いただきます」
うん…美味しくない…。
塩味すらついていない肉と野菜はもはや苦行。
飲み込むタイミングが分からず、もっちゃもっちゃと噛み続け、ようやく飲み込めた。
味付けが無いのが…キツい…。
「透子さん…お醤油ください」
「お醤油って何ですか?」
何ですと!?
文字通り味のしない食事を終えると、慌ててリビングに駆け込みタブレットを立ち上げると大手検索サイトで醤油を調べる。
醤油または醬油(しょうゆ)は、主に穀物を原料とし、醸造技術により発酵させて製造する液体調味料。中国の醤を起源とする、東アジアの料理などに使われていた調味料の一つである。
by Wikipedi○
あるじゃん!!!wikiも醤油もあるじゃん!!!!
良かった良かった。醤油自体なかったら麹菌買ってきて自分で作るところから始めなきゃならないかと思った。
しかし、何で透子さんは外国人でも知っている調味料知らんの?と思いつつ、醤油の歴史の部分を流し読む。
つらつら読んでいると、気になる部分があった。
第二世界大戦前後、食糧難により主原料の大豆が確保できず、味噌と共に統制物資の対象となった。
ふんふん。
戦後、日本の伝統的な醸造技術は一時的に断絶する危機になった。
その後、田野醤油(今の吉祥醸造)が新技術による醤油を復活させるも、女性減少によって再び大豆の確保が難しくなることで現在は廃れた調味料である。
しかし根強い人気があるため、千葉と兵庫の一地域で現在も細々と作られている。
…うん?
女性減少って何ぞ?
助けてWiki○edia。
女性減少現象とは、1980年頃から始まった女性が生まれなくなる現象である。
2000年代になってもその原因は分かっておらず、各国で研究が進められている。
2010年頃から出生比率は落ち着き、どの国でも8:2程度である。
ぽかんと口を開けて、何度も文面を読み直す。
???????
文字としては理解できる。でも、内容がさっぱり理解できない。
もしかして、日本に転生したと思ったけど、パラレルワールド日本だった…?
透子さんのもう寝る時間ですよ、と言う言葉に頷く。
今日はもう何も考えたく無いな…。
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