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とある二人のマッチング
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マッチングアプリで話してみたところ気が合ったので、お食事でもしましょうか、という話になり。
高橋美奈子と長岡翔平は、初デートの行き先を決めていた。
『先日、美味しい地魚を出す居酒屋を見つけたんです。金曜の夜でも、どうですか?』
『美味しそうですね! でも、ごめんなさい。金曜の夜は予定があって。土日のどちらかで、ランチはどうでしょう?』
『わかりました。では、土曜の昼にしましょう。お店は僕の方で探しておきますね』
『嬉しいです、ありがとうございます』
アプリのメッセージ機能を使って、時間と場所を決めて。
二人は土曜日の昼、とあるカフェでランチをしていた。
「素敵なお店ですね。予約ありがとうございました」
「いえ、気に入っていただけて良かったです。そうだ、ここ魚介のパスタが有名なんだそうですよ。ほらこれ」
「そうなんですね。美味しそう。でも、ごめんなさい。私甲殻類アレルギーなので、エビが入ってると食べられないんです。こっちの茸のクリームパスタもすごく美味しそう。私、これにしても?」
「ええ、もちろん。じゃぁ僕は魚介のパスタを頼もうかな。それと、グラスワインを。美奈子さんは、何か飲まれますか?」
「では、セットのコーヒーを」
「わかりました」
すみません、と声をかけて、長岡が店員を呼んだ。二人分の注文を済ませ、二人は会話に戻る。
今日の天気だとか、仕事の話だとか、他愛のないことを話していると、注文した料理が来た。
「ありがとうございます」
美奈子は店員に礼を言って、テーブルの上のパスタを見た。湯気の立つ皿は、食欲をそそる見た目をしていた。
「いただきます」
美奈子が手を合わせて、カトラリーを手に取る。眼前の長岡は、既に食事を進めていた。
「これ、評判通りすごく美味しいですよ。そうだ、一口食べてみますか?」
「いえ、アレルギーですから」
「苦手なんて言ってたらもったいないですよ」
「苦手じゃなくて、体質なんです」
「好き嫌いなんて、意外と子どもっぽいところもあるんですね」
そう言って長岡は朗らかに笑った。
将来のこと、恋人のこと、少しだけ踏み込んだ話題を探るようにしながら、一時間半ほど経過した頃。
「そろそろ、お暇しましょうか」
「え、もうですか? まだ二時間も経ってませんよ」
「お店も混んできましたから」
「そうですか? あぁ、じゃぁ場所を移しましょうか。どこかコーヒーでも飲みに行きますか?」
「いえ、ごめんなさい。この後ちょっと、予定があって」
「ああ、そうだったんですね。では、出ましょうか」
「あ、その前に少し、お化粧を直してきてもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
美奈子が席を立つと、長岡はスマホを取り出した。
暫くして、美奈子が戻ってきた。
「では、行きましょうか」
「はい」
にこ、と互いに微笑み合って、長岡が伝票を手にした。
そのままレジへと向かい、長岡が支払いを済ませる。美奈子は少し後ろで控えていた。
会計が終わり、「ありがとうございました」という店員のお決まりの文句を聞いた美奈子が、店員に頭を下げる。
「ごちそうさまでした」
見送りを受け、少しだけ店から離れると、美奈子が長岡に声をかけた。
「長岡さん、先ほどいくらでしたか? 私の分払いますね」
「ああ、いえ、いいんですよ。お誘いしたのはこちらですから」
「でも、お店も探していただきましたし。今回は初回ですから」
「うーん……そういうことなら。じゃぁ、4500円だったので、2000円だけ貰ってもいいですか?」
「はい、もちろん」
美奈子は財布から2000円を取り出すと、長岡に手渡した。
駅の近くまで来ると、二人はそこで別れの挨拶をした。
「長岡さん、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「こちらこそ。美奈子さんとお会いできて良かった。また今度、お食事でも」
「ええ、また」
それぞれに別れて、逆方向へ歩き出す。
随分と離れて、お互いの姿も見えなくなった頃。
二人はほぼ同時に溜息を吐き、ほぼ同時に口を開いた。
「あれはモテねーな」
高橋美奈子と長岡翔平は、初デートの行き先を決めていた。
『先日、美味しい地魚を出す居酒屋を見つけたんです。金曜の夜でも、どうですか?』
『美味しそうですね! でも、ごめんなさい。金曜の夜は予定があって。土日のどちらかで、ランチはどうでしょう?』
『わかりました。では、土曜の昼にしましょう。お店は僕の方で探しておきますね』
『嬉しいです、ありがとうございます』
アプリのメッセージ機能を使って、時間と場所を決めて。
二人は土曜日の昼、とあるカフェでランチをしていた。
「素敵なお店ですね。予約ありがとうございました」
「いえ、気に入っていただけて良かったです。そうだ、ここ魚介のパスタが有名なんだそうですよ。ほらこれ」
「そうなんですね。美味しそう。でも、ごめんなさい。私甲殻類アレルギーなので、エビが入ってると食べられないんです。こっちの茸のクリームパスタもすごく美味しそう。私、これにしても?」
「ええ、もちろん。じゃぁ僕は魚介のパスタを頼もうかな。それと、グラスワインを。美奈子さんは、何か飲まれますか?」
「では、セットのコーヒーを」
「わかりました」
すみません、と声をかけて、長岡が店員を呼んだ。二人分の注文を済ませ、二人は会話に戻る。
今日の天気だとか、仕事の話だとか、他愛のないことを話していると、注文した料理が来た。
「ありがとうございます」
美奈子は店員に礼を言って、テーブルの上のパスタを見た。湯気の立つ皿は、食欲をそそる見た目をしていた。
「いただきます」
美奈子が手を合わせて、カトラリーを手に取る。眼前の長岡は、既に食事を進めていた。
「これ、評判通りすごく美味しいですよ。そうだ、一口食べてみますか?」
「いえ、アレルギーですから」
「苦手なんて言ってたらもったいないですよ」
「苦手じゃなくて、体質なんです」
「好き嫌いなんて、意外と子どもっぽいところもあるんですね」
そう言って長岡は朗らかに笑った。
将来のこと、恋人のこと、少しだけ踏み込んだ話題を探るようにしながら、一時間半ほど経過した頃。
「そろそろ、お暇しましょうか」
「え、もうですか? まだ二時間も経ってませんよ」
「お店も混んできましたから」
「そうですか? あぁ、じゃぁ場所を移しましょうか。どこかコーヒーでも飲みに行きますか?」
「いえ、ごめんなさい。この後ちょっと、予定があって」
「ああ、そうだったんですね。では、出ましょうか」
「あ、その前に少し、お化粧を直してきてもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
美奈子が席を立つと、長岡はスマホを取り出した。
暫くして、美奈子が戻ってきた。
「では、行きましょうか」
「はい」
にこ、と互いに微笑み合って、長岡が伝票を手にした。
そのままレジへと向かい、長岡が支払いを済ませる。美奈子は少し後ろで控えていた。
会計が終わり、「ありがとうございました」という店員のお決まりの文句を聞いた美奈子が、店員に頭を下げる。
「ごちそうさまでした」
見送りを受け、少しだけ店から離れると、美奈子が長岡に声をかけた。
「長岡さん、先ほどいくらでしたか? 私の分払いますね」
「ああ、いえ、いいんですよ。お誘いしたのはこちらですから」
「でも、お店も探していただきましたし。今回は初回ですから」
「うーん……そういうことなら。じゃぁ、4500円だったので、2000円だけ貰ってもいいですか?」
「はい、もちろん」
美奈子は財布から2000円を取り出すと、長岡に手渡した。
駅の近くまで来ると、二人はそこで別れの挨拶をした。
「長岡さん、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「こちらこそ。美奈子さんとお会いできて良かった。また今度、お食事でも」
「ええ、また」
それぞれに別れて、逆方向へ歩き出す。
随分と離れて、お互いの姿も見えなくなった頃。
二人はほぼ同時に溜息を吐き、ほぼ同時に口を開いた。
「あれはモテねーな」
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