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集まれ愉快な仲間たち!

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 □■□

「ふわ~ぁ」

 でかいあくびをして俺は目をこすった。
 目が覚めたら全部夢だったりしないだろうか、という希望は無駄な抵抗に終わった。
 ふっかふかのキングサイズのベッド。大きな窓から差し込む朝日。
 どう見ても俺の部屋じゃない。
 
 ここはマベルデ王国。昨日俺は『聖女』としてこの国に召喚された。
 元の世界に帰れるのは一年後。それまでは聖女として、魔王の呪いにかかった人たちの解呪をして過ごすことになる。
 
「……で、いいんだよなぁ?」

 脳内整理をしながら、俺は呟いた。
 俺が帰れるのは一年後だと聞いた。けれど、それは俺が聖女の能力を有していなかった場合の話だ。
 試してみたところ、俺は聖女として呪いを解くことができた。ということは、魔王の呪いが残っている状態では、期限が来たとしても帰してもらえないんじゃないだろうか。

「考えすぎかね」

 用意されていた服に袖を通しながら零す。
 悪い人たちには見えなかった。俺を無理やりこの世界に縛りつけたりはしないだろうけれど。
 帰還条件ははっきりさせておいた方が良いかもな、などと思っていると。

「準備できました?」
「どわぁ!?」

 急に背後からかけられた声に、文字通り跳び上がった。
 地面から数センチ浮いた気がする。

「ラウル! びびらせんな!」
「やー、すんません、ついうっかり」
「ノックしろよ!」
「次からそーします」

 へらっと笑ったラウルを、俺はジト目で見つめた。
 わざとじゃないだろうなこいつ。

 ラウルの案内で食堂に行くと、昨日の三人が揃っていた。
 軽く挨拶をして、ちらりと視線を動かす。テーブルには全部で五人。俺の見知らぬ人間が二人、席についている。
 俺はラウルに椅子を引かれて、五人と同じテーブルについた。

「ハルトは昨日から何も食べていないだろう。話は食べながらにしよう」

 ありがたいことにカインがそう提案してくれたので、俺は遠慮なく温かい朝食にありつくことができた。
 さすがに洋食だったが、メニューの内容は元の世界と大差ない。良かった。食文化は大事だ。ゲテモノ文化だったらどうしようかと思った。
 カトラリーも変わらないので、マナー的なことを度外視すれば使うのに支障はない。食器は食べ物に合わせて考えられるものだから、あまり突飛なものになったりはしないんだろう。そりゃそうか。
 むしむしとパンをちぎりながら頬張る俺に、カインが見知らぬ二人の内、小さい方をまず紹介した。

「彼は俺の弟で、カロという」
「初めまして、ハルト。僕はマベルデ王国第三王子、カロと申します」

 にこっと人好きのする笑みで名乗ったのは、中学生くらいの少年だった。
 ふわふわとした金髪に、兄のカインと同じ碧眼はくりくりと丸い。なるほど、兄弟というのも納得だ。凛々しいカインに対して可愛らしい印象を受けるが、カラーリングがよく似ている。
 しかしスルーしそうになったが、第三王子。
 ……第二王子、どこ行った?
 俺はもう一人の人物に視線をやった。まさか、こちらが第二王子なのだろうか。
 しかしその人物は、一見すると女性に見える。
 大層美しい顔立ち、長い睫毛。さらさらの銀髪は腰のあたりまで伸ばされている。
 それに第二王子だとしたら、普通はそちらを先に紹介するのではないだろうか。
 思わず見つめていると、ばちりと視線が合った。
 ふわりと微笑んだ柔和な表情は、まるで聖母のようだった。いかん、うっかりときめいた。

「こちらは書記官のミシェルだ」
「ミシェルと申します。どうぞお見知りおきを」
「声ひっく!?」

 俺は思わず叫んだ。
 いやひっく!? 見た目を裏切り過ぎなんだが!?
 普通に男だったわ!! よく見たら喉仏も普通にあるな!

「あっす、すみません。失礼なことを」
「いえ、いいんですよ。よく言われます」

 にこりと笑ったミシェルは、気分を害してはいなさそうだった。危ねえ。思ったことをすぐ口にするのはまずい。
 結局第二王子の謎は解けなかったが、そこは俺がつっこんだらまずいんだろう多分。

「ミシェルは書庫の管理をしている。ハルトはこちらの世界のことを何も知らないし、勉学の面でも世話になることもあるだろう」
「あっ、なるほど。先生?」
「先生、というのも恐縮ですが。ある程度の疑問にはお答えできるかと」

 マジかよ美人教師じゃん。男子高校生からしたら夢のような存在だ。
 ただし男だ。
 紹介を終えたカインが、一つ咳払いをした。

「ハルトの身柄は、王子である俺が保証している。基本的には俺を頼ってくれていい。だが、俺の目が届かない場合もあるだろう。城内でのことはカロが、勉学の面ではミシェルが。騎士団の管轄はアーサーが、魔法師の管轄はアルベールが。その他の雑事はラウルが請け負う。ひとまずハルトは、この場にいる面々を覚えておいてくれればいい」

 俺は全員の顔を見渡した。
 そうか。俺のために、頼れる人を全員集めてくれたのか。
 カインの気づかいに、俺は胸の奥がじんとした。

「ありがとう。俺、どこまで役に立てるかわかんないけど。精いっぱい、聖女とやらをこなしてみせるんで。これからよろしくお願いします!」

 俺の宣言に、頼もしい仲間たちは口々に答えてくれた。
 異世界なんて冗談じゃねえと思ってたけど、なんとかなりそう!
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